2003.12.9 update
ふたご座流星群は、電波観測では夜中に向けて流星のエコー数がどんどん増えていくのですが、放射点が南中する1〜2時にかけて、急激にエコーが減少する現象が起こります。3時過ぎになると再びエコーが急増するのですが、この現象は電波観測の人々の間で「天頂効果」と呼ばれています。
観測地データ 観測者:福田和昭 (自称:塩屋天体観測所) 観測地:兵庫県神戸市垂水区 受信機:アイテック製 HRO-RX1a アンテナ:COMET製 CA-52HB (2el HB9CV/7m高) ケーブル:5D-FB 10m パソコン:CPU Celeron700MHz/RAM 192MB/HDD 40GB ソフト:HROFFT Ver1.0.0 ※右の図で、淡いブルーの■が塩屋天体観測所。ピンクの■が送信局のJA9YDB福井高専電波研究会(福井県鯖江市)です。動いている黄色い帯は、電波を反射している流星が飛んでいる反射領域です。筑波大学の小川宏さんの計算結果を基にGIFアニメ化しました。12月13日のふたご群のシュミレーションです。 |
上の図は、反射領域シュミレーションです。群流星の場合、流星の飛来する方向が分かっていますから、送信点と受信点の位置関係とレーダー方程式により、どのエリアに発生した流星のエコーを拾っているのか予測することが出来ます。といっても実際に計算すると大変なことになるのですが、筑波大学の小川宏さんが塩屋天体観測所での反射領域シュミレーションを出してくださいました。
夕刻は神戸に近いところを横切る帯状のエリアですが、次第に西へ移動して、1時台になると消滅してしまいます。そして3時台になると、いきなり東に反射領域が出現。再び西に寄ってきて、やがて夜明けを迎えます。実はこの反射領域が消滅している時間帯が「天頂効果」の起こっている時間帯でもあります。なんでこんなことが起こるのか、ちょこっと書いてみました。
Aが送信点、Tが受信点です。ローマ字に意味はないのですが、"A"を電波送信塔、"T"を受信アンテナだと思ってください。図の右側を東、左側を西とします。 放射点が東の空から昇ったばかり、高度0度の状態です。群流星は地面と平行に飛んでいます。 |
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放射点高度が東の空で15度になりました。受信点に届くエコーを反射している流星が、少し西のものになります。 | |
放射点高度が東の空で30度になりました。反射領域はさらに西になっています。 | |
放射点高度が東の空で45度です。反射領域はどんどん西に移動します。 | |
放射点高度が東の空で60度になりました。ずいぶん西に離れた流星のエコーを拾っているのが分かります。 | |
放射点高度が東の空で75度。ほとんど頭の真上から流星が出現している状態です。ところが受信点にはエコーが届かなくなってしまいました。 | |
放射点高度が90度、つまり天頂にきた状態です。図の通り、まったくエコーを受信することが出来ません。この現象を「天頂効果」と呼んでいます。 | |
放射点が西空に回って、高度が75度になりました。受信点ではまだエコーを拾うことが出来ません。 | |
放射点高度が西空で60度になりました。受信点に再びエコーが届くようになります。反射領域がいきなり東に移っているのに注意してください。 | |
放射点高度が西空で45度になりました。東の隅にあった反射領域が少し手前に寄ってきます。 | |
放射点高度が西空で30度まで下がりました。反射領域はどんどん手前に近づいてきます。 | |
放射点高度が西空で15度になりました。反射領域がずいぶん手前になりました。 | |
放射点高度が西空で0度の状態です。 |
実際は地球の丸みや、送信点と受信点の方位角と流星の向き、アンテナの指向性など、様々な要因を加味しなければならないので、これほど単純なものではありません。でも「天頂効果」の起こるわけや、放射点が子午線を通過すると反射領域がいきなり西から東に移動するわけを、だいたいつかんで頂けると思います。
神戸で観測するふたご座流星群は、放射点高度が85度以上に達しますので「天頂効果」が顕著に現れます。また群流星の動向を正確に把握するためには、複数の観測点のデータを総合して、天頂効果の補正を行なわなければなりません。