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観測所雑記帳 Aug.2002
フォーマルハウト 2002年8月1日
梅雨明け後、初めてゆっくり星を見た。日付が変わって(だから8月2日になるが)、望遠鏡を撤収して家に戻る途中、南の空にポツンと輝く星が見えた。
「なんだろ、あんな所に星なんか見えたっけ?」
と思ってよく見たら、みなみのうお座のフォーマルハウトだった。
酷暑が続いていても、星空は巡る。いつかやがて、秋がやってくる。
湿った暖かい風が吹き抜ける熱帯夜の夜。星空だけ、少しだけ秋めいて見えた。
初すばる 2002年8月7日
夜中の観望に夢中になっていたら、いつの間にか東の空に、ぼんやりした小さな雲の切れ端のようなものが昇っていた。なんだろう、と思ってファインダーを向けたら、すばるだった。
少し前にフォーマルハウトを見て、ささやかな秋の気配を感じたばかりというのに、早くも冬の気配……はいくらなんでも早すぎる。
国立天文台の渡部潤一さんの著書「星空を歩く」に、「初すばる」という言葉が出てきて、夏に夜通し観測を続けた後、明け方の空に、その年初めてのすばるを見つけることをそう呼んでいるらしい。早くて梅雨明けの頃から、遅い年でペルセウス座流星群の頃なのだそうだ。
そんなわけで、今年の自分の初すばるは8月7日。明日から甲子園も始まる、夏真っ盛りの明け方の空。
夜明けのオリオン 2002年8月8日
前日「初すばる」のことを書いたばかりというのに、今日は夜明けのオリオンまで見てしまった。平日だというのに何をやっているのやら……というには訳があって、前の日、仕事から帰るなり寝てしまって、夜中に目が覚めたら星がきれいだったというのが、そんな明け方に起きていた理由。
それにしても、梅雨明け後しばらく天気がおかしかったのがウソのような、澄んだ空の日が続いている。おまけに月も新月近くで、風がちょっと強いけど、絶好の星見日和。「スター・ウィーク」も伊達ではないということか。
何やら秋のさびしい気配を漂わせる夜中のフォーマルハウトと違って、夜明けのオリオンは、何か夏のすがすがしい朝を感じさせるものがある。そういえば、HEATWAVEの「オリオンへの道」という唄に出てくるのが、夜明けのオリオンだった。やっぱり夏に作った唄なのに違いない。
野外天体観測会 2002年8月10-11日
明石市立天文科学館の野外天体観測会。
水曜までの週間予報では傘マークがついていたのだが、木曜日に傘マークが取れ、やがて晴れマークが付き始めた。当日朝の明石は、雲の切れ間から青空がのぞいたかと思えば、いきなりにわか雨がパラついたり、不思議な天気。
結局、雲が多いながらも、晴れ間から天の川も見え、まずまずの観測会となった。
詳しいレポートは後ほどまとめる予定です。
月のひつじ 2002年8月12日
関東では7月から公開されていたこの映画、関西では8月10日からの公開。
アポロ11号の月面着陸の瞬間、電波を受信して全世界に中継していたのは、オーストラリアのパークス電波望遠鏡。羊だらけの田舎町に突然降りかかった大役に巻き込まれた人々の様子を、コメディータッチを交えて、でも押さえるところは押さえて描いている。
実はアポロの月着陸、自分が生まれる前の出来事で、それどころかアポロ計画自体も、自分が生まれる前に全て終了していたプロジェクト。30年以上前の話なのに、今でも当時の映像をみるとワクワクする。だけでなく、ついつい涙ぐんでしまう。
パークス電波望遠鏡は、今でも現役で、オーストラリアの大平原でがんばっている。行きたくなるなぁ。
月の土地権利書 2002年8月12日
月の土地権利書、というものがアメリカの会社で売られているらしい。1エーカー、というのはサッカーコート1面分程度らしいのだが、それで\1,980-。月面はもちろん誰の土地でもないのだから、言った者勝ち、獲った者勝ち、買った者勝ち、という発想か。何か人の土地を勝手に「発見」して、勝手に植民地にしていったかつての欧米諸国の姿を見ているようで、悲しくなる。
遊びとしてだけ捉えるのなら面白いのかもしれないが、あの国のことだから、将来月面開発を巡る利権争いの裁判が本当に起きそうで、考えただけでも悲しくなる。
せっかくのオーストラリア産のいい映画なのに、アメリカのこんな商売とセットにしなくても……と、ちょっとだけさびしい思いをしたのだった。
「月のひつじ」の前売り券とセットで、「月の土地権利書」を売っていたというお話。好評のうちに完売したというのだから、これもさびしい。
ペルセウス座流星群 2002年8月13日
星の話などしたこともない知人が、これまた星とはおよそ関わりのない職場のメーリングリストに「今日(12日)はペルセウス座流星群ですね」というメールを送ってきた。
昨年のしし群の影響か、世間的に流星群への注目が高まっているような気がする。毎日新聞に観測ガイドの記事が載ったり、今日の神戸新聞・朝日新聞の夕刊にはペルセ群の写真が一面カラーで掲載されていた。今までこんなこと、あっただろうか。
ジャコビニ流星群……は生まれる前だし。
肝心の流星群極大の夜、神戸市垂水区塩屋町は、断続的に、雲・雲・雲。結局、観望をあきらめて、午前2時過ぎに寝てしまった。関東の茨城・つくばから房総方面に遠征に出かけた友人も、結局雲にたたられたらしい。なかなかうまくいかないものだ。
伝統的七夕 2002年8月15日
旧暦の7月7日ということで、国立天文台などが提唱しているそうだ。
もともと七夕は旧暦の行事なのだから、星にちなんだ行事としては、筋が通っている。
仕事帰りに空を見上げたら、天頂に夏の大三角が高々と掛かっていて、確かにこれは七夕だなぁとつくづく思った。
不思議なもので、来月の21日は中秋の名月。七夕から一ヶ月くらいでお月見というのはおかしいような気がするのだが、これは現在、七夕は新暦、お月見は旧暦と、違う暦を使ってやっているからこその感覚のズレ。かつてはこれが、当たり前だったのだ。
お月見は十五夜の月でないとどうしようもないので旧暦が生き残り、七夕の方は月はともかく晴れさえすれば星は見えるのだから、新暦に移ってしまった……にしては新暦七夕は梅雨の真っ最中なので、これは理由になりそうもない。単に7月7日の語呂がよかったのかなぁ。3月3日の雛祭りも、桃の節句といいながら、しっかり新暦でやるものなぁ。
地図と測量の科学館 2002年8月20日
建設省……じゃなかった、国土交通省国土地理院に併設されている「地図と測量の科学館」。
茨城に帰省した折りに、久しぶりに訪問した。以前は土日閉館というお役所さながらの開館日設定だったが、この7月から土日もオープンするようになった。いまさらながら、という感もあるが、よいことだ。
ちょっとのぞき見るだけのつもりだったのが、3時間も遊んでしまった。三つ子の魂百まで、とはいうが、学生時代の魂は10年近く立っても健在ということか。
その筋の人にお勧めなのは、かつて実際の測量現場で使われていたカールツアイス製の測距儀。さりげなく置いてあるので探してみるのも面白いかも。
地図売場のおやじ 2002年8月20日
「おじさん」というより「おやじ」の呼び方が似合っていた、国土地理院の地図売場のおやじ。以前は、本館の一階の売店で、おっそろしく無愛想に地形図を捌いていた。1/25,000だけで全国4300面もある地形図を、図幅名をいえば迷うことなく引き出しから引っぱり出すのは、技としかいいようがない。自分が大学に入ったばかりの頃はとにかく無愛想きわまりなかったのだが、いつの頃か何となく丸くなり、そのうち地図を買いながらおしゃべりもするようになった。
地図と測量の科学館が出来てからは、売店もそちらに移り、スペースも広くきれいになったのだが、雰囲気的には昔の地図売場の方が似合っていたかもしれない。そのうち自分もつくばを離れ、帰省しても土日は国土地理院が閉まっているので、すっかり縁遠くなっていた。
今回、国土地理院に行ったら、地図売場には若い(?)見慣れないおっさんがいた。今も大学院に残っている後輩に聞いたら、おやじはついに引退したらしいとのこと。そうかぁ、そんなになったかぁ。
もう一回くらい、あのおやじから地図を買いたかったなぁ。
星の写真展 2002年8月21日
柏市中央公民館で行われている「〜星の写真展〜『アマチュアが撮った星の魅力』」。
実家から比較的近いということもあって、足を伸ばしてみた。
科学館などで展示してあるものを除けば、実は生の天体写真を見る機会はあまり多くない。これが、雑誌で見るのとはひと味違った迫力がある。迫力、というより、伝わるものが一段も二段も多くなる、という感じだろうか。
普段はほとんど写真を撮らない自分だが、素直に「いいなぁ」、と感じ入ってしまった。
BORGのホームページで中川さん自らが「一押し」とPRしていた、薬師寺の満月。これは素晴らしい写真。思わず立ちつくしてしまった。
茨城県立自然博物館 2002年8月21日
自分が茨城を離れる少し前に出来た茨城県立自然博物館。
実家から車で10分ほど、自転車でも行けるような距離にあるのだが、ついぞ行ったことがなかった。
お世辞にも交通の便がよいとは言えない場所で、最寄りの駅からバスで30分。そのバスは1時間に1本程度で、最寄りのバス停からさらに10分は歩かされるというとんでもない施設である。出来た当初の頃は、こんな場所まで客が来るのかどうか不思議だった。
もっとも立地環境自体は素晴らしく、博物館の裏手は野鳥観察では有名(らしい)菅生沼。景色だけでも充分楽しめる。
午後から見学に行ったのだが、不覚。館内だけで時間を使い果たしてしまって、屋外を見る時間がほとんどなくなってしまった。というくらい面白かった。
個人的に好きなのは、鉱物の展示、恐竜の化石群とうごめく恐竜模型。そのほかいろんな微生物の拡大模型。敷地内を散歩しながら見る菅生沼の風景。
ってことで、次に帰省したら、一日かけて遊びに行こう。
土曜日に太陽を見よう会 2002年8月24日
これは無理だろう、とばかりの前日の天気予報。降水確率こそ低いものの東京の予報は「曇/雨」。天気図では寒冷前線が日本列島に襲いかからんばかりの勢い。素人目には、どう考えても、晴れるわけがない。
久しぶりに会う知人との待ち合わせ場所を渋谷にしていたので、そのまま桜が丘・五島プラネタリウム天文資料の「土曜日に太陽を見よう会」に行くつもりだった。が、そんな空模様で、渋谷についても空は曇ったまま。ま、せっかくだから行くだけいってみよう、と思って桜が丘を訪ねたら「曇天中止」の立て看板。ま、せっかくなので展示室だけでも見てみようと4階にあがっているうちに、雲間からうっすらと日輪が……
階段を下りたところで村松さんとバッタリ。
「いま、薄日が射してましたよ」「よし、やりましょう!!」
ということで、急遽、玄関の看板も掛け替えて、太陽観測会が始まってしまった。
最初は投影板でもうっすらとしか見えなかった太陽の像。「もっと光を!!」の願いが通じたのか、いつしか青空も広がりはじめ、なんと日食グラスを使って肉眼黒点まで見えてしまった。……いや、3人中、乱視の自分だけ見えなかったけど。
こりゃいける、ということで、急遽Hα太陽望遠鏡もセッティング。そうしたら、なんと見事なループ状のプロミネンスが姿を見せているではないか。うわぁ、すげぇ。
20日にフレアを見たという村松さんは、病みつきになってしまったらしく、また起きないかなぁと、何度も何度もアイピースを覗いている。こちらも何度も覗いているうちに、プロミネンスが次第に形を変えているのが分かる。
ということで、すっかり太陽を堪能した土曜日の昼間だった。
科学技術館・ユニバース 2002年8月24日
東京に出た機会にということで、見に行ってきた。
この日の案内役は理化学研究所の木村かおるさん。元五島プラネ解説員、といった方が通りがよいかもしれない。
なんと満員で、立ち見状態。3Dメガネを渡されて、CG立体映像で太陽系の旅。CGなのだが、マニュアル操作なので、なんとなく親近感がある。続いてアメリカのヤーキス天文台と回線を結んでのライブ天体観測……となるはずだったのだが、残念ながら向こうは曇天。晴れていれば、地球の反対側で撮影した映像を、ほとんどリアルタイムでこちらのスクリーンに映し出せたはず。
インターネットがこれだけ身近になった時代だけど、電話で直接話しながらその場で情報のやり取りが出来るというのは、やっぱりすごいと思ってしまう。技術的なことよりも、その場を共有できる感動があるからなのかな。ライブショーというのは、伊達ではない。
桜が丘・星のつどい 2002年8月24日
今年3回目の参加になってしまった。
しかも、雲が多いながら、金星と月が見えてしまった。恐るべし、桜が丘。
今回は月のクレーターのお話。知ってるようで知らない話で、毎回ながら、勉強になる。
来月9月21日の中秋の名月の予習といったところ。
月の話ついでに、明石からのお客さんとして明石の観月会と星の友の会の紹介をするハメになった。アホやと思われたやろなぁ。ま、アホには違いないか。
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