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はじめての天文科学館

はじまりは秋の空

 それは1998年10月11日のことでした。

 神戸に居を移してまだ間もない頃です。澄み渡った秋晴れの空の下、その年の春に開通したばかりの明石海峡大橋を見に行こうと、えっちらおっちらサイクリングに出かけたのでした。

 サイクリングと言っても、当時住んでいたアパートから明石海峡大橋まで20分ほど。地元の方以外にはあまり知られていませんが、明石海峡大橋の本州側の起点は、明石でなくて神戸市垂水区です。せっかく天気も良いのだし、この際なので、正真正銘の「明石」まで足を伸ばしてみようと思い立ちました。

 舞子の浜からさらに西へ。やがて、ふっと視界に飛び込んできた時計塔。それが明石市立天文科学館でした。

東経135度!

 天文科学館の建物は、小学校低学年のころから知っていました。家にあった百科事典に、日本標準時のコラムと一緒に時計塔の写真が載っていたのです。

 「へ〜っ、ここが東経135度なのか」

 と、科学館の高塔を仰ぎ見ながら、国道2号線を、そのまま西に走りすぎました。

 「ん、日本標準時子午線を通過したのなら、これはちゃんとその筋の建物に、表敬訪問しないといけないぞ」

 なんてアホなことを思い立ったのが運の尽き。学生時代に地理を専攻していたこともあって、子午線を通過する記念に、押さえるところは押さえておこう、なんて思ったのでしょう。

 入館料、大人700円。

 高い〜と思いました。失礼な奴です。プラネタリウムは見る気がなかったので、展示だけ見ておけばいいか、と思っていたのですが、なにせ展示とプラネタリウムの料金が分かれていません(他の館はプラネタリウムだけ別料金の所が多い)。う〜、しょうがないなぁ。もったいないから、プラネタリウムも見ていくか。

 そんなこんなでチケットを買って、そそくさと館内に入ったのでした。

プラネタリウム

 それまでも何度もプラネタリウムには足を運んだことがあるのですが、「作りものの星を見て何が面白いんだろう」と、いつも思っていました。わざわざ人工の星空を見に行く時間があったら、その分ほんものの空を見た方が面白いんじゃないのかなぁ、な〜んて。

 ドームの中では、解説台そばの北側の席に座りました。この辺のポイントは押さえています。

 解説員の男性の挨拶から始まって、「へぇ〜、人がしゃべるんだ」というところから驚きました。それまで見たプラネタリウムって、自動的にスライドや解説のテープが流れる、そんな番組だけだったのです。でも正直なところ、機械が古いから、人がしゃべって解説してるんだろう、くらいにしか思いませんでした。

 やがてドームの中に夜の帳が降りると、静かに語りかけるように星座の案内が始まります。解説の声にあわせて空を動き回るポインター。緑色の矢印を追いかけているうちに、いつしかすっかり、ドームスクリーンの星空に引き込まれていきました。

 10月とはいえ、夕暮れの空には、夏の星々が輝いています。天の川をはさんで輝くベガとアルタイル、そしてはくちょう座……夏の大三角の解説を聞きながら、なんとなくわくわくしている自分に気付きます。そして、ふっと思い出してしまったのです。

 「星を見ることって、こんなに楽しかったっけ!」

星の友の会

 すっかり遠ざかっていた天文の世界に、そんなきっかけで舞い戻ってしまいました。

 それから2年後、新聞で「星の友の会会員募集」の記事を読みました。震災で活動を停止していた星の友の会が、5年ぶりに活動を再開するというのです。さっそく会員登録しました。実は「会員は入館料半額」が魅力だったというのが正直なところです(2004年度からは年間フリーパスになっています)。

 そのうち月に一度は天文科学館に通うようになり、野外天体観測会にも参加し、そんなこんなを重ねているうちに、いつしか星のともだちも増えました。今では星の友の会の仲間と、天文科学館の観望会のお手伝いなんかもさせて頂いています。

 都会から出ることは出来なくても、街中で輝く星たちを楽しんでいます。気がつけば、朝な夕なに空を眺めていたりします。星空に親しむというささやかな楽しみが、何気ない日常にたくさんの彩りを添えてくれます。

 春夏秋冬、夕暮れに夜更けに明け方、それぞれの季節や時間に輝く星たちや、いろいろな天文現象に出会うたびに思うんです。

 「星が好きでよかった」

 そんなきっかけを作ってくれた天文科学館に、感謝!しています。

(2005年4月20日 記)

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