塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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メガスターIIを見てきました

メガスターII

 大平貴之さんが個人的に製作しているプラネタリウムとしているメガスター投影機。
 2000年に投影星数が約100万個のメガスターが公開され、2003年には星の数を約400万個まで増やしたメガスターIIが公開されました。

MEGASTAR II 投影機
この写真では下半分が隠れています
(川崎市青少年科学館にて)

どんな投影機?

 最大の特徴は、メガスターの名の通り、数百万個の星を映し出すという圧倒的な描写力でしょう。それにも関わらず小型のため、移動公演も行われ、天文以外のイベントにも活躍しています。開発の狙いや目指したものについては大平さんのサイトを見ていただくのがよいでしょう。
 2003年までは常設館がなく、期間限定の移動公演ばかりで、入場が難しいほどの人気ぶりでしたが、2004年度からは川崎市青少年科学館と、7月からはお台場の日本科学未来館で常設公開されています。

実際に見てみました・川崎編(メガスターII 1号機フェニックス)

川崎市青少年科学館 メガスターII(左)とGM-II投影機

 で、ホンマのところはどないやねん、と見てみました。まずは川崎市青少年科学館から。

 小田急線の向ヶ丘遊園から、えんえん15分歩いて生田緑地に到着。2004年6月2日の水曜日だったのですが、平日は一般投影が15:00からの回だけです。

 混んでいたら大変だなぁ、と思っていたら、案に相違してのんびりムード。冷静に考えれば水曜日の15時にプラネタリウムを駅から15分も歩いて見に来るなんて、相当の暇人か物好きです。私の他の入場者は小さなお子さんを連れた家族連れが数組でした。

 ドームに入る前に、双眼鏡の貸し出し(無料)があります。メガスターIIの星空を堪能してもらうためのサービスです。普段は家族などのグループに1台らしいのですが、この日は空いていたので特別に1人1台の双眼鏡が渡されました。詳しく覚えていませんが、7×35くらいのものだったと思います。

 ドーム中央には本来の主、五藤光学のGM-II-16-T型投影機が鎮座しています。そしてその東側に黒い箱のリフトに載せられたメガスターII1号機フェニックス。なんとも大胆な設置法です。ドームの真ん中じゃなくて大丈夫なのかしらんと密かに心配。

 川崎は昔ながらの、というか、最近再び脚光を浴びている解説員によるライブ投影。はじめは従来機のGM-II投影機を用いての星空解説。そして番組の途中で、メガスターIIの灯りがともされます。
 「うわぁ!」っと観客席からあがる声。
 ドーム中にまき散らしたような、星、星、星……
 こーれーはー、びっくりです。投影された星が明るいこともあって、メガスターとは段違いの迫力。メガスターは繊細な星空という感じなのですが、メガスターIIは圧倒的な星空です。

 ここからは双眼鏡を用いて、星団散歩が始まります。プラネタリウムではあり得ない世界です。観客のペースに合わせて空の案内をしてくれるのは生解説のよいところ。私は密かに、天の川の中のS字状暗黒星雲などをチェックしておりました(あった!)。

 メガスターの時は星雲星団が「おー、あるある」という感じだったのですが、メガスターIIは「観察できちゃう」くらいです。50mmの双眼鏡でも限界等級は10等星くらいなので、本当はメガスターの星空でちょうど双眼鏡で見ている程度のはずなのですが、肉眼で見ていてもドーピング状態で6等星以下の星を見ているので、双眼鏡だとさらに暗い星まで見えないと満足感が得られないんでしょうね。

 とりあえず、話のタネだけにでも見ておく価値はあります。ほんとです。

実際に見てみました・お台場編(メガスターII 3号機コスモス)

日本科学未来館 ドームシアター「ガイア」
ドーム内は撮影禁止なので、外観だけ紹介

 2004年9月1日、東京はお台場の日本科学未来館へ行って来ました。この日の本当の目的地は近くの船の科学館だったのですが、地図を見ていたら最寄り駅が一緒だったので、急遽行程に組み入れました。

 日本科学未来館のメガスターIIはcosmosと名付けられた3号機。星の数は1・2号機よりさらに増えた約500万個(12.5等星)。投影星数なら世界一でギネスブック申請中だとか。

 これまでのメガスターI/IIは恒星投影機単体でしたが、3号機は惑星投影機も設けられ、名実共にプラネタリウムとなりました。

 開館時間を知らなかったので、明石と同じかと思って9:30に行ったのですが、入口の前には人っ子一人いません。実は日本科学未来館のオープンは10:00なのでした。メガスターIIの投影はすごい混雑だと聞いていたのですが、夏休み明けの平日ということもあり、開館前に並んでいた(というか入口の前にたむろしていた)のは15名程度。でもみんなシーンと口をきかずに待っているので、なんだか緊張した雰囲気です。

 開門と同時に、ダダダダッーと走り出す……なんてこともなく、券売機でチケットを買って、6階のドームシアターに直行。メガスターIIは通常の入館料のみで見ることが出来るのですが、予め整理券を取っておかないとドームの中に入れないのです。で、てっきり夕方の投影だけなのかと思っていたら1)、いつの間にやら10:30の投影も開設されていて、全く予定外に朝一番からプラネタリウムを見ることになってしまったのでした。

 実は双眼鏡も何も無しで来てしまったのですが、プラネタリウムは本来肉眼で楽しむものです。川崎で一度見ていることもあり、肉眼で見るメガスターIIはどんなものなのか、じっくり堪能することにします。もちろん他の観客は心得たもので、ドーム内で私の隣に陣取った男性も口径40mmはあろうかという双眼鏡を投影前からスクリーンに向けていました。

 グリーンに塗られたメガスターIIコスモスはドームの中央に鎮座し、地平線下の光を遮蔽するすだれ状のシャッターが周りを取り囲んでいます。本体の周囲には6台の惑星投影機。水・金・火・木・土に月・太陽……あれ、一台足りない?2) まぁいいや。

 見た感じの印象ですが、川崎の「フェニックス」よりも星の数は増えたというものの、派手さは控えめで、むしろ落ち着いた印象の星空です。実はメガスターの弱点として膨大な数の星を投影するために星の等級差が分かりにくくなっている部分があったのですが3)、微恒星の明るさを押さえめにしてこの点を改善しているのかもしれません。ド派手さはなくなりましたが、印象としては自然な空に近くなったように思えます。

 番組は川崎の対極をゆくオート投影。ネタばれにならない程度にストーリーをかいつまむと、人はなぜ星空を見上げるのだろうということで、地球上で見た星空から宇宙に飛び出し、やがて銀河の大規模構造まで行ってしまう壮大な筋書きです(かいつまみすぎ)。前半ではぐるっと一周じっくり一回り分の星空を映してくれるので、単に星空だけを味わいに来た人も充分満足できるでしょう。

1) 一般公開当初のメガスターII投影番組は1日2回16:00の回だけでしたが、2004年7月24日より1日2回に変更されました。
2) 日本科学未来館のメガスターIIサイトの説明プレスリリースによると、どうも月投影機がないようです。確定は出来ませんが。
3) 大阪市立科学館INFINIUM L-OSAKAはメガスターと違うアプローチでのリアルさを狙って、投影星数を肉眼で見える星の数に限定した投影機になっています。

川崎市青少年科学館のプラネタリウム観覧券 日本科学未来館の入場券とドームシアター予約券

※ドーム内の写真(川崎市青少年科学館)は許可を得て撮影しています。

(2004.6.2川崎市青少年科学館訪問/2004.9.1日本科学未来館訪問/2004.9.12 福田和昭 記)

塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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