塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記
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(2004.9.1,2007.1.3訪問/2007.11.17記)
「宗谷」全景
船尾側の階段から、2階にあたる上甲板に降りることができます。主に乗組員の生活の場となっていたフロアです。
やっぱり狭い廊下 |
4人部屋の第3科員室 |
相変わらず狭い廊下。その外側に居室が並んでいます。基本的には、相部屋が普通です。
第3科員室の机 |
第2科員室 |
第1科員室 |
解役前日に書かれたもの(第2科員室) |
「宗谷」は南極観測の任を解かれたあとも、海上保安庁の巡視船として、砕氷能力を活かして北海道で働きました。海難救助出動350件以上、救助船125隻、救助人数約1,000名に及んだといいます。最晩年は相当、老朽化が進んでいたはずですが、現場の人にも愛された船だったのでしょう。
現在は非常階段となっている船内階段 |
糧食小出し庫 |
船内の階段は狭くて急です。でもこれは、今の船でも客船以外は変わらないかもしれません。
糧食小出し庫は、名前の通り、食料品倉庫。「小出し」が付くのは、メインの糧食庫が船倉にあるからです。当座の分だけこちらに出して調理したのでしょう。
調理室 |
流し場 |
ということで調理室です。蒸気釜、電気式パン焼き機装備。変わったところでは豆腐製造機。揺れる船内で130人分もの食事を用意するのは大変だったでしょう。調理室の隣は流し場。窓が円いことを除けば、学校の給食室みたいです。
この下が犬小屋 |
クーラー代わりのアイスクリーム製造機 |
上甲板の船首に近い部分は一般公開されていないのですが、その区画の間際に「タロ、ジロの犬小屋」という看板があります。初期の南極観測隊は犬ぞり牽きのカラフト犬を連れていったことが知られていますが、その犬小屋が1フロア下(中甲板)に設けられていました。
「宗谷」は「南極に行くのにクーラーは贅沢だ」と冷房設備を付けてもらえなかったのですが、暑さに弱いカラフト犬の犬小屋だけはクーラーがありました。ちょっと考えれば分かるのですが、南極へ行くためには酷暑の赤道直下を突っ切らないといけないのです。おかげで人間の部屋の温度は40度を超えていたとか。
せめてもの清涼を味わうために積み込まれたのがアイスクリームフリーザー。なんだか泣けてくるような話です。
第6航海科倉庫 |
科員食器室(観測隊員食器室) |
倉庫というわりには小さな部屋の第6航海科倉庫。中には信号旗がびっしり置いてありました。
調理室の向かいにあるのが科員食器室。3階の士官食器室同様、戸棚の中に差し込み式で食器を収納しています。左の壁にも、コップを置く台なのか、円形の穴を開けた板が取り付けられています。
科員食堂(観測隊員食堂) |
現在は宗谷展示室 |
中央部で一番広い部屋が科員食堂。南極観測当時は観測隊員の食堂でした。長期の航海では娯楽の場にもなっていたのか、ボードゲームの板も展示してありました。
室内は現在、宗谷資料室として、当時の写真や、船舶国籍証書など関連資料が並んでいます。
2,400馬力8気筒エンジン |
左舷と右舷に1機ずつ並んでいます |
宗谷展示室の床の一部をくり抜いて、主機室(エンジンルーム)を見おろすことができるようになっています。
エンジンは新潟鉄鋼所製の8気筒ディーゼルエンジン(2,400馬力)を2機搭載していました。これで2機のスクリューを回します。
建造時の「宗谷」は蒸気機関でしたが、南極観測船への改装時に、このディーゼルエンジンに積み替えられました。それでも船が小型なこともあって、南極では幾度も氷に閉じこめられています。
治療室・診察台 |
治療室・デスク |
長い航海を行う「宗谷」には治療室もありました。医療関係の道具が、とっても昭和の雰囲気です。虫垂炎(盲腸)程度の手術は船内で行ったそうですが、揺れる船の中での手術は、考えるだけでも恐ろしい。
後の「ふじ」「しらせ」には、歯科室や「タイガーカット」理容室がありますが、「宗谷」にはこうした設備はありません。
第8科員室 |
エアスクープ |
上甲板の左舷側は、一般公開されている区画は全て居室になっています。南極への往路はずっと南側になるので、陽当たりが良すぎて酷暑で大変だったそうです。また「宗谷」はローリング(横揺れ)の激しい船だったので、ベッドが船の進行方向と直角に置かれている部屋は、それはそれは大変だったそうです。
右写真のエアスクープは、丸窓に取り付けて、船外の空気を室内に取り込むもの。一般にいうベンチレーターです。南極観測当時の航海速力は11ノット(=約20.4km/h)ですから、自転車で風を受ける程度。うーん。
宗谷時代の防寒衣服 |
どの船にもある斧 |
「宗谷」時代の防寒衣服を着た人がいました。今からすると素朴な感じです。肩のネコも防寒着の装備のうちなのでしょう(違う)。初代の南極観測隊にはカラフト犬と共に「たけし」というネコが1匹参加していたそうです。
なお現在は、南極の生態系の保護のため、生きている生物の持ち込みは禁止されています。
(2004.9.1,2007.1.3訪問/2007.11.17記)