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特別展:太陽系展
2007年7月21日〜9月2日

 明石市立天文科学館、2007年の夏休み特別展は「太陽系展」です。

 天文科学館は阪神・淡路大震災で大破して、その後の復旧工事で建物の至るところに耐震補強の鉄骨(というより巨大鉄パイプ)が埋め込まれてしまいました。展示スペースも震災前より減ってしまったのですが、そんなことではへこたれません。場所をやりくりしながら、毎回趣向をこらした特別展をしています。

 で、今回の特別展の見所は、マニア垂涎の探査機模型と、ズバリ「本物」の「火星の石」「月の石」「小惑星ベスタの石」でしょう。探査機「はやぶさ」はまだ帰ってきていないのに、なんで小惑星の石があるのかって!? それは見てのお楽しみ。

探査機模型の群れたち

土星探査機「カッシーニ/ホイヘンス」

カッシーニ/ホイヘンス

 まずはNASA/ESAの土星探査機「カッシーニ/ホイヘンス」の1/4模型。台座に置くと、天井につっかえんばかりの大きさ。

 本物の高さ6.7メートル、幅4メートル(磁力計ブーム含まず)、本体重量2,125キログラム(燃料含まず)。惑星探査機としては最大級の図体です。

 左側に長く突き出ているのは磁力計です(探査機本体の影響を避けるために、腕の先に付けてます)。衛星タイタンへ突入したホイヘンスは写真では後ろ側になっています。

火星探査機「のぞみ」PLANET-B

のぞみ

 お次はISASの火星探査機「のぞみ」です。新幹線のような名前のこの探査機は、主に火星の大気を調べる目的で 1998年7月に打ち上げられました。が、書いたら一冊の本になるくらいのトラブルと、それに立ち向かう関係者の奮闘の末、2003年12月に火星周回軌道投入を断念、人工惑星になりました。

 「のぞみ」の重さは215キログラムですから、先のカッシーニの1/10しかない小型の探査機です。

太陽観測衛星「ようこう」SOLAR-A

ようこう

 1991年に打ち上げられた太陽観測衛星「ようこう」です。地球周回軌道からX線望遠鏡などを使って、10年3ヶ月の間、太陽観測を続けました。11年周期の太陽活動のほぼ一サイクルをまるごと収める観測データを収集し、大きな成果を上げました。

 当初は4年と予定されていた観測期間を大幅に越えて活躍した「ようこう」は、2001年12月の日食中に姿勢制御が出来なくなり、2004年に運用終了しました。

 2006年に後継機の「ひので」SOLAR-Bが打ち上げられています。

工学試験衛星/小惑星探査機「はやぶさ」MUSES-C

 これを探査機の模型というのはちょっと強引か。1/2000の「はやぶさ」です。本来は小惑星イトカワの模型で、表面の「はやぶさ」は、着陸地点のはやぶさポイントを示すためのものです。

 この「はやぶさ」も本が出てしまうくらいの波瀾万丈な人生(宇宙機生?)を送っていて、2010年の地球帰還目指して現在奮闘中です。

「火星の石」「月の石」「小惑星ベスタの石」

火星の石

火星隕石

 「火星から地球に戻ってきた探査機なんてないんじゃない?」という方は事情通です。

 でも地球上にちゃんと「火星の石」があるというこの不思議。

 これまで地球上で発見された隕石のうちの17個(2001年現在)が、火星起源と推定されています。隕石中に含まれているガスの成分が、バイキング探査機が調べた火星の大気の成分と似ているというのがその根拠。火星に小惑星などが衝突したときに、はじき飛ばされた破片が太陽系を漂って、地球に落ちてきた物と考えられています。

 日本の極地研究所は世界一の隕石持ちなので、こうした貴重な火星起源の隕石を2つ保有しています。世界で17個、日本で2つのうちの1つが明石に来ているのですからこれを見ない手はありません。

月の石

月の石

 月の石ならアメリカのアポロ計画や旧ソ連のルナー計画で、サンプルリターンが行われています。

 でもサンプルリターンをまだ行っていない日本も、月の石を自前で手に入れています。

 そう、火星からやってくる隕石があれば、月からやってくる隕石もあるのです。世界各地で発見されて数が増えつつありますが、南極で14個、そのうち7個が日本隊による発見です。氷の上で月の石を拾うって、なんとも不思議な気がします。

 隕石の「月の石」とあわせて、アポロ計画で持ち帰られた月の石のレプリカも展示されています。アポロ計画で採取された月の石が約400kg、旧ソ連のルナー計画で約300g、月起源の隕石はこれまでに約3kg発見されているそうです。

小惑星ベスタの石

ベスタ起源隕石

 火星や月の石が隕石としてやってきているのなら、小惑星が隕石になってもおかしくありません。

 というより、発見されている隕石の大部分は、小惑星起源です。よく「流れ星が燃え尽きないで落ちてきた物が隕石」と誤解されていますが、通常見える流星は、彗星がまき散らしたような微少なチリです。

 これに対して隕石は軌道を逆算すると、多くが小惑星帯から飛来していることが分かっています。地球に突入するときも、通常の流れ星とは桁違いの明るさの火球として観測されます。ただ「どの小惑星から来たか」というのは、ほとんど分かっていないのが現状で、「はやぶさ」のサンプルリターンが注目されるのは、どの星からやってきたサンプルかが明確に分かっているという点でも、相当に重要だからです。

 小惑星ベスタは、詳細な観測が行われていて、地球にある隕石のいくつかは成分分析などからベスタ起源だと考えられています。ベスタの表面には大きなクレーターがあるので、それが形成されたときに飛び散った破片ではないかとも言われています。

小惑星イトカワの模型

イトカワ模型

 ということで、ベスタの石と一緒に展示されている小惑星イトカワの模型。

 模型と書いていなければ、これもまた隕石か何かだと思われてもおかしくない出来映えです。巨大メークイン。

小惑星イトカワの秘密

イトカワ模型の何か

 小惑星イトカワの模型。「何か」がぶら下がっているように見えます。

 その謎を解き明かすため、ケースのギリギリまで接近を試みました。透明ケースへのカメラ本体の写り込みや露光量不足による手ブレなど、数々の困難を乗り越えて、ミッションが完遂されました。

 そこで得られた画像が左の写真。画像処理を施して浮かんできたのは……明石市の備品シールです。

 小惑星番号25143のイトカワは、明石市備品番号142536となったのでした。

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