塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記
前のページへ戻る
188cm反射望遠鏡の主鏡。鏡に映っているのは私です(左側)。
私が物心ついた頃から、2004年まで、日本国内最大の天体望遠鏡といえば、岡山天体物理観測所の188cm反射望遠鏡でした。日本一の座こそ西はりま天文台のなゆた望遠鏡に取って代わられましたが(2006年現在)、長らく日本の光学天文学を支え、今でも観測装置に改良を重ねて一線で活躍するベテランです。
188cm望遠鏡のドーム |
岡山天体物理観測所の開所は1960年(明石市立天文科学館と同い年)。
岡山が選ばれた決め手が、日本有数の晴天率。瀬戸内海気候で曇りや雨の日が少ないのです。いくら空が澄んでいても、曇って観測できなかったら元も子もないですから。
そんな事実を証明するかのように、この日の天気は……大雨。
観測所のある竹林寺山はガスに包まれ、視界がほとんどありません。巨大なドームもこの有り様。ふだんは近くの駐車場から歩いて構内に入るのですが、天文台の方が見るに見かねて、バスをドームに横付けさせてくれました。
望遠鏡とは思えぬ大きさ |
青に塗ったのは最近とのこと |
通常の見学コースではドーム外周のガラス越しに眺めるだけの188cm鏡ですが、この日は特別。
明石市立天文科学館星の友の会の施設見学会の一環として、ドームの中まで案内していただきました。
ぬははは。笑うしかない大きさです。
案内の戸田さん曰く
「西はりまのなゆた望遠鏡が日本一って言っていますけど、反射鏡が一回り大きいだけですから。全体の大きさを比べてみれば、どちらが本当に『日本一大きな望遠鏡』か分かりますよ(笑)」
とのこと。望遠鏡の口径は、岡山が188cm、なゆたが200cmなのですが、主鏡の焦点距離は岡山が9.2m(F4.2)、西はりまは3m(F1.5)ですから、鏡筒の長さは岡山の方が断然勝ります。そして岡山の架台は巨大なイギリス式赤道儀、なゆたの架台はフォーク式経緯台ですから非常に省スペース。総合的な大きさ比べは、岡山の圧勝!? なのです。
実際のところ、焦点距離が短い主鏡を精度良く作り出す研磨技術が発達したこと、コンピュータ制御で高精度で天体導入・追尾が可能な経緯台が実現したことが、なゆた望遠鏡のコンパクトさに貢献しています。口径以外は小さくした方が、なにかと安く便利に出来ますからね。
建設年度に40年以上も開きがありますから、それだけ技術の進歩があったということです。
ちなみに人と比べてこんな大きさ(一部) |
この写真だけだと望遠鏡の一部には見えません |
床がせり上がります |
おっと、鏡面が見えてきました |
ちなみに人と比べてこんな大きさ(ほぼ全体) |
巨大なバランスウエイト |
手前は副鏡 |
メカメカしくて素敵です |
大盤振る舞いで、ドーム周縁のキャットウォークの辺りまで上げていただきました。
質問にも熱が入りまくり、この望遠鏡の見学だけで一時間以上も費やしてしまいました。
「ニュートン台」 |
ニュートン焦点機器交換用クレーン |
ニュートン焦点は最近、ほとんど使われることがなく、メンテナンスの時に使用される程度とのこと。ドームのスリットにはニュートン焦点に届くためのワゴン!?がついています。渡部潤一さんの『彗星の木星衝突を追って』に「ニュートン台」として登場するものです。
最近はカセグレン焦点とクーデ焦点を使っての観測が主流です。
天文台ウェイトリフティング部備品(ウソ) |
組み立てるとM16になります(ウソ) |
あちこちに工具やらなにやらが置いてあって、なまなましい限りです。
天文学者が望遠鏡に張り付いて観測するというのは過去の物語。現在は主にCCD等でデータを記録するので、ドームの中で活躍するのはメンテナンスの人たちです。
外気との気温差をなくすため |
たしかに猛烈な集光力です |
ドームの中は寒いのです。外気との温度差は観測の大敵ですから、たえず空調で気温をコントロールしています。
古典的雨水回収装置「バケツ」 |
なんでペットフード!? |
古典的雨水回収装置発見。古い建物なので、あちこちで雨漏りがあるそうです。
現在耐震補強工事中で、ドームの外のあちこちに足場が組まれています。ブルーシートはいかにも工事現場的雰囲気をかもし出しているのですが、ペットフードらしきの巨大な袋が謎でした。
(2006.11.26訪問/2006.11.27記 福田和昭)