塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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深海調査研究船「かいれい」
無人探査機「かいこう7000II」(1)

(2008.4.12訪問/2008.4.13記)

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深海調査研究船「かいれい」
国際総トン数:4,628t
全長:104.9m、幅:16m
速力:約16ノット
装備等:無人探査機「かいこう7000IIなど」
定員:60名(乗組員29名、かいこう7000II運行要員9名、研究員22名)
就航:1997年

深海調査研究船「かいれい」

 独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は海洋に関する基盤的研究開発、学術研究を行っています。海洋調査のための様々な船を所有・運用していて、有名どころでは有人潜水調査船「しんかい6500」がJAMSTECの所属です。

 2008年4月、深海研究調査船「かいれい」と、無人探査機「かいこう7000II」が神戸港にやってきて、一般公開されました。

 日本国内で潜水船の製造設備のある造船所は、神戸の川崎造船と三菱重工だけです。JAMSTECの深海調査船も神戸でつくられていて、有人の「しんかい6500」は三菱重工、支援母船「よこすか」は川崎重工の生まれ。今回やってきた「かいれい」は、「よこすか」と同じ船形で、川崎重工に発注されたのですが、阪神・淡路大震災と重なり、川重神戸造船所ではなく、坂出造船所での建造となりました。坂出はふだんタンカーなどの大型船をつくっているので、神戸のスタッフがずいぶん応援に出かけたそうです。

「かいれい」一般公開

船首側からだと、客船のようです 船名表記

 2008年4月12日、神戸港中突堤で一般公開中の「かいれい」。

 白い船体に朱色のファンネル(煙突)で、船首側から見ると、スマートな姿です。小型の客船のようにも見えます。

船尾側からの眺め 無人探査機「かいこう7000II」

 船尾には大きなクレーンが付いているので、こちらから見たら、どうみても特殊な船。ちなみに後部甲板に載っている黄色い船体が無人探査機の「かいこう7000II」。普段は格納庫にしまってあります。

 「かいれい」は後部にもブリッジが付いているのが面白いです。この後部操舵室ではクレーン作業の指示を行います。

タラップ 踏み段が丸いので注意

 「R/V」は「Resarch Vehicle」の略称でしょうか。受付のテントでパンフレットを頂き、いざ、船上へ。

生まれは川崎重工 このデッキの下は「かいこう」格納庫

 2002年に川崎造船として分社されましたが、「かいれい」建造当時は川崎重工の造船部門だったので、ブリッジの下に川重の銘板が取り付けられています。

ブリッジ見学

ブリッジ内部 自動車のハンドルのような操舵輪

 1990年代建造の船なので、ブリッジは新しくてきれいです。操舵輪も小型で、まるで自動車のハンドルのようです。

イスは……これだけ? 機関などのコンソール

 イスが見あたらず、レストランの子ども用補助椅子のようなものがあっただけなのですが、一般公開で邪魔になるからと片付けていたのでしょうか。

ジャイロコンパス 双眼鏡はニコン12cm

 双眼鏡は天文ファンおなじみのニコン12cm。というか、需要としては船舶用が本筋です。ブリッジ室内の左舷側・右舷側に1台ずつ設置されています。窓越しなので、星見には向きません(というか、見張り用です)。

「かいれい」の号鐘 研究機構も神頼み

 号鐘もブリッジの室内にあります。実は法律で積んでおくことが定められている備品です。

 ブリッジの片隅には神棚がありました。ここでは金比羅さんのお札がありました。

居住設備

広い廊下 応接室

 「かいれい」の船内でまず驚くのが、広い廊下。船の廊下といえば、人がすれ違うにも互いに避けあわなければならない狭い通路が普通ですが、「かいれい」は陸上の建物のように廊下が広いのです。

 研究船は船内を荷物を抱えて動き回ることが多いのですが、これまではどちらかが部屋に入らないとすれ違えませんでした。さすがに不便ということで、「よこすか」では80cmの通路幅が、「かいれい」では120cmになったそうです。

1人部屋、飾り毛布が粋な演出 4人部屋

 端艇甲板(3F)居住区の1人部屋と4人部屋が公開されていました。4人部屋も洗面台やソファーこそ共用ですが、ベッドと机は小部屋になっていて、事実上の個室になっています。プライバシーを重視する時代の流れにあわせての配慮とのこと。女性研究者も乗船しやすくなっています。

洗濯室 浴室

 調査のための航海は長期間になることが多いので、ビジネスホテルのような設備が整っています。床こそフローリングですが、壁は船体の鋼板にペンキを塗られただけというのが、やはり船内。浴室の更衣所のヘルスメーターが、なんとなく庶民的です。これとは別にシャワールームもありました。

食堂 ご自慢の冷蔵庫

 食堂は全体を撮した写真がないのですが、6人がけのテーブルが4つあります。「かいれい」の定員は60名なので、2交代で食事が済むことになります。実際は24時間体制で不規則な食事になることも多く、コンビニの棚のような冷蔵庫は、それに対しての配慮。

サロン チャイム

 食堂の続きの区画がサロンになっています。大和絵と日本人形で、和風のイメージです。サロンの片隅にはチャイムが置いてありました。

パソコンルーム 電話室

 パソコンルームはMacだらけ。壁を挟んだ隣のビデオラボラトリーはWinマシンでした。

 電話室の緑の受話器の公衆電話はNTTDoCoMo。携帯電話があれば公衆電話は要らないだろうというのは陸の人間の考えることで、海に出てしまえば基地局はありませんから、携帯は使えません。この電話機もおそらく衛星船舶電話だと思います。

 右側の電話機はインマルサット。DoCoMoのエリア外はこちらを使うのでしょうが、通話料が半端じゃないです。

リサーチルーム JAMSTECヘルメット

 リサーチルームは、ミーティングルームとして使われる他、地形データ処理のコンピュータも置かれているそうです。

おまけ

 神戸港には潜水船やそれに関わる設備を持った船が、たびたび整備のためにやってきます。「かいれい」の姉妹船ともいえる「よこすか」の写真もご紹介しておきましょう。

支援母船「よこすか」(2005.10.26) 支援母船「よこすか」(2007.12.15)

 同じ船形だけあって、ほとんど見分けがつきませんが、「かいれい」の方が後からの建造なので、さまざまな改良点が盛り込まれているとのこと。船尾のクレーンは有人探査船を扱う「よこすか」の方が大きいようです。

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(2008.4.12訪問/2008.4.13記)

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