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観測所雑記帳 Apr. & May.2002


測量史跡探訪 2002年4月27日

 GW前半の帰省。
 夜行バスで東京駅に到着し、丸の内線と日比谷線を乗り継いで神谷町駅へ。
 ロシア大使館南の日本経緯度原点へ向かう。3月に訪ねたときは工事中だったのだが、今回はゆっくり見学することが出来た。
 そのまま歩いて虎ノ門のホテルオークラへ。ここは1874(明治4)年に工部省観測課が設置され、天文台が設けられた場所。かつてここが日本の本初子午線だったこともある。もっとも今は何も残っていない。

 首相官邸、国会議事堂の脇を抜け、参議院前の憲政記念館までさらに歩く。ここには日本水準原点がある。子午線とは直接関係ないけど、経緯度原点を訪ねたのだから、こちらも同時に表敬訪問。
 そのあと三宅坂から桜田門、二重橋前、坂下門から桔梗門まで皇居外苑を歩き抜ける。そして大手門から皇居東御苑へ入る。
 お目当ては江戸城天守台。ここは1882(明治15)年に内務省地理局が天文台を置いた場所。ホテルオークラの次に日本の本初子午線となった場所である。測量史跡巡りといいながら、実はほとんど天文旧跡巡り。最初の日本経緯度原点も、関東大震災まで東京天文台が置かれていた場所なのだ。
 そんなこんなで歩き続けること4時間。すっかりヘトヘトになって渋谷へ向かったのだった。

メガスター渋谷公開 2002年4月27日

 東急文化会館8階で公開されているメガスターの投影を見に行く。
 メガスターは大平貴之さん個人で製作されたプラネタリウムで、約150万個の星を投影する、星の数では世界一のプラネタリウム。日本初公開だった2000年末の青山スパイラル公演も見に行ったのだが、今回は本来10m級ドーム用に開発されたメガスターを20mドーム用にチューンアップした特別版ということで、懲りずに足を運んでみた。

 光源をパワーアップ改造した反面、日周運動・緯度変化を犠牲にして、南天部分だけの投影となっていたのだが、なかなかどうして。
 青山公開の時は、シリウスもベテルギウスもリゲルも黄色い電球色で、星空の再現という点ではちょっと雰囲気的な物足りなさを感じたのだけど、光源がハイパワーになって色温度が上がったせいか、星の色が白色に近くなって、違和感が大幅に減少。しかもブライトスター投影機が追加され、シリウス・アンタレス・αケンタウリが色付き瞬き付きになって、臨場感もアップ。自然に近い雰囲気の星空を味わうことが出来た。

 パッと見のインパクトでは星の光量に勝る五藤光学のスーパーヘリオスの方が上なのだが、天の川の表現や星の階調など星空の表現では今回のメガスターの方が上。ま、どちらが優れているというわけではなく、いろんな特徴を持った投影機が世に出てくることは楽しいことだと思う。
 今回は東京のFM局、J-WAVEのイベントということで、音楽を聴きながら動かない星空を眺め続けるというシンプルな番組構成だったのだが、自転車旅行の最中、ゴロンと寝ころんで星空を眺め続けたことを思い出して、こういうプラネタリウムの使い方も悪くないな、と思った。
 2回続けて投影を見て、2回目はしっかり昼寝に使わせてもらった。ちょうど製作者の大平さんが来ていて、彼もお客さんに紛れて投影を見ておられた。これからのメガスターの進化が楽しみ。

桜が丘星のつどい 2002年4月27日

 昨年3月に閉館した五島プラネタリウム。その後、投影機や館の資料は渋谷区に寄贈され、渋谷区桜が丘の「ケアコミュニティ桜が丘」で、「渋谷区五島プラネタリウム天文資料」という形で活用されている。ケアコミュニティ桜が丘は小学校の廃校を利用した施設で、建物を図書館や公民館的に利用しているもの。ツアイスIV型投影機は分解・梱包されたままで見ることは出来ないのだが……展示するにしても小学校の教室では窮屈すぎる……仮設の展示室で天体写真や当時の五島プラネタリウムの様子の写真を見ることが出来るほか、何より毎月第4土曜日に「星のつどい」という催しが開かれていて、元五プラ解説員の村松修さんの星のお話と、天体観望会が行われている。

 ほんとなら村松さんに先にご挨拶するべき所なのだが、道を間違えたりなんだりで開始直前に会場にたどり着き、とりあえずおとなしく席に座っていたら、ついつい目が合ってしまい「あれどうしてこんな所に!?」。
 「田舎が茨城なんで、連休で帰省する途中なんです」と、この日何度も説明するはめになりましたとさ。

 この日の話題は「よいの明星・金星の話」で、金星の高温の原因と、2004年に起こる日面通過のお話。実はこのホームページの中でも何ヶ所か金星日面通過に触れているのだが、実はいい加減な理解のまま書いていたことがよく分かりました、はい。村松さんの語り口は相変わらずの絶好調。一般向けといいながら、結構な星好き(のつもり)の自分にも聞き応え十分のお話で、しっかり勉強してしまった。ホームページは30日に神戸に戻って早速加筆修正しました。

 お話の後は紀伊国屋書店が編集した野尻抱影さんのビデオ試写会。なんでも五プラ天文資料で資料協力をされたそうで、完成前のサンプル版が届けられたとのこと。天文普及や星の和名採集への情熱に心打たれる一方、抱影さんが天文に興味を持つきっかけとなり、3度裏切られたLeonidsーしし座流星群ーの2001年大出現のシーンでは、ちょっとした優越感……というより「あの野尻先生も見られなかったものを、私たちは見てしまったのだ」という気分で、なんだか照れくさいやら気恥ずかしいやら。

 最後は屋上での観望会。週間予報では週末は天気が崩れるはずだったのだが……見事に晴れ。桜ヶ丘の観望会は昨年以来、一度しか曇っていないのだとか。今年の阪神よりはるかに勝率がよいではないか。
 タカハシの225mmシュミカセ(渋い!!)とツアイスの80mmスポッティングスコープ(うらやましい)をメインに、双眼鏡も交えて西空に並んだ惑星を探訪。
 参加者の方が子どものための踏み台を自作して寄贈したり、6月11日の日食用に白黒フィルムの黒焼きを準備しておられたり、みんなで創っている会の雰囲気が伝わってきて、とても楽しい一時だった。

縄文人の見た星空 2002年5月3日

 GW後半初日、明石市立天文科学館へ行く。
 13:10の投影を見ようと思ったのだが、解説が4月に聞いたばかりの高山さんだったので、次の回の宇都さんの投影を見ることにした。

 縄文時代の星空ということで、5000年前にタイムスリップ……ということで歳差軸をグルグル回しての投影。年に何回もここを動かす番組があるわけではないので、空の変化も投影機の回転の様子も見ていて面白い(ちょっとマニアックかも)。
 およそりゅう座のツバーンが北極星になっている時期なのだが、北天・南天が入れ替わるわけではないにしろ、微妙に空の見え方が変わってくるため、いつものクセで北斗七星や今の北極星から北の方角を割り出そうとすると、ついつい混乱してしまう。やはり自分は21世紀の空が身に染みついた人間なのだと気付いて、なんだかおかしかった。圧巻は地上に顔を出す南十字星。明石の空でこれが見えるなんて、理屈は分かっていても、やっぱり不思議な感じがする。

 うるさいことを言えば、アルクトゥルスなど固有運動の早い星は5000年もすれば動いてしまうはずなのだけど、これを再現するのはデジスターでもなければ無理なお話。そんなことを考えていたら、もう一度歳差軸が回って現代に引き戻され、すぐに夜明けが来てしまった。めずらしく投影機の西側の席に座っていたので、対日照が後の空に沈むのをしばらく見ていた。現物の対日照って、実は未だに見たことがない。プラネタリウムの中でしか見たことのない天文現象って、案外まだまだ多いのかも知れない。

晴れない 2002年5月8日

 GW後半以降、昼間は晴れていても夜になっては雲が広がる繰り返して、一日も星を見ていない。
 池谷・張彗星は一ヶ月以上ご無沙汰だし、惑星集合も4月末に渋谷で見たのと、5月の1日か2日に仕事の帰りにビルの谷間からかいま見ただけ。こんなことなら、仕事の帰りに寄り道してでも目に納めておくのだった!!
 今日も会議(+飲み会)から帰って、空を見上げるが、雲だらけ。雲の切れ間が見えたので、日付が変わるまで待っていたが、やっぱり星は見えてくれない。最近ふぬけているので、まじめに仕事せよとのお達しかも知れない。

つかの間の晴れ間 2002年5月11日

 夜中にメールを書いていて、息抜きに窓の外を見上げたら、ひさびさに星が見えた。東の空に赤い星が見えて、
 「アークチュルス? なわけないよな、こんな時間に。え、もしかしてアンタレス!?」
 あわてて星座早見版を回すと、まさしくアンタレスだった。季節は回る、星空も回る。

 双眼鏡をひっさげて、久しぶりに池谷・張彗星を見る。ステラナビゲーターで“りゅうの頭とヘルクレスの股の間”と大まかな位置だけ確認して、星図も持たずに外に出たのだが、双眼鏡を向けたら一発で確認できた。光度は5〜6等程度だが、夜半の暗い空で、ほとんど天頂に見えているので、3月下旬に西空に見えていた頃よりずっとはっきり見える感じがした。
 久々に透明度のよい空で、これまた久しぶりに望遠鏡を担ぎ出して空を眺めはじめた。光害だらけの家の近所でどれだけメシエ天体が見えるかという、アホなことを始めてしまったので、こちらをご参照下さいませ。
 午前3時くらいまで見ていたのだが、いつの間にか薄雲が広がってきたので、撤収した。

5惑星集合 2002年5月12日

 夕方、天文科学館に写真を届けに行く。「最近晴れませんねぇ」「昨日も観望会の準備をしていたんですけど、結局曇っちゃったんですよ」「今日も何だか薄雲が広がってますねぇ」なんて会話を交わしていたのだが、日が沈む頃になると、スゥーッと雲が消えて、見事に晴れてしまった。
 家に帰って5惑星の集合を見るべく、塩屋漁港に出かける。北西に近い空が開けているのは、家の近所ではここだけなのだ。
 日没から時間が経つにつれ、金星・木星・火星・土星と見える星が増えてくる。水星だけは双眼鏡を使わないと見えなかったが、それでも大満足。水星なんて何年ぶりに見ただろう。ジェームス山に水星が沈むまで、防波堤の上でずっと西空を眺めていた。

5惑星集合 Part2 2002年5月13日

 19日のイベントの打ち合わせのため、夕方長田区に向かう。
 薄雲が広がっていたが、日が暮れるにつれ、金星と木星はしっかり見えてきた。双眼鏡では火星と木星も確認。水星は既に高取山の向こうに沈んでいて見えなかった。友人にも星の説明をしながら、双眼鏡を貸して見てもらったのだが、果たして面白いと思ってくれたかどうか。

池谷・張彗星ふたたび 2002年5月18日

 ほぼ一週間曇りと雨の日が続き、土曜日になってになって久々に昼間、晴れ間がのぞいた。この分なら夜も期待できる……と思ったが、結局すっきりは晴れない。それでも雲がだいぶ少なくなったので、日付が変わった頃、池谷・張彗星を見ようと、7×50双眼鏡とBORG10cm屈折を持って外に出る。
 3等星がやっと見える程度の空で、彗星も双眼鏡では確認できたが、望遠鏡ではファインダーでの導入に手間取っている間に曇ってしまった。アストロの正立ファインダーは、導入には確かに便利なのだが、ほぼ同スペックの双眼鏡と比べるとコントラストが悪い。双眼鏡では簡単に見つかる彗星も、ファインダーではバックグラウンドの空の明るさに埋もれ、なかなか判別できないのだ。
 天頂付近の彗星を導入するため、相当無理な姿勢をしてがんばったのだけど……そのうち曇ってしまった。残念。

池谷・張彗星たびたび 2002年5月19日

 朝は土砂降りだったのに、午後から晴れ。上弦の月のある日だったので、家に帰ってすぐ寝て、夜半に起きて星見に備える。なにもそこまで……と思わないでもないが、次の日が月曜なので、ちょっとでも寝ておかないと大変。
 といっても昼間に「神戸まつり」に出ていたので、どのみち夕方眠くて仕方がなかった。
 日付が変わって月が沈むと、4等星が見えるくらいの、この辺りにしては上々の空となった。午前1時頃、望遠鏡を担いで外に出る。最初に池谷・張彗星を確認。光度はついに6等を切ったかどうかというところ。だんだん遠ざかっていくのが分かる。

テレビュージャパン 2002年5月25日

 仕事で上京したついでに、恵比寿のテレビュージャパンに寄ってみた。
 マンションの11階の一室がショールームになっていて、ン十万円の機材が自由にさわれるようになっている。ベランダではコロラドフィルターを付けた望遠鏡が太陽を向いているのはさすがというべきか。

 さっそく太陽のHα像を見たが、いやはや、これが写真で見たまんま。真っ赤っかなので白黒写真で見るよりはコントラストがちょっと低いかなと思ったが、生の色だし、すぐ慣れる。ケバケバのプロミネンスにうねるダークフィラメント。一面の粒状班(なのか?)。これが毎日見られるのなら、ン十万円かけても惜しくない気がする(でもそんな金はない)。

 チェックしたかったF2経緯台には10cm屈折と7cm屈折が載せられていた。「あのスムーズさは尋常でない」と聞いていたのだが、う〜ん、どうだろう。たしかにスムーズには違いないが、びっくりするほどのものでもないような気がする。木製三脚との組み合わせがよいせいか、わざと揺らしてもすぐに振動が収まるのには感心した。あとは実際に星空の元で使ってみないと、判断がつかなさそう。

 ナグラーのアイピースもいろいろ覗いたが、アイポイントが長いものでも眼鏡をかけたままではちょっと厳しかった。昼間なので単純に比較できないが、瞳位置もちょっと厳しいような気がする。覗きやすさならペンタックスXLのが上かなぁ。時間がなかったのでラジアンを試さなかったのが残念。これも星を見ないと何とも言えない。お店の方が他のお客さんとしゃべりっぱなしで、ほとんど話できなかったのも、ちょっともったいなかった。まぁ時間なかったからしゃあないか。

桜が丘ふたたび 2002年5月25日

 会議が終わって、交流会の一次会の後、ちょっと抜け出して「渋谷区五島プラネタリウム天文資料」の「桜が丘星のつどい」に行った。渋谷に着くのが20:30くらいだったので、もしかしたら撤収してるかと思ったのだけど、ちょうど屋上で観望会をやっている最中だった。
 前回顔見知りになった方々に挨拶したら、びっくりされた(そりゃそうだろう)。
 天文科学館で「星のつどい」を紹介されたという方もいらして、お互い「どうしてこんなところで顔を合わせているのでしょう?」状態。なんでも千葉の方で、明石には京都に出かけたついでに来られたのだとか。京都から明石までは新快速で1時間以上かかるから、「ついで」という距離ではないような気がするのだけど……俺もあまり人のことは言えないかも。

 村松さんに勧められて、ツアイスのフィールドスコープの月に見惚れていたら、うしろでお子さんが「ボクも見たい〜」と親御さんにダダをこねているのが聞こえて、あわててお譲りした。……次の人がしびれを切らすほど覗き続けていたようで、なんともお恥ずかしい限り。でもきれいだったなぁ。
 この日もわんさか、30人弱の参加者がおられただろうか。
 みんなで楽しく星を見る機会があるのは、やっぱり素晴らしいことだと思う。
 俺も少しは勉強しないと。

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