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観測所雑記帳 Nov. 2003


燃える太陽は雲の向こうに 2003年11月1日

 5時半過ぎに家を出たら、空にはシリウスと木星がひときわ輝いていた。今シーズンの初シリウスである。新神戸から始発の「のぞみ」に飛び乗って東京へ向かう。6時半というのに、すでに自由席は満杯。新大阪で席にあり着けたが、どうなることかと思った。

 目が覚めたら、なんと東京の空はベタ曇り。道路は濡れそぼって、なんと雨まで降っていたらしい。晴れていたら、渋谷は桜が丘・五島プラネ天文資料で、Hアルファの太陽像をみようと思っていたのだが、計画はもろくも崩れ去った。とはいっても、久々に村松さんにお会いでき、こちらの天体写真教室の生徒さんのすばらしい黒点写真も見せて頂き、開催中の天体写真展も見ることができ、なんだかんだと楽しい桜が丘だった。

 それにしても、これだけ太陽面が賑やかなとき。Hアルファの太陽、見たかったなぁ。

肉眼黒点を肉眼で見る 2003年11月2日

 肉眼黒点を見るためだけに、出張中も「日食グラス」を持参していた。
 宇都宮のシンポジウム会場で、朝、窓越しに日食グラスを手に太陽を見る。ずいぶん隅の方に寄ってしまったが、まだまだ2つ、黒点が見えている。

 この日の夕方、川崎まで戻ったが、この時期には珍しく霞のかかった空模様(あの辺はいつもこんなんなんやろうか)。ちょうど折良く夕日が減光されて、これは生で黒点が見えるかもしれないと、真っ赤に染まった夕日に何度かチャレンジした。なかなか分からなかったが、一度だけ、一つだけ、黒点が見えた。

 古代の人が見た「やたがらす」もきっとこんなものだったのだろう。

「伊能忠敬と日本図」展 2003年11月3日

 東京国立博物館で開催されている「伊能忠敬と日本図」展を見に行った。
 もともと学生時代は地理を専攻していたこともあり、興味津々。今回の企画展は、9月27・28日の「森本おじさんのサイエンスツアー」の参加者から教えて頂いたもの。もともと伊能忠敬の地図づくりは、子午線一度の長さを測りたい、という動機がきっかけで、地理より天文学の興味に根ざしたもの。たまたま井上ひさしの「四千万歩の男」を読んだり、身の回りが伊能忠敬づいていて、ちょうど良いタイミングの企画展だった。

 展示品だが、これはもう感涙もの。現存している伊能図ではもっとも美品と言われている東京国立博物館所蔵の伊能中図全8枚、これは教科書などでもよく取り上げられるおなじみのもの。3枚組の伊能小図は近年発見されたもので今回初公開。九州部分の伊能大図は途中途中の村落や城下町の様子も描かれていて、見ているだけで楽しい。そしてアメリカで発見された伊能大図をデジタル化・彩色復元出力したものを関東から関西まで60面、床に並べて展示したものもあった。伊能大図はこれまで1/4ほどしか残っていないとされていただけに、これまた貴重な機会である。

 本当は忠敬の墓や深川にある忠敬の居宅跡も見学しようと思っていたのだが、天気も雨交じりだったのと、東京国立博物館だけで半日つぶしてしまったのとで、こちらは次回にお預けとなった。

 それにしても最初の一時間で、圧倒されて疲れて一回休憩して、その後も休み休み、見ることになった。それだけ質も量も、見事な特別展だった。

 会場の平成館一階には子ども向けに当時の測量器具の復元品を展示してあったが、実際にさわることができるようになっていて、こちらも子ども以上にさわって遊んでしまった。

しし座流星群2003 2003年11月14日

 基本的には「当たりくじなし」の今年のしし群。
 それでも「小あたり」があるかもしれない、という予報が出ていて、その最初のピークが13/14日。天気も良かったので、2時から30分ほど、部屋の窓から空を眺めていた。
 結果は、散在も群流星も、一つも見えなかった。出不精して部屋の窓からだけだったのかあかんかったかな。

 電波でも、昨年のような派手なエコーはなし。昨年は数十秒も電波の反射が続くロングエコーが多かったのだが、やはり小さなダストの暗い流星が主体なのだろう。

秋の夜長の観望会 2003年11月23日

 秋の夜長というよりは、ほとんど冬のような寒さになってしまった。
 ひさしぶりに天文科学館の観望会に出かけた。

 これまた久しぶりに火星を見たが、ずいぶん欠けてしまった。それでも意外に大きく見えて、模様まで見えてびっくり。こんなに時間が過ぎても、これだけ見えるとは、やっぱり今年は大接近だったんだなぁと、しみじみ実感。

 観望会のテーマは二重星団だったのだが、空がきれいな晩の二重星団は格別。小さな望遠鏡や双眼鏡でも楽しめる天体だが、ほんと、贅沢なくらい星がたくさんだった。

 4F日時計広場は、人数が程良いくらいだったので、途中からはリクエストに応じて星を眺めていた。アンドロメダ座ガンマ星が好評だったようなので、次回は二重星ツアーでもやろうかしらん。

南極皆既日食 2003年11月24日

 休日というのに早起きして、ネット中継に備える。
 残念ながら、LIVE!ECLIPSEのサイトは曇ってしまった。それでも皆既の最中、空が真っ暗になる様子をリアルタイムで見ることが出来て、それはそれで面白かった。あとから現地レポートが入ったのだが、現地では雲を通してコロナを見ることが出来たのだそうだ。せっかくあそこまで行ったのだから、それくらい見えないとね。よかったよかった。

 続いてNHKの中継。ジェット機と南極本土のノボラザレフスカヤ基地からの中継。皆既の瞬間はジェット機から。雪原の地平線上に見えるコロナが見たかったのに、そりゃないぜ。
 と、ちょっと腹を立てたりしたのだが、晴れたら晴れたで少しでもいい絵が見たいという欲望と煩悩に反省である。曇っていたなら、雲間から一瞬でも見えてくれ、と思うに違いないのだ。

 録画放送で、南極地上からのコロナとダイヤモンドリングの様子が映し出された。黄金のコロナとダイヤモンドリング!! これは想像以上の感動もの。すばらしかった。

 そういえば、日食と南天の星空見たさに南半球に出かけてから、もうすぐ一年になる。

天体望遠鏡を使って星を見よう 2003年11月29日

 「明石おやこ劇場」の依頼で、天体観望会をすることになった。
 といっても、依頼が行ったのは天文科学館星の友の会の副会長の四元さん。私のところにはその四元さんからお手伝いの依頼が来たという次第。実はこの一週間、仕事が忙しくてまともに打ち合わせも出来ず、観望会に来る人がどんな人たちで、どれくらいの人数なのかも、四元さんまかせだった。

 しかも、朝から雨。雨天曇天メニューで空き缶星座早見版の工作教室も用意してあったので、どのみち雨天決行なのだが、それにしても屋内での話のネタが必要だ。

 さすが「おやこ劇場」さんというべきか、会場は明石市立図書館の2階の一室で、冒頭にエチオピア王家物語の紙芝居!?……というのか、ブラックライトで切り紙のアンドロメダや化けくじらやペルセウスが浮かび上がって活躍する仕掛けの朗読劇!?を上演したのだが、それがきれいなものですっかり感心してしまった。あれはプラネタリウムでやってもいいと思う。

 40人弱の参加者のみなさんに、火星を見たことがある人、と尋ねたら、なんと半分くらいの方が手を挙げていた。恐るべし火星大接近効果。ちょうど南極皆既日食の直後だったので、昨年オーストラリアで撮影した皆既食のビデオを四元さんが用意していたのだが、これが大受け。自分は町中で星を見るための話をさせていただいたのだが、参加者のみなさんが暖かい会場の雰囲気をつくってくださっていたので、楽しい会になったと思う。

 ちょっと残念なお天気だったのだが、ぜひぜひ晴れた空の下で、みなさんと星空を眺めたいものだ。

メガスターI関西初公開 2003年11月30日

 大阪阿部野橋はHOOPの前庭で、「ファンタジック スタードーム」と題したメガスターの一般公開が行われている。メガスターを見るのは3度目になるのだけど、こりもせずに出かけてきた。
 メガスターIは2000年12月の東京・青山スパイラルでの初公開時と、2002年5月の渋谷・東急文化会館でのJ-WAVEのイベントと、よくもまぁ関東まで出かけたものだと思うのだが、上手い具合に帰省のタイミングと重なって、足を運んでいた。

 そのメガスターIの星空。
 すごいといえばすごいんだけど、「おおっ」という声を挙げてしまうような派手さでなく、ごくごく自然な雰囲気の星空を追求して再現するとこんなんなりました、という感じ。気のせいか、3度目の今回が一番きれいに見えた気がする。双眼鏡を持ち込んでちょっとだけ使ってみたけれど、プレアデス星団なんか良くできているのだけど、かえって「良くできた作り物」っぽい感じがしてしまって、すぐに仕舞って肉眼での眺めを楽しむことにした。

 番組は4分間。専門的な解説はいっさいなしで、星空とオーロラの雰囲気を楽しむもの。これはこれで、プラネタリウムの使い方としてはアリかもしれない。個人的には教育的……と書くと堅苦しいけど、星や天文の知識も吸収できるようなソフトを見てみたいところ。

 星空は北極点固定。北極星が頭の真上で、北半球の星だけ投影されている状態。現実離れしているという点では、エンターティメントそのもの。めったに見られるものではないから、珍しいには違いない。

 オーロラの投影は見事なもので、今まで見た本物以外のオーロラの映像の中では一番きれいなものだった。ドームの隅に置いたプロジェクターからミラーで反射させてドームに投影していたが、きちんとスクリーンの湾曲を計算してCGつくってるんやろな。すごい。

 メガスターIは投影機自体もなかなか格好が良く、小さな8mドームの中央で、LEDライトを従えてクルクル回ったり光を放ったりする姿は、りりしいものがある。
 投影終了後、係のお姉さんに「投影機の写真を撮らせてもらってもいいですか?」と尋ねたら、「え〜っと、大平さんの許可がいるんです」とのこと(一般的に他館でもドーム内は撮影禁止のことが多い)。基本的には投影された星空での勝負やもんね。

 で、会場風景だけでも、と思って、ドームの設置してあるHOOP前広場の写真を撮っていたら、警備員が2人飛んできた。何事かと思ったら、カメラがあかんという話。「ドームを外から撮るのもあかんのですか?」と訊ねたら、そもそもこのHOOP自体が、建物も前庭も含めて、撮影もスケッチもNGなのだという。「撮るんでしたら6階の事務室で許可もらって来てください」とのこと。

 博物館や科学館では展示物の保護などの目的で写真撮影に規制がかかっていることも多く、反対に最近の館では積極的に展示に触れてもらう観点からか写真撮影がかなりオープンになっている部分もある。そういった施設では、その場の雰囲気で、写真OKそうだな・ダメっぽいな・確認した方がいいなと、分かるものだが、商業施設というのは厳しいものだ。ちょっとびっくりしてしまった。

「星になったチロ」 2003年11月30日

 メガスターを見たその足で、豊中市立青年の家いぶきプラネタリウム館を訪問。
 プラネタリウムのハシゴというのはなかなか難しくて、だいたい上映が一日最大でも5回くらいがせいぜいで、館と館との移動時間を考えると、朝一の投影から出かけても3ヶ所も見たら上出来ではないかと思う。

 さてその豊中市立青年の家。関西には珍しい五藤光学のGMII-AT型の投影機。ずんぐりむっくりのモリソンタイプでいかにも頑丈そう。

 そして投影されている番組は「星になったチロ」。

 小学生の頃、星好きになった頃に出版された本で、私が読んだのは中学生になってからだったろうか。ちょうど一学年下の連中の読書感想文の課題図書になっていたこともあって、この本の感想文だったらいくらでも書けるのにと、ちょっと悔しいような想いをした記憶がある(読書感想文は大の苦手だった)。

 それこそ何度繰り返して読んだか分からない本で、夏休みの家族旅行の行き先に「星空への招待」会場だった浄土平を入れてもらったこともあった。

 番組自体は、オーソドックスな電子紙芝居的な形式で、これは工夫の余地があるんじゃないかと思うのだが、メーカーが各館共通仕様でつくるから仕方ないのかな。イラストよりも当時の写真をたくさん使った方が良かったと思ったのだが、演出の技法の問題だし、受け止め方は人それぞれだろう。
 なにより原作に思い入れがあるだけに、一つ一つのシーンを思い出しながら、番組後半は不覚にも目に涙をいっぱい浮かべながら見るはめになってしまった。あぶなかったなぁ。この歳でプラネタリウムで泣いたりしたらしゃれにならない。

 自分の星好きは、ちょうどチロが亡くなった後からスタートしたので、チロとの直接の面識もなく、チロ望遠鏡のキャラバンも、雑誌やTVのニュースで知っているだけだ。それでも藤井旭さんの様々な入門書で育った世代だけに、その後ポプラ社から刊行されたシリーズは全部持っている。さすがに高校生にもなってから買いに行くのは恥ずかしかったものだが、いまだに部屋の本棚に並んでいたりする。

 藤井旭さんのサイン本が抽選で当たるというので、これはぜひぜひと申込用紙を書いてきたのだが、窓口の人に渡したら、笑いながら「宝くじにあたるようなものですよ」とのこと。なんとか当たらないかなぁ。

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