塩屋天体観測所観測記録室
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2009年7月20日〜25日 皆既日食クルーズ(5)

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2009年7月22日 11:33 第三接触直後

 11:33撮影。皆既が終わって、望遠鏡に減光フィルターをかけて撮った最初の写真。

 シャッタースピードもカメラの感度設定も部分食用に戻すのを忘れていて、露出オーバーで若干ブレ気味。比較的冷静なつもりでいたのですが、後から写真を見ると、すっかり舞い上がっていたことが分かります。

 天頂やや西には、皆既が終わった後もしばらく金星が見えていました。

11:39 皆既から7分後

 デッキの人たち、何やら「ぽかーん」とした表情が並んでいます。なんというか魂を抜かれてしまったような、気の抜けた雰囲気です。「日蝕病」に感染した最初期の典型的な症状です。

11:40 皆既から8分後

 11:40撮影。ようやくこのときになって、カメラの設定を戻していないことに気付きました。慌ててダイヤルを回してシャッターを切ります。

 明石の星の友の会のチームは第四接触(部分食の終わり)まで見届けますが、観望の人たちはそろそろ船内に戻る準備を始めようかという頃。船内は12時から昼食タイムです。

11:50 皆既から18分後

 11:50撮影。太陽はどんどん輝きを取り戻していきます。

 やがて右舷に反航する客船の姿。肉眼で「飛鳥II」と分かります。この時間にこの海域ですれ違うということは、ほぼ同じ条件で皆既日食を眺めることができたはず。「飛鳥II」は世界一周クルーズの最終盤。このあと横浜目指して、というより3ヶ月ぶりの日本を目指して、一路北へ進路を取るはずです。

12:15 日食終了まで37分

 12:15撮影。ていうか、ほんとは50秒ほど過ぎて、12:15:50の撮影。5分ごとの連続写真も、ここに来てつい、シャッターを押すタイミングを忘れかけました。メインイベントが終わって、自分も気が抜けています。

 右写真の照る照る坊主は、姫路出港時からずっと部屋の窓にかけていたもの。

 2002年12月のオーストラリア皆既日食の時、皆既の後のパーティー会場にひっそりと残されていたものを、連れて帰ってきたものです。後になって「もとの持ち主がオーストラリアへの置き土産にするつもりだったんかな」と思いもしたのですが、やけ酒を飲むほど絶望的な天気を奇跡的に好転させた「実績」もあって、次の日食には連れていこうと決めていました。頭に茶色いシミが付いているのは、前回の打ち上げの時に赤ワインを「飲まされた」痕跡です。

 もしかするとオーストラリアに残していくつもりだったかもしれない元の持ち主さん、今度も皆既日食を見ることができたことに免じて、許してやって下さい。二度も一緒にコロナを観た、大事な大事な功労者です。

12:22 日食終了まで30分

 左舷前方から客船が近づいてきました。皆既前にふじ丸を右舷から抜いていったコスタ・クラシカです。デッキの上には、どれだけ人が乗っているのかというくらい、人が鈴なり。双眼鏡を向けるとこちらへ向かって手を振っている人もいます。

 それじゃあと、こちらも手を振り返します。個々の表情まではうかがえませんが、飛び抜けて陽気なデッキの雰囲気は分かります。

 そちらのみなさんも、観測成功おめでとう!

 互いに汽笛を交換して、一足先にコスタ・クラシカは北へ去っていきました。

12:50 日食終了まで2分

 12:50撮影。太陽はほとんど復円し、煎餅の一かじりというよりも、もっと浅い食分です。日食グラスをかざしてみても、よほど注意深く観察しないと欠けていることに気付きません。

 プールサイドの人々は、既に私たちのグループを除いてほとんど撤収済み。クルーズ客船の優雅なる午後、というには先ほどの興奮の記憶が、まだ生々しいのですけれども。

 船の昼食は13:30まで。私たちも機材の撤収にかかります。

12:52 第四接触

 月の影が太陽を抜け、日食が終わりました。

 12:55撮影。復円した太陽を確認して、観測終了。5分で片付けるのが目標でしたが、1分オーバーして、デッキを後にしたのは13:01でした。

14:00 結婚式

 日食があったことすら忘れてしまいそうな(忘れるわけはありませんけれども)ゆったりとした空気が流れる、ふじ丸の午後。

 ベランダで談笑していると、船内通路を花嫁さんと花婿さんが歩いてきます。おっと! そういえば、乗船時にもらったプログラムに、22日の午後に「結婚式」てのがありましたっけ。

 「ダイヤモンドリングを結婚指輪に」って、聞いているこっちがこそばゆくなるお話ですが、これだけ多くの人々の心に刻まれた結婚指輪もそうはないのではないでしょうか。みごと天空の指輪を手にした二人の門出を心より祝福させて頂きます。おめでとうございます。

16:00 サイエンストーク

 日替わりサイエンストークは、石塚睦さんとホセ・イシツカさんのペルーの天文話。ペルーに渡って52年、親子二代でかの地の天文学の礎たらんとするお話は、感銘なくして聴けません。

 そしておめでたい人はまだまだいるもので、なんと7月22日が誕生日という方が、今回の乗船者に2人いらっしゃいます。壇上のお二人の感想は、期せずして家族への感謝の言葉となりました。

船内模様

 2Fエントランスのホワイトボードは、すっかりみんなの伝言板と化しています。晩のフリートークは「大日蝕速報会」。「好きなだけやって良し」と大上段に構えて、お客さんもいっぱいいたそうですが、予想外に発表者の数が少なかったとか。みんな昼間に体力を使い果たしちゃったんだと思います。私はおじさんの部屋に呼ばれて飲んでました。

18:30 日没

 もはや遠い昔の出来事のようですが、日の出でグリーンフラッシュが見えたというので、日の入りも期待値が高まって大勢の人がデッキに並びます。残念ながら水平線近くは雲が多く、グリーンフラッシュを見るには至りませんでしたが、日没後、紅に染まった雲と、夕闇に浮かぶ積乱雲のシルエットがとてもきれいでした。

 前日よりは雲が多かったものの、夜の観望会も多くの人で盛り上がりました。

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(2009.8.9記 福田和昭)

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