塩屋天体観測所街中で星を見るために
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街中で星を見るために

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 こうこうと輝く街の灯り。
 夜空を見上げてもなんにも見えやしない……なんてあきらめないで、もう一度空を見上げてみませんか?
 微かな光かもしれませんが、ほら、一つ、二つ、星が輝いているじゃないですか。
 せっかくですから、天上の風景を、もう少し楽しんでみませんか?
 ちょっとした工夫で、いろんな星たちが、いろんな姿を見せてくれますよ。

まずはこの目で空を眺めてみませんか

 星を見るのに天体望遠鏡が必要……なんて、そんなことはありません。まずは肉眼、そう、あなたの目で十分です。

 特別な道具なしに街の中で肉眼で見える天体として、以下のようなものがあります。

 意外にたくさんあるんですよ。普段はあまり意識してませんが、月もりっぱな天体です。たまに夕暮れ時に、西空に三日月がかかっているのを見たり、東の空から見事な満月が昇ってくるのを見てうれしくなることってありませんか?

 それから惑星が見えるのも意外だという方も多いかもしれません。土星や木星の写真を図鑑や理科の教科書で見たことがあっても、実際の空で見たことがあるって人は意外と少ないみたいです。ほんとは気付いてないだけなんですけど。

 さて、そんな星空探訪を始める前に、ちょっとだけ星を見るコツみたいなものを覚えておきましょう。

街灯にはご遠慮いただいて

 街の中ならどこにでもある街灯。最近は夜歩く人も多いですし、人が住んでいる場所には治安のためにも、最低限のものは必要なものかもしれません。が、実はこの街灯、星を見るときにはとってもジャマになってしまいます。ちょっと試してみましょうか。下の2枚のイラスト、まず左側が街の中で見た星空のようすです。

都市の街中で見た星空 街灯をちょっと隠して見た星空
都市の街中で見た星空 街灯をちょっと隠してみると……
 街中でちょっと空を見上げるとこんな感じ。街灯の明るさに目がくらんで、少ししか星が見えません。  まぶしい街灯をちょっと手で隠してみましょう。同じ場所の同じ空でも、見える星が増えましたね。

 街の中で空を見上げると、だいたいこんな感じではありませんか? 場所によってはもっと星が少ないかもしれませんね。この場面では右下にとっても明るい水銀灯がついています。まぶしいのでちょっと手で隠してみましょう。

 すると、目が慣れてくると前より多くの星が見えてきます。ちょうど右のイラストのような感じです。少し星座を知っている人なら、真ん中にオリオン座が見えてきたのが分かるでしょう。

 同じ場所の同じ空でも、街灯をちょっと手で隠すだけで、ずいぶん星の見え方が違ってくるのです。これは、明るいものが見えているときには明るいものにあわせて、暗いものしかない場所では暗闇にあわせて、人間の目が光を感じる力を知らず知らずのうちに調整しているためです。身近なところでは、映画館から外に出たとき、一瞬目がくらむようなまぶしさを感じることがあります。これは暗い場所に慣れきっていた目が外の明るさに慣れるまで、わずかに時間がかかるためです。星を見るときはその逆で、暗闇に目が慣れないと、あまり多くの星を見ることが出来ません。専門用語で「明順応」「暗順応」というのですが、人間の体は上手くできているものです。

 問題はここから先です。夜空を見ていても、自分が見ている範囲に街灯があると、目は明るい街灯にあわせて順応してしまうため、それより暗い星の光を感じることができなくなってしまうのです。街の中は街灯だらけですから、そんなわけで、ちょっと空を見上げただけでは、少ししか星が見えなかったのです。

 もっとたくさんの星を見ようという場合、一番簡単なのは、上の右側のイラストみたいに近くの街灯を手で隠してしまうこと。これだけでも見える星が倍くらいになります。できれば街灯が建物の陰に隠れる場所や、街灯のない公園が近くにあれば、そこで星を見るのがいいかもしれませんね。

 そうそうもう一つ、人間の目は明るいところにはほとんど瞬間的に順応しますが、暗いところになれるのには少し時間がかかります。だいたい街中の空の暗さに対応するのに5分から10分くらいかかるでしょうか。また、せっかく暗いところに慣れた目も、途中で街灯を見たら元どおり、車のヘッドライトを見ても元どおりに戻ってしまいます。街灯や車通りを避けられない場所なら、その方向をなるべく見ないようにするか、ちょっと目をつぶってやりすごしてしまいましょう。

近所で見える「最高の星空」

 星の明るさは、明るい順から1等星、2等星……と等級がつけられていて、肉眼で見える最も暗い星は6等星です。1等星は全天で21個しかありませんが、6等星までとなると約6,000個の星があります。もっともこれは街明かりの影響がなく、空気もきれいな場所での話。それから星の半分は地平線下に隠れていますので、本当に理想的な条件で見ることのできる星は約3,000個ということになります。それでもビックリですね。

 さて、多くの人が住んでいる都市の郊外や地方の街では、どのくらいの星まで見ることができるのでしょうか。また下に2枚のイラストを用意してみました。

街灯をちょっと隠して見た星空 都市の郊外や地方の街での最高の星空
街灯をちょっと隠してみると…… 都市の郊外や地方の街での最高の星空
 先ほどの、まぶしい街灯を手で隠したときの星空です。  条件の良い日なら4等星くらいまで見ることができます。昔から知られている星座の多くをたどることができます。

 左側が先ほど街灯を手で隠したときに見えた星空、右側が都市の郊外や地方の街で条件がよいときに見える星空のようすです。またまたずいぶん見える星が増えました。これだけの星を最近見たことある人、なかなかいないかもしれません。でも都会の真ん中でなければ、これくらいの星空は、条件が良ければ見ることができるのです。なにせ自分が住んでいるのも、郊外とはいえ、人口150万人の神戸市の住宅街ですから……

 では、街中できれいな星空を見るための条件をいくつか挙げておきます。

街灯を避ける
 これは先ほど述べたとおりです。街灯が全くない場所を探すのは難しいかもしれませんが、直接街灯の光が目に入らないだけでも星の見え方は全然違います。
 
月明かりを避ける
 月も立派な天体なのですが、星に比べるととても明るいので(満月の月明かりは新聞が読めるほどです)、星を見るさまたげになってしまいます。ちょっと月には申し訳ない気もするのですが、月のない時の方が、たくさんの星が見られます。
 
空気の澄んだ日を選ぶ
 もやのかかったような空の日より、澄んだ空の方がより多くの星を見ることができます。
 春から夏にかけては水蒸気が多く、また春先には大陸から黄砂が飛んできたりすることもあり、空気の透明度が悪い日が多いのです。秋から冬は空気が乾燥することが多く(太平洋側や瀬戸内地方)、空気の透明度も良い日が多くなります。
 もちろん春から夏でも空気の澄んだ日はありますので、ちょっと気にして空を見てみて下さい。
 
夜中過ぎがチャンス
 夜も日付が変わる頃には、多くの家が電気を消して寝静まります。すると、街明かりが少なくなるので、同じ場所でも見える星が増えてきます。夜中の1時や2時頃に外に出て空を見上げると、意外な星の数にびっくりすることがあります。次の日が学校や仕事だとしんどいですけど……
 
暗闇に目を慣らす
 先ほど述べたとおり、人の目が暗いところに慣れるまではちょっと時間がかかります。家から外に出て、気分転換がてらにのんびり空を眺めていてください。

 全部の条件を満たすのはなかなか難しいかもしれませんが、とりあえず街灯と月明かりを避けるだけでも、ずいぶん星の見え方が違ってきます。もし全部条件がそろったら、意外なほど星が見えてびっくりしますよ。機会があったらお試しください。

 東京や大阪といった大都会の方なら、お盆と年末年始がチャンスです。多くの人が帰省して、人も車も少なくなる分、この時期は空がきれいになっていますよ。

星が見えないのは何のせい?

 ここからはちょっと番外編的な話になります。

 街の中で星が見えないのは、空気が汚れているせいだ。

 そう思っている人、案外多いのではないでしょうか。でも本当の原因は違うんです。街の街灯やネオンサイン、家々の明かり、道路を走る車のライト……そんなさまざまな照明が、つもりつもった街明かり。これが夜空の星を見えなくしている一番の原因なのです。

 昼間の空が青いのは、太陽の光が空気中に散乱して、四方八方の空気を照らし出しているためです。夜の街明かりも、太陽の光とは比較にならない規模ですが、やはり空気中に散乱して空を明るくしています。

 月のない日でも、夜空に雲が浮かんでいるのを見ることができます。でも、これ本当はおかしいんです。雲は自分では光を出していません。月の出ている夜なら雲は月光に照らされて見えるのですが、月のない日なら真っ黒なはずです。実はこの雲を照らし出している犯人が、地上の街明かりなんです。街明かりが上空何百メートルの雲に届いて、雲を夜空に浮かび上がらせているわけです。

 街明かりは雲だけでなく、空全体に散乱しています。そうして暗い星の光はかき消され、明るい星しか見えなくなってしまいます。先ほど夜中過ぎに星が見えるようになると書きましたが、夜中を過ぎると寝静まって明かりを消す家が多くなり、街明かりが減って星が見えるようになるわけです。 

 もちろん空気の汚れも星の見え方に影響します。空気中にチリやスモッグが多ければ、それが街明かりを反射して、空を明るくする原因になっていきます。逆に澄み切った空の場所なら、多少明るい月が出ていても、案外星も見ることができるものです。

 とはいっても、空気の汚れた場所は都会や工業地帯が多いですから、やはり多くの場合、街明かりとセットとなった影響ということが出来るでしょう。

 それでは、街明かりもなく、空気もきれいな場所で見た星空はどんなものなのでしょう。またまた2枚のイラストを用意してみました。

都市の郊外や地方の街での最高の星空 ほんまもんの星空
都市の郊外や地方の街での最高の星空 街明かりもなく空気もきれいな場所で見る
ほんまもんの星空
 これでもたくさん星があるような気がするのですが……  実は夜空にはこんなにたくさんの星が輝いていたんです!! うっすらと天の川も見えているのが分かるでしょうか。

 左側が都市の郊外や地方の街で条件の良いときに見える星空、そして右側が街明かりもなく、空気もきれいな場所で見る「ほんまもんの星空」です。同じ夜空とは思えないくらい、星がたくさん輝いています。うっすらとですが、雲の帯のような天の川も見えています。
 山奥へ星を見に行ったとき、一緒にいた友人が「プラネタリウムみたいだ!!」と叫んでいましたが、プラネタリウムこそ満天の星空を人工的に再現したものなんですよね。いかに私たちの普段の生活が、ほんまもんの星空から遠くなってしまっているか、分かると思います。

 こうした人工の光による影響を「光害」(こうがい、ひかりがい)と呼んでいます。
 夜空を照らしている光は、いわばエネルギーを無駄に使っているのと一緒です。星空という大切な自然を破壊しているだけでなく、人間の出す夜の光が他の生態系に与える影響も少しずつ研究が進められています。
 最近では環境省も光害防止ガイドラインを策定して、光害の広がりを防ぐ努力を始めました。街で便利な生活を送っている以上、自分たち自身が光害の発生源でもあるのですが、余分な明かりを消したり、照明の仕方を工夫して、自分たちのくらしをとりまく環境と共存していきたいものです。これは星空だけでなく、自分たちの生活のありよう全てを問い直すことにつながるのかもしれませんが。

 神戸の街は「1000万ドルの夜景」で知られていますが、「1000万ドル」の根拠は街の明かりの電気代なのだともいわれています。もう少しばかり工夫して、天上に広がる星空の夜景も、一緒に楽しめる街にしていきたいものです。

※掲載した星空の様子は「ステラナビゲーター Ver.5」(AstroArts)を使用して作成しました。

(2002.5.23記/2005.6.13追記 福田和昭)

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