塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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南極観測船「しらせ」(二代)(2)

(2011.9.24訪問/2011.925記)

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ブリッジ見学

 「しらせ」のブリッジはやたらと広いのです。向こうにいる人が小さく見えます。

ブリッジ内部

これがしらせの操舵輪

 操舵輪も、シンプルな金属の輪。南極まではまだ2航海しかしていないのに(2011年9月現在)、すでに黒の塗装が剥げて、下地の色が見えています。過酷に使い込んでいるのでしょう。

艦長席・一等海佐は赤

副長席は水色

 右舷の真っ赤なシートは艦長席。階級によってシートの色が違うらしく、一等海佐は赤。左舷には副長席があり、こちらのシートは水色。見学に来た人たちが交代で座っていました。

コンパス

スクリューの回転数と舵の向きを示す

 左舷にあるコンパスは調整中だったのか、針がありませんでした。基本的にはジャイロコンパスを使っています。

 スクリューの回転数を示すメーターと舵の向きを示すメーターが並んでいます。スクリューが2つ、舵も2つなので、メーターは合計4つ。

ブリッジ中央の時計

本棚

 ブリッジ前方中央には時計があります。SEIKO製。船内の時計は、出港時は日本標準時。その後は15度ごとの時間帯をまたぐたびに時計を調整するそうです。船内の時計をいちいち直すのは大変ではないかと尋ねたら、「一ヶ所あわせれば連動して動くようになっています」とのこと。そりゃそうか。

 左舷後方には本棚がありました。海事六法や世界地図に混じって、藤井旭さんの「四季の星座図鑑」も並んでいました。ちょっと親近感がわきます。

ヒーリング装置操作パネル

減揺タンク

 ヒーリング装置は、燃料を左右のタンクに行き来させて、船体を揺らすものです。船体を揺らして、周囲の氷を割ります。オレンジ色の煙突の後ろ、クリーム色の直方体のブロックが減揺タンクです。

海図台

ラッパ

 GPSの時代でも紙の海図は現役。紙は故障しませんから。そしてラッパが備え付けてあるのは自衛艦ならでは。

 ブリッジ出口の足ふきマット。可愛らしい図案で、踏むのがかわいそう。しっかり踏んで出ましたけれど。

船内をめぐる

 「しらせ」の甲板は、外から見える部分が01甲板で、船尾にはヘリデッキがあります。上に行くに従って、02甲板、03甲板となり、ブリッジがあるのが05甲板。01甲板から05甲板までは、主に海上自衛隊の隊員が使う区画となっていて、公開されたのはブリッジとヘリデッキ、航空機格納庫だけでした。

 01甲板の下が第1甲板で、ここは主に観測隊員が使っています。以下、下に行くに従って、第2、第3と数字が増え、第4甲板が発電機やモーターのある最下層になります。第2甲板は倉庫と燃料タンクと推進機関係施設、第3・第4甲板は燃料タンクと推進機関系のみで、エレベータは第2甲板までしか通じていません。

01甲板

医務室入口

 01甲板にある医務室。公開個所ではなかったので、通路から入口をうかがったのみ。航海中の観測隊員・乗組員の健康管理の拠り所となります。今回の見学コースからは外れていましたが、「しらせ」の船内には歯科治療室もあります。

第一甲板

理容室

理容室風景

 昔懐かし、赤・青・白の三本ラインがクルクル回る理容室のサイン。医師は本職が乗っていますが、理容師は隊員相互に務めるそうです。先代「しらせ」には「タイガーカットハウス」という恐ろしげな看板がかかっていましたが、2代目「しらせ」はあっさり無印です。

観測隊公室

テーブルの落下防止枠

 食堂やミーティングの場所として使われる観測隊公室。船で「公室」というのは共用スペースといった意味です。とにかく揺れる船ということで、テーブルには落下防止枠が取り付けられています。

神棚

祭ってあるのは浅間大社

 観測隊公室の向かいには、なんと神棚。まつられているのは浅間大社。富士山の神様で、二代目南極観測船「ふじ」の時代に、船名の縁でまつったものが引き継がれているそうです。

酒保

船内の階段

 「酒保」は売店のこと。旧軍時代からの名残です。お酒を置いているのか尋ねている見学者もいましたが、残念ながらないそうです。最近は安いお店で色々買い込んでから乗船する人が増えたのだとか。中を覗いたら空っぽの棚があるだけでした。

 見学ルートの階段は地上の建物と同じようなつくりですが、その他ほとんどの船内の階段は、ハシゴのような急傾斜です。こういう階段を見るたびに、この船が客船ではないことを思い出します。

銘板

寄港地の記念プレート

砕氷艦しらせ艦歴

歴代艦長

 01甲板の公室区画と私室区画の間の廊下に、様々な銘板が掲示してありました。

 左上写真、真ん中の楕円のプレートは、2代目「しらせ」を建造したユニバーサル造船舞鶴事業所のもの。船番10004と刻まれています。初代「しらせ」は日本鋼管鶴見製作所で建造されましたが、ユニバーサル造船はその後継会社。もとの日本鋼管は「宗谷」の南極観測船改装工事を請け負った会社で、砕氷船の豊富なノウハウを蓄積しています。

 その左の銀色のプレートは日本船舶海洋工学会が選定する「シップ・オブ・イヤー」の2009年度大賞の記念銘板。審査員の満票による受賞だったとのこと。

 右側の金色のプレートは、日本の南極探検の先駆者、白瀬矗のプロフィールを記したプレート。なお海上自衛隊の艦名は人名を定める規定がなく、「しらせ」の名は南極大陸の「白瀬氷河」にちなんで名付けたものとされています。

 「しらせ」の艦歴を示すプレートは、2度の南極観測が記されただけで、まだ余白たっぷり。そして歴代艦長も2人が記されただけで、こちらも余白たっぷり。これからの南極観測を支える、歴史を作っていく船です。

観測隊員室(机格納時)

観測隊員室(机展開時)

 観測隊員室は2名部屋が基本。奥からベッド、ロッカー、机・椅子、ソファー、洗面台。机は収納式になっています。シンプルなつくり。

観測隊長公室

来賓室

 観測隊長公室は、来客を迎えることを考慮して、応接室付きのつくりになっています。隊員室の約2/3は船の内側にあるので窓がありませんが、隊長公室は窓付き。船の丸窓なのであまり視界は利かないですが、客船なら部屋の値段が変わるところ。

 隊長公室のとなりは来賓室。木目調のつくりになっています。写真左のドアは浴室便所。個室に付いている辺り、さすがに扱いが一段上。

 

第一甲板船尾側のドア

JAREロゴ

 

 第一甲板船尾側のドアには、JAREのロゴがありました。正式には日本南極地域観測隊(Japanese Antarctic Research Expedition)。雪だるまが可愛らしいですが、昭和基地でもつくっているのでしょうか。

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(2011.9.24訪問/2011.925記)

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