![]() 「天体望遠鏡」って、難しい機械だと思っておられる方、多いと思います。実は私もそうでした。 天文雑誌に載ってる望遠鏡は、ほとんどが何万円から何十万、何百万円もするものばかり。たまに「つくった」「改造した」なんて記事が載っていますけど、ちょっと専門的で難しそうです。 ところが最近、あちこちに、自作の望遠鏡を紹介しているページが出来てきました。材料は木材だったり塩ビ管だったり、ホームセンターで揃うようなものばかり。レンズや反射鏡さえ調達すれば、意外に簡単に、天体望遠鏡がつくれそうなのです。 「いっちょやってみるか」ということで、天体望遠鏡、つくり始めてみました。いつになったら出来るやら、という感じですが、まぁしばらくお付き合いください。 ※ちなみに、右側が完成した鏡筒です。架台はまだつくっていないので、BORGの鏡筒バンドを介してテレビューF2経緯台に載せています。何となく望遠鏡っぽく見えますね。これからいよいよ架台をつくりますが、う〜ん、年度末に入ってしまって工作が止まっています。(2003.3.26記) 参考:自作の望遠鏡を紹介しているページ ・星を見る道具の工房(yamacaさん) ※ここから下の記事は、日付の古い順から並んでいます。 |
![]() ![]() おっと、いきなり材料がそろい始めてしまいました。 左側の写真が、まだ袋に入ったままですが、望遠鏡のレンズです。「対物レンズ」といって、星の光を集めるためのレンズです。大きい望遠鏡ではレンズの代わりに反射鏡を使います。 このレンズや反射鏡が大きいほど、より多くの星の光を集めることが出来るので、より暗い星まで見ることが出来ます。また、これが大きいほど、より細かい星々の様子を見ることが出来ます。レンズや反射鏡の大きさを「口径」というのですが、要は天体望遠鏡の性能は口径の大きさで決まるのです。 そんなわけで、国立天文台のすばる望遠鏡は口径8.2mもある反射鏡を使っているのですが、それと同じものをつくると400億円くらいかかるので、ここは手頃に、口径65mmのレンズを買ってきました。 東京は新宿の「コプティック星座館」というお店で売っていたもので、「ミザール」という老舗メーカーのジャンク品で放出されたものです。なんと3,000円で手に入りました。 右側の写真は、塩ビ管です。水道の排水管に使うものですが、ホームセンターで売っています。私の近所のホームセンターでは2m単位でしか売っていなかったので、こんな長いものを部屋の中に置くはめになりました。これを担いで電車に乗るのは、なかなか勇気がいります。 |
さすがに2mもある塩ビ管を部屋に転がしておくのも邪魔なので、切断を始めました。携帯電話と並べてあるのは、大きさの比較のつもり。これがメインの鏡筒部になります。 ノコギリでギコギコ切るだけなのですが、家に帰ってからの作業なので、あんまりはかどりません。 下の写真は切った鏡筒のヤスリがけ。平らなテーブルに広げた紙ヤスリの上で、塩ビ管をぐりぐり回して、切断面を垂直に削りだします。長さはけっこう適当に切っていますが、垂直はそれなりに出しています。 塩ビ管の切断については、木村裕之さんのページの「自作のツボ」のコーナーに詳しい解説があります。 |
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今回つくっている望遠鏡の設計図です。念のために描いてみたものです。 対物レンズの口径と焦点距離から、必要な塩ビ管の長さと太さを割り出します。分かりやすいように原寸大で描いたので、計算というより、現物に合わせて紙の上で描いたり消したりの繰り返し。塩ビ管も太さや部品の大きさが決まっているので、設計というよりは、必要な材料の確認みたいなものです。 |
対物レンズを固定する部品をつくりました。 といっても、鏡筒と同じ太さの塩ビ管を薄く輪切りにし、切り欠けを入れただけです。上の写真、左からレンズ押さえの部品、中央が対物レンズ、右側がレンズ受けの部品です。 これを鏡筒の先端部にはめ込むと、下の写真のようになります。レンズが透明なので、ちょっと分かりにくいかもしれませんが……塩ビ管にはめ込んだ2つのパーツの間に、対物レンズが挟み込まれて固定されます。 ちなみにこれは、仮組みです。このままでは対物レンズの径が塩ビ管より細くてガタガタするので、あとでレンズの周りに紙を巻いて太さを合わせます。またレンズを固定するパーツの内側は、迷光防止のために後ほど黒く塗装します。 |
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こんどは接眼側、ドローチューブを受ける部分をつくります。 右上の写真、左の2つは鏡筒と同じ太さのVU65塩ビ管を輪切りにして、切り欠けを入れたものです。一番右は、これより一回り細いVU50塩ビ管。内径が55mmありますので、2インチ(51.2mm)対応のドローチューブを差し込むことが出来ます。 これを順番に組み合わせて、鏡筒に差し込んだのが右下の写真。仮組み状態ですが、だいたいこんな感じになります。一番内側のパイプとの間だけ、0.5mmほど隙間が出来るので、ここはあとで紙を巻いてピッタリはまるようにします。 ちなみにこのVU50の塩ビ管、知り合いの板金屋に転がっていたのをタダでもらってきたものです。写真に撮ったら、中がホコリだらけ…… |
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一番最初に切断したメインの鏡筒の内側に、迷光防止のための植毛紙を貼ります。植毛紙というのは、紙というより、裏面がシールになったフェルトのようなものです。 鏡筒内部は、余計な光を反射しないように、艶消し黒で塗装したり、黒のラシャ紙を入れたり、いろんな工夫をするようです。植毛紙を貼ると鏡筒内はほとんど真っ暗になるのですが、入手しやすいとは言い難いのが難点。望遠鏡ショップなどでは扱っていることも多いのですが、近所のホームセンターでは見かけません。 右上の写真は筒の中にペタペタ貼っている所ですが、このあと2回失敗して、3回目にやっときれいに仕上がりました。 続いて、前日作りかけていたドローチューブ受けの続き。一番内側のパイプの周囲に隙間があったので、紙を巻いてこれを埋めます(右中写真)。ピッタリしたところで押し込んで、木ねじで固定(右下写真)。これもあとから、内側に植毛紙を貼って完成です。 |
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鏡筒内部に入れる遮光環をつくります。材料は黒のラシャ紙と、余った植毛し、塩ビ管を薄く輪切りにしたものです。右上の写真が、作り方を連続写真風(?)に撮ったもの。 ……説明するほどのものでもないので、真ん中にいきなり完成写真を載せます。これを4つつくって、主鏡筒の中に押し込みます。 4つ押し込んだのが右下の写真。なんか暗くて分かりにくいですが、筒の中に遮光環が……やっぱりよく見えませんね(^_^; この遮光環は、押し込んであるだけで接着はしていません。あとで分解も出来るようにしてあります……というのはうそで、押し込んだだけでも簡単には外れそうにないので、手を抜いた次第です。 |
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レンズをはめ込んで、反対側にドローチューブ受けをはめ込んで、望遠鏡本体の完成です。ほとんど塩ビ管そのままで、とても天体望遠鏡には見えません(右上写真)。 光軸は……接眼側から対物レンズを覗いたら、ちゃんと自分の目が反射して見えていました。ので、たぶん大丈夫でしょう。対物レンズを固定している塩ビの部品は両面テープで留めてあるだけなので、あとで再調整することも可能です。 さらに、別につくっておいたフードもつけてみました。本体鏡筒より一回り太い、VU75塩ビ管を切ってつくったもの(これも板金屋からもらってきた)。なんか、少しは望遠鏡らしくなってきたような気がします(右下写真)。鏡筒部分は、これでほぼ完成です。 |
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問題発生! 完成した鏡筒を、自宅にあった架台に載せて、テストしました。薄雲がかかった空なので、コントラストは今ひとつ。東の空に昇ったばかりのベガを見ましたが、星像はまずまず。色収差はほとんど感じません。ベガくらいの星だと、周りに青いニジミが見えるものなのですが、すっきり白い点像に見えます。 ところが!! どこでどう間違ったのか、直視は問題ないのですが、天頂プリズムをつけるとピントが出ないのです。どうやら鏡筒が少しだけ、長すぎたみたいですね。近いところは4m先までピントが合うのですが、そんなところが見えても仕方ありません。 これは、鏡筒を切断しなければいけません。ま、そんなこともあるさ。 |
![]() そんなわけで、せっかく製作した鏡筒ですが、ばっさり切ることになりました。 塩ビ管なので、こんなひ弱なノコギリでも楽勝です。金属鏡筒では、こうはいきません。 約3cm、切断しました。設計時はmm単位までこだわったのに、ここまで来て現物合わせです。ははは。 いったん取り外したドローチューブ受けを付け直し、天頂プリズムをつけた状態でピントが出ることを、遠くの景色を見て確認しました。 実際の空でテスト、と思ったら、夕方晴れていた空は、いつのまにやら曇り空。残念。 |
切断した鏡筒の再テスト。 雲が流れていましたが、月を見てみました。 いやぁ、予想以上にいい感じに見えます。月の縁にほとんど色が付きません。5.2mmの接眼レンズをつけて、154倍まで上げてみましたが、これでようやく月の縁に薄青いニジミが確認できる程度。ふだん使っているBORG10cmアクロマートに比べると、格段に少ないものです。普通に見ている分にはほとんど気にならない程度でしょう。 こんな望遠鏡がそうですね、総工費4,000円程度、まぁ家にあった材料も使ったので、その分もあわせると5,000円くらいでしょうか。そんな程度でできてしまうのですから、やめられません。 さて、いよいよ次は架台の製作です。 |