前のページへ戻る>
塩屋天体観測所> 流星電波観測室>
流星電波観測ことはじめ・準備編
「2万円で始めるHRO」 2002年10月5日
流星の電波観測を始めようと思ったのは、一つの天文雑誌の記事がきっかけだった。
「星ナビ」2002年11月号。しし座流星群の特集の中にあった「2万円で始めるHRO」というページに眼が止まった。どうやら電波観測のことらしい、ということは、写真と見出しから察しがついた。
電波観測なんて、難しいものに違いない、と思っていた私にとって、これは意外な記事だった。なんだ、要はラジオ聞いてるのと変わらないじゃないか。けっこう簡単そうだぞ。何より2万円で始められるというのがいい。望遠鏡買うよりよっぽど安上がりだ。
これで曇った日も流れ星が楽しめるのなら安いものだ。そんなこんなで、すっかり流星電波観測に興味を持ってしまった。
2万円より安くなるかも 2002年10月5日
"HRO"とは、"Ham-band Radio
Observaiton"、つまりアマチュア無線を利用した電波観測ということ。
詳しい話は記事の概要が、アストロアーツのサイトに出ているので、ご覧下さいませ。
そろえる機材の一覧を見ていて気付いたのだが、受信機の値段が全体の半分の9,800円で、アンテナが約1/4の5,600円。受信機を作るのは大変だが、アンテナくらいは何とかならないか。高校生の頃、地学部と同じ建物にあった電波部の本に、アマチュア無線のアンテナなら、ワイヤーで作れるというような記事があったのを思い出したのだ。ワイヤーを張るだけだったら、むちゃくちゃ安くできるじゃないか。
軒先にワイヤーを張って、窓枠の隙間からケーブルを部屋に引き込めば、なんだ、あとは受信機買ったら終わりじゃないか。わっはっはっ、簡単に出来そうだ。
誤解と錯覚にもとづいた電波観測への道は、こうして始まってしまったのだ。
『流星電波観測ガイドブック』 2002年10月6日
『流星電波観測ガイドブック』という本がCQ出版社から出ている。
これが三宮のジュンク堂書店に並んでいたので、ついつい手にとって読んでみた。
……げっ。なんだか天文の本というより、アマチュア無線の本を読んでいるようだ。なんかやっぱり違う世界なのだろうか。ちょっと頭を冷やして考えてみることにしよう。
HRO受信機注文!! 2002年10月9日
結局、HRO受信機を注文してしまった。
大丈夫なんかな、というちょっとした不安より、なんだか面白そうだというワクワク感の方が勝ってしまったのだ。
仕事の合間を見計らって、アイテック電子研究所に電話。
受話器を取った女性の方も「『星ナビ』とかいう雑誌ご覧になられたんですか?」と聞いてこられて、やっぱり同じこと考える人が多いのだろう。
2週間待ち、とのことだったが、もともとそんなに売れる製品でなし、一度に問い合わせが集中したらそうなるだろう。しし群に間に合う納期になっているのがえらいと思った。
本も買ってしまった 2002年10月9日
ということで、「アマチュア無線の本みたい」と思った「流星電波観測ガイドブック」も買ってきた。
家に帰ってページをめくってみると、なるほど、要は今まで、光の眼でしか目を向けていなかった宇宙に、電波の眼で挑もうということだ。電波の話ばかりに見えたのはそういうわけだ。
そうとわかれば、難しいことはない……といけばよいのだが、私、数学苦手で、微分積分全然分からないのだ。数式全部飛ばして読んじゃいました。観測自体は問題なさそうだが、むむむ、む〜。
アンテナ作れる……のかな? 2002年10月12日
アンテナ自作の勉強のため、本屋でアマチュア無線のアンテナの本を立ち読み。
インピーダンス? SWR? えーっと、その、なに?
実は高校生の時にアマチュア無線の免許(4級だけど)は取っているので、言葉は聞いたことあるのだが、中身はきれいに忘れていて、何が何だかさっぱり分からない。間に合うか? しし群!?
電源調達 2002年10月13日
注文してある、HRO受信機には電源がついていない。
「家電の量販店で3,000円ほどで購入できます」とあるが、ますはジャンク品で試してみることにした。「安価な電源ほどノイズが多い」らしいのだが、その時はその時だ。
元町高架下商店街で、AC-DCアダプターを購入。一つ300円だが、2つで500円にまけてくれた。動くかどうか分からないので、余分に買ってみた次第。さて、どうなるか。
同軸ケーブルがない!! 2002年10月13日
この連休の間、流星電波観測の資材を揃えようと、三宮〜神戸界隈を歩き回ってみた。
ところが無線機を置いているお店が、ない。元町高架下まで探してみたのが、ないものはない。
私が高校に通っていた頃は、茨城の田舎町の家電量販店でもアマチュア無線のコーナーがあったので、まさか神戸で探しあぐねるとは思っていなかったのだが……ちゃんと調べて専門店探さないとダメなのかな。
HRO受信機到着 2002年10月28日
HRO受信機が到着。
ジャンクで買ったACアダプタをつないで動作確認。とりあえず動いてはいるようだ(実は最初に電源の極性を間違えた)。
アンテナがないので、手元にあったいらなくなった導線を切って、アンテナ端子に突っ込む。とりあえずノイズだけ聞こえる。調子に乗って余っていたTV用の同軸ケーブルの先端に、1/4λに切った導線を2本つけてダイポールアンテナにし、受信機につなぐ。「ザッザッ」という周期的な雑音が入るが、流星エコーは全く入らない。室内だから当たり前。
とりあえず窓の外にアンテナを出してみた。いきなりノイズの量が4倍くらいに跳ね上がる。
1時間ほど放っておいたが、結局エコーの入感はなし。
アンテナとは名ばかりで、まぁ針金をつなげただけなのと同じだから、まずは仕方のないところ。
試験2日目 2002年10月29日
そのまま一晩放ってみたが、やっぱりエコーは入っていない。
試しにアンテナを家から少し離して張ってみたら、ノイズはだいぶ減った。もっとも家の下は公道なので、中途半端な張り方をすると危険なため、すぐ元に戻してしまった。
仮のアンテナを張ったアパートの窓、実は直上に電線が通っているので、もともと流星エコーを観測できる環境ではない。
夜になって、ノイズの原因をいろいろ探ってみたが、どうもはっきりしない。PCのモニタがノイズ源の一つなのは分かっていたが、これはアンテナを部屋から離すことである程度解決。TVや冷蔵庫や蛍光灯は特に影響なし。PC本体もあまり関係ないようだ。片っ端から部屋の家電製品をON/OFFしてみたが、特に影響はないらしい。あとはアンテナの位置を抜本的に変えるくらいか。
アンテナ設置許可 2002年10月29日
とにかくアンテナの位置をどうにかせなあかんことは分かった。
アパートの屋根の上に使っていないTVアンテナの支柱があったので、家賃を払いに言ったついでに、大家さんに屋根の上に電波観測用のアンテナを張らせてくれとお願いした。
どうなるかなぁ、と思ったが、あっさりOKが出てしまった。いよいよ本格的にアンテナを張る羽目になりそうだ。
……それにしても、梯子ないのに、どうやって2階の屋根に登ろうか。
いや、ちゃんとしたアンテナと同軸ケーブルを用意する方が先か。大阪行かなアカンのやろなぁ。
買い出し 2002年11月3日
流星電波観測用のアンテナと同軸ケーブルを買いに、大阪・日本橋に出かけた。
「日本橋」は「にほんばし」でなく、「にっぽんばし」なのだそうだ。この辺、関西歴5年の底の浅さ。
東京の秋葉原は何度も通ったことがあるが、大阪・日本橋の電気街は初めて。ざっと見たところ、秋葉原の半分くらいの規模だろうか。
アマチュア無線用品を扱っている店を探すのだが、これが少ない。目に付くのはパソコン屋ばかり。家電のお店も、心なしか少ないような気がする。これもご時世か。
結局、2エレメントの八木アンテナと同軸ケーブルを20m買ってきた。さてさて。
<この日の買い物>
COMET CA52HB (2el HB9CV) |
\5,460- |
5D-FB同軸(コネクタ付き)20m |
\2,500- |
その他小物類と消費税 |
\958- |
屋根の上の同軸線引き 2002年11月3日
日本橋から家に帰った途端、ドバーっと夕立。この季節になんだというのだ。
雨が上がる頃には、日没まで後一時間。アンテナを張る作業をしたものかどうか迷ったが、とりあえず屋根の上に上がってみた。
これが、恐い!!
煙と一緒で高いところに登るのは好きな方なのだが、落ちたら5m、場所によっては7m下のコンクリートに叩きつけられるとあっては、足がすくむ。しかも、強風。
とても八木アンテナを上げられる状況ではなかったので、同軸ケーブルを屋根上まで引き、使っていないTVアンテナのポールを利用して自作のダイポールアンテナを取り付けた。
天体観測のはずが、無線になり、しまいには配線仕事になってしまった。これでいいのか?
初エコー 2002年11月3日
アンテナを受信機に接続して、待つことしばし。
一向に流星エコーを受信する気配がない。
スピーカーからは、「ザーザーザー」というノイズだけが聞こえ続ける。
データを解析するHROFFTというソフトの表示する画面上でも、変化はない。
10分弱が経過した頃だったか、ノイズの中に「ポーン」という甲高い音が響いた。
画面を見ると、強い信号が入った表示。
これかっ!!
2002年11月3日17時39分、塩屋天体観測所でとらえた、初めての流星エコーの瞬間だった。
ここまで使ったお金……\19,788- →とりあえず2万円枠で観測開始
このページの先頭へ戻る>
観測編へ進む>
前のページへ戻る>