塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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JAXA筑波宇宙センター訪問
その4 2004.5.31

その1 その2 その3 その4 その5

 宇宙飛行士養成棟と無重量環境試験棟は、玄関が共通の棟続きの建物です。筑波宇宙センターの敷地のほぼ中央にあります。

宇宙飛行士養成棟

前庭機能研究設備

前庭機能研究設備

 玄関のホールには「いつもならここに宇宙服が飾ってあるんですけど〜、ちょっといま展示で貸し出してしまっているんですよ」とのこと。

 さて、そんな宇宙飛行士養成棟。最初に案内されたのは前庭機能研究設備。壁の一面がガラス張りになっていて、写真はガラス越しに撮ったものです。

直線加速度負荷装置 手前が水平回転負荷装置と傾斜回転負荷装置

直線加速度負荷装置

手前が水平回転負荷装置、奥が傾斜回転負荷装置

 名前を並べると「直線加速度負荷装置」「水平回転負荷装置」「傾斜回転負荷装置」 直線加速度付加装置はイスがグワーッと前に滑り出すもの。水平回転付加装置は、要は回転イスでグルグル回るもの。傾斜回転付加装置は横向きブランコとでも言うのか、体ごとグラングラン揺らされるものです。宇宙飛行士の訓練風景でよく出てくる奴ですね。実物がここにあるわけです。

 宇宙酔いの研究だというのですが、こんなガラス張りの部屋で被験者になりたくないなぁ、というのが感想。

閉鎖環境適応訓練設備 低圧環境適応訓練設備

閉鎖環境適応訓練設備

低圧環境適応訓練設備

 隣も大きなガラス張りの空間になっています。

 左の写真は閉鎖環境適応訓練設備。国際宇宙ステーションでは長期間、狭い空間で過ごすことになるので、そうした中でどういうストレスを受けるのかを研究したり、あるいは訓練したりする設備とのこと。写真では巨大な円筒形のものが写っていますが、左奥側に棟続きの四角い部屋が付いています。宇宙飛行士の選抜試験にも利用され、わざわざ狭い部屋に閉じこめた上で

 「白い無地のジグソーパズルやらせたり、ひたすら計算をやらせたり、わざとストレスがたまるような作業をしてもらうんです」

とのこと。「NHKの『まんてん』で出てきたやつですね」と聞いたら、

 「はい、あれは実際の試験と同じことをやってます」

うむむ。白いジグソーパズルなんて、素でやってもイヤかもしれない。

 右の写真は低圧環境適応訓練設備。長い名前ですが要は減圧室です。宇宙空間で万が一の減圧事故(例えば壁に穴が開いて空気が漏れた、など)に備えて、生き延びるための訓練をするところです。空気が薄くなってもちょっと間は正常な判断・行動が出来るので、その間に何をするべきか体に覚え込ませるのだそうです。

 「部屋の脇に覗き窓があって、外からイスに座って覗けるようになっていますよね。あれで中の様子をうかがいながらやるんです」

 ……。

無重量環境試験棟

無重量環境試験棟の管制室 ガラス越しに見たプール

無重量環境試験棟の管制室

管制室のガラス越しに見たプール

 無重量状態は地上で再現することが難しいので、水の浮力を利用して擬似的な環境を作り出して訓練を行います。

 直径16m、深さ10.5mの巨大プールに実験装置の模型を沈めて、宇宙服を着た飛行士が潜って、実際の船外活動と同じ行動の訓練をします。管制官とのやりとりは英語。真剣勝負です。

 管制室の手前に見学者のスペースがあり、そこで5分ほどのビデオを上映しました。

 とにかく大変です。まず宇宙服。本物は120kgあるのですが、ここでの訓練では60kgのものを使います。それでも一人で着ることは出来ません。宇宙服を着て水中に入っても、そのままでは浮力で浮かんでしまうので、重りをつけてプールに入ります。そうすると今度は一人で身動きがとれないので、一緒に潜ったダイバーが飛行士を水中の実験装置まで運んでいくのです。たしかダイバーは4人潜っているのだったかな。とにかく手間暇かけた訓練です。

深さが10.5mの巨大プール 訓練用の「きぼう」模型

深さが10.5mあるという巨大なプール

訓練で使う「きぼう」の模型

 左の写真がプールの外観。巨大なので引いてもきれいに画角に収まりません。写っている円柱だけでは10.5mもなく、さらに床下に掘り込んであるそうです。それでもNASAやロシアにはもっと大きなものがあるのだとか。

 右の写真がプールに沈める実験装置の模型。「きぼう」モジュール全体は入らないので、必要な部分をとっかえひっかえ使うそうです。

 「準備に一週間、撤収に一週間かかりますね」

 本当に手間暇のかかるものです。

エレベーター

 「こないだはアメリカの飛行士が来て、訓練をしていったんですよ」

 「日本からNASAに行くだけじゃなくて、向こうからこっちに来ることもあるんですか」

 「ミッションの内容によっては、ありますね」

 国際協力の一端ということでしょうか。

 「このエレベーター、奥行きがすごくありますよね」

 「あ、そういえばそうですね。何か荷物でも運ぶんですか?」

 「いえ、宇宙飛行士が訓練で倒れたときに、そのまま(ストレッチャーで)搬送できるように、この大きさなんです」

 「はぁ……」

 宇宙へ向かい合う最前線の施設だということを、改めて実感したりするのでした。 

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