塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
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高速道路の標識を訪ねて
神戸淡路鳴門自動車道・淡路島東浦町

(2002年6月2日訪問)

難攻不落(?)の子午線標識

 淡路島の津名郡東浦町。

 神戸淡路鳴門自動車道に建てられた子午線モニュメントがある。1998年の明石海峡大橋開通に合わせて造られたものだ。

 高速道路に建てられているものなので、目立つ大きさなのだが、注意してみていないとあっという間に通り過ぎてしまう。まして私のように自家用車を持たない人間にとっては、高速道路を走る機会などめったにあるものではない。

 以前(2001年)に子午線を自転車で縦断したときも、このモニュメントは寄らずに通り過ぎてしまっていた。

 1/25,000地形図を見ていても、モニュメントの建つ辺りは山腹の尾根上で、前後の高速道路は高架道、下も上も造成崖で、とりつくシマがない。自分で車を運転しながら写真を撮るわけには行かないし、そのために路肩に駐車しようものなら道路交通法違反である。

 一番確実なのは、現地を走る高速バスの車窓から走り抜けざまに眺めること。でも一瞬の出来事なので、写真を撮る余裕があるかどうかは分からない。少しだけ可能性がありそうなのは、標識のある尾根の山頂側に回り込むこと。現地に行けば地図にない細道があるかもしれない。ま、行くだけ行ってみようということにした。

高速バスの車窓から

舞子バス停のエスカレーター バス停からの明石海峡大橋 明石海峡大橋からの天文科学館

舞子バス停のエスカレーター

バス停からの明石海峡大橋

明石海峡大橋からの天文科学館
(この画像で分かったらエライです)

 高速舞子のバス停は、明石海峡大橋の本州側のたもとにある。家から電車で10分もかからない場所で、下が見えないくらいの長い長いエスカレーターをのぼって高速道路のほとりにでる。目線の高さに明石海峡大橋があり、目の前を100km/hで車がすっ飛ばしていくので、なかなか迫力がある。5分おきくらいにバスが停まっては発車していくので、けっこう忙しい。

 大磯港行きのバスを捕まえて、出発進行。発車してすぐに大橋なので、景色は抜群……のはずなのだが、もやがかかっているし、頭の中は子午線のことでいっぱい。バスの席はモニュメントのある右側に確保。地形図のコピーを手元に、まわりの地形を見ながら自分の位置を確認して、あとどのくらいで通過するか予測する。

 あと橋2つ、1つ……次の高架を渡り終えたら子午線だ。

 前方を注視していると、見えた!! モニュメントだ。

 意外に遠くから見通せる位置に建っている。カメラを構えて、写真を1枚、巻き上げて2枚目。で、2枚撮ったところで子午線通過。

 やっぱりあっという間だった。

徒歩でモニュメントを目指す

モニュメント方向遠望 山側からのモニュメント

真ん中の小山の影にモニュメントが

山側からのモニュメント

 バスはやがて大磯港に到着。

 地上からだと、ここから先ほどのモニュメントまで1kmほどの距離だ。

 モニュメントのある尾根は、下からだと木立に埋もれて、見通しがきかない。本州側の高架のたもとは、先ほど通過したとき見たのだが、高さ5mはありそうなコンクリート擁壁で近づくすべもない。多少は可能性があるのは四国側。とりあえず行ける場所まで行ってみることにする。

 畑を耕しているおっちゃんに会釈しながら、のんびり坂道を歩いていく。すれ違ったおばあちゃんには不思議そうな顔をされた。そりゃ、地元の人以外でこんな道を歩く人などいないだろう。道端には近所の人が植えたのか、いろんな花が咲き乱れていて、いかにも梅雨入り前の晩春を彩っている。のどかなものだ。

 坂道が急になったところで、高速の高架下にたどり着く。奥に向かって人一人歩ける道があり、車道と分かれて登り始める。竹藪を漕いで行くと、ちょうど子午線を見下ろす斜面のフェンスの外側に出た。標高は100mあるかどうかの場所で、思っていたより楽だった。

 ここまでして訪ねた子午線モニュメント、実はすでに「法律上」では東経135度の上にない。建設後わずか4年の2002年4月、測量法が改正施行され、日本の経緯度が日本測地系から世界測地系へ移行してしまったからだ。

 おまけに紀淡海峡にある友が島に世界測地系の子午線がかかるようになり、東浦町は「子午線日本最南端の街」の座も明け渡すことになった。モニュメント建設に約1,000万円もかけておいて、なんだかもったいないような話だが、日常生活に支障があるわけではなし、測地学上の遺跡としてそのまま残しておくのもよいのかもしれない。

イングランド歓迎の看板

イングランドの余韻だけ

 岩屋港まで戻るのに乗った路線バス。途中に寄った淡路夢舞台はイングランド国旗がひるがえり、警備のパトカーが何台も停まっていた。そういやワールドカップのイングランドのキャンプ地ってこの辺りだったっけ。誰かいないものかと思ったが、ちょうどこの日は埼玉スタジアムの試合の日でみんな出払っていた。ちゃんと選手を見るのには、子午線標識を訪ねるくらいの準備がいるのかもしれない。

(2002年6月2日訪問)

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