塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記|明石星の友の会活動紹介・海賊版
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「関西文化の日」は、毎年11月に開いている関西圏の博物館・科学館・美術館のイベントです。参加している博物館や科学館の料金が割引になったり無料になったりします。2008年の天文科学館は、11月8日・9日が無料開放日。今回は8日に訪問した際のレポートです。
1階ロビーではビラがパズルの人が、パズルを印刷したビラを配っていました。かなり謎めいた光景でしたが、パズルがしっかり天文ネタになっていたのはさすがです(ちゃんと展示室にヒントが置いてあるんです)。
ついに商標登録をしてしまったシゴセンジャー。今度は主題歌CDまで発売です。どこまで突っ走るのでしょう。
あいにくの雨模様の中、午前一回目の投影で、お客さんの入りはどれくらいかと思っていたら、それでもドームの2/3くらいの盛況ぶり。
「シゴセンジャーを知ってるお友だちは、手を挙げて下さいっ!」という問いかけに、7〜8割くらいのお客さんが手を挙げていました。なんというリピーター率の高さ! すっかり人気者ですね。ていうより、いったいみなさん、何を期待してプラネタリウムに来てるのでしょう!?
今回はグダグダに緩みきったブラック星博士が登場しましたが、あまりのギャグの寒さにシゴセンジャーもヨレヨレになっていました。夏なら「冷房要らず」ですけど、もう冬も間近ですからね〜。
子どもたちも途中、ドームの中で合唱をしてしまうノリっぷり。相変わらず期待を裏切らない楽しい投影でした。
続けて、二回目のプラネタリウムは通常番組の「兵庫の星」。
「♪一番ぼ〜し〜、見〜つけた」の歌詞は、実は明石生まれというエピソード(天文科学館の門の近くに石碑があります)から始まって、兵庫県内各地に伝えられている星の和名の紹介、それから兵庫県にまつわる名前の付いた小惑星の紹介、最後に神戸大の研究者が発表した惑星Xの話題を取り上げました。
ローカルな切り口を、最近の太陽系研究のトピックスまで深めていく展開は、なかなかのヒット作。解説員の個性が出そうな内容なので、時間があれば見比べるのも一興かと(あ、でも投影が11月9日までだ)。
ちなみに、うちのサイトの兵庫にまつわる小惑星を参考資料に使って下さっていました。
午後は2Fの天文ホールで、天文科学セミナー「宇宙開発の最前線」です。
テラキンさんこと寺薗淳也さん(会津大学)をコーディネーターに、天体軌道計算の第一人者で「はやぶさ」やイトカワの軌道計算にも携わってきた吉川真さん(JAXA)、民間宇宙旅行計画に東奔西走の大貫美鈴さん(スペース・フロンティア・ファンデーション)、能代宇宙イベントやロケットガール養成講座の仕掛け人の秋山演亮さん(和歌山大学)というお三方をスピーカに迎えます。
3人とも、喋りだしたら濃さも熱さも尋常でなく、ジェットコースターに3時間半乗りっぱなしのような勢いでした。
トップバッターはJAXAの吉川真さん。「カムバックはやぶさ」というタイトルで、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトの現状と、これまでの経過と成果、そして今後についてのお話です。
「はやぶさ」についての基本的なところはだいたい押さえているつもりですが、現場で携わってきた方のお話は、随所にエピソードがちりばめられていて、たまりません。
吉川さんは、淡路島で学会を終えて明石にきて、このあとは山口に飛び、さらに週明けにはアメリカとオーストラリアの研究者を交えて「はやぶさ」再突入についての打ち合わせという超多忙っぷり。でも2010年6月の帰還に向けて、打ち合わせをするような段階になっているのだなぁと思うと、感慨深いです。
そういえばイトカワの模型が2つ登場しました。テラキンさんが持っているのが従来品。探査初期のデータを元に3D形状を起こして、職人さんが写真をもとに原型表面の凸凹を手作業でつくったというもの。右側がこのたび新規に作成されたもので、はやぶさが探査期間に送ってきた全てのデータを総合して、コンピュータ処理で3D形状を起こしています。模型の表面には右写真のように等高線状の模様が見えます。
表面の質感は職人技が勝っているのですが、新しい模型の方がより正確にイトカワの形状を反映しています。うーん、両方欲しい。でもこれ、一般家庭に置いても、ちょっと変わった形の漬け物石だと思われそうです。FRP製なので軽いんですけどね(実際のイトカワの密度を再現したものもあるそうです)。
お話のあとは「祈り」の上映。随所に吉川さんとテラキンさんの解説が入るという、極めて贅沢な鑑賞会でした。
とにかくバイタリティーの固まりみたいな大貫さん。「民間宇宙開発」をテーマに、宇宙旅行の切り口から、サブオービタル(弾道飛行)、オービタル(地球周回軌道)、軌道滞在(宇宙ホテル)、月旅行の4パターンについて、どこまで現実のものになっているのかを話して頂きました。
個人的な経験を挟むと、私が小学生になるかどうかの頃にスペースシャトルの初飛行があり、21世紀にはシャトルの貨物室を客室に改装したような宇宙機が飛び交っているという想像図を見ながら育ってきたわけです。が。未だにそんなことにはなっておらず……
と言いつつも、すでにソユーズとISSを組み合わせた宇宙旅行は現実のものになっていて、20億〜30億円を払えば、民間人でも宇宙にいける時代になっています。
サブオービタルについては、すでに2004年にスペースシップワンが民間機初の宇宙飛行を実現しています。で、今は営業用の後継機を制作中とのこと。再来年くらいにはテストフライトに入るそうです。「いつかくるかもしれない未来」ではなく、「もうすぐやってくる未来」なのですね。
費用は、おおよそ2,000万〜3,000万円。まだ気軽に手が出る値段ではないですが、家を買うよりは安くなっています。実際に予約も受付中。
「宇宙ホテル」は、さすがに夢の範疇だろうと思っていたら、すでに実験機が軌道に乗っているとのこと。しかも2機も(2棟というべきか)。アメリカのホテル王がNASAの特許を買い取って、宇宙への事業展開に乗り出しているのだそうです。こういうのを自腹でやっちゃうのが、いかにもアメリカっぽい。
月旅行は今のところ計画の域ですが、基本的に既存の技術で可能とのことで、ソユーズをつかった月の裏側を回って戻ってくるパターンの動画が紹介されました。お値段1人110億円で、これは開発費用等々込みのものらしいです。
あとはお金さえあれば……
最後は秋山演亮さん。宇宙開発関係のサイトを見ているとあちこちで名前をお見かけする方です。つい最近まで秋田を根城に能代宇宙イベントやロケットガール養成講座など、ユニークな企画を仕掛けていらっしゃいましたが、今度は和歌山で何やら考えているそうです。
「何かをしたいときに上手く行かないのは、他人に頼った部分があるから」「宇宙旅行に行けないのは『NASAが頑張らないからだ』ではだめ」ということで、「必要なものは自分でつくる」という気持ちを持った理工系の学生を育てたいという思いで、秋田での仕掛けを続けてきたそうです。
和歌山では宇宙港の建設に取り組み、関西版の宇宙イベントも開催していきたいとか。すでに宇宙イベントの射場の候補地は見つけてあって(ロケットを打ち上げたら塩屋の私の自宅から見える場所です)、開催の折には「学生に喝を入れるべく大人の参加チームも募集したい」とのこと。
「与えられるもの」に慣れてしまった私にとっては、身につまされることの多いテーマでもありましたが、女子高生が自作ロケットを打ち上げている動画を見せられた時には、「自分だって」と思ったお客さんも少なくないはず。
いやはや、濃い一日でした。