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自作77mm F6.2 屈折


その後の改造記>
 

■制作のきっかけ

 コプティック星座館に置いてあった中古の鏡筒の上に何気なく置かれていたレンズを発見。「これいくらですか?」と聞いたら、「傷が入ってるんで売り物にはなりませんねぇ」とのこと。結局、他の買い物をしたついでにおまけで頂戴してしまいました。
 「まぁ、よく見えますよ」というお話で、これを活かさないわけにいかないと言うわけで、制作に取り組みました。
 

■スペックとシステム

鏡筒:自作77mm屈折鏡筒 (口径77mm 焦点距離480mm F6.23)
架台:写真用三脚(3ウェイ雲台)
主なオプション:
 ビクセン45°傾斜正立プリズム
全重量:約3.4kg


 鏡筒は塩化ビニール製、架台も写真用の三脚(高校生の頃に買った年代物)ということで、非常に軽量です。

■設計

 直径80mmのレンズは多少の傷はあるものの、まぁ実用には差し支えない程度。コーティングが落ちてしまっていますが(痕だけ残っている状態)、観望用なのでこれも実用上の問題はなし。焦点距離も不明だったのですが、太陽光で計測(火事に注意!!)した結果、480mm。もとはF6の鏡筒に使われていたのでしょう。
 これを元に設計図を書き起こします。縮小すると面倒くさいので、原寸大で書きました。

■最初の状態

 基本的な部品は全て塩化ビニールのパイプとジョイント(ソケット)の部品です。塩ビ管は知り合いの板金屋にもらったり、勤務先の近所の水道屋に切れ端を譲ってもらったりしました。ジョイントのパーツは勤務先の近所のホームセンターで購入しました。
 これを設計図にもとづいて切断します。
 切断といっても、家にあったノコギリでギコギコ切って、切り口を紙ヤスリで整えるだけです。
 写真の右側が接眼部、中央が鏡筒部、左側が対物レンズとレンズセルのパーツです。鏡筒部はVU70とVU65の塩ビ管を接続して使います。レンズセルはVU70のジョイントパーツを使っています。セルの構造上、80mmの対物レンズを77mmに絞って使うことになります。ちょっともったいないですが、まぁ大目に見ましょう。 

■組み上がり

 前項のパーツを組み上げたのが上の写真です。
 ホームセンターで売っている塩化ビニール用の接着剤で各パーツを接着してあります。強度が必要そうな場所は、念のため木ネジで止めてありますが……接着剤だけでも十分頑丈なのであんまり意味はなかったようです。
 写真では分かりませんが、迷光防止のため、鏡筒内部は植毛紙を貼ってあります。植毛紙を貼れない場所はつや消し黒の塗料を塗ってあります。

■塗装

 最近流行の(?)カッティングシートで仕上げました。塗料のような塗りムラも出ませんし、扱いも楽で、手軽にきれいに仕上げることが出来ます。メタリックカラーで真鍮製のような雰囲気をかもし出しています(!?)。
 塗装前と鏡筒の形が微妙に異なっているのは、鏡筒を5cm短縮したためです。最初は直視と天頂プリズム使用しか考えずに鏡筒の長さを決めたのですが、実は45°傾斜型正立プリズムを使うとピントが出ないことが分かり、後から鋸を立てて切ってしまいました。ん〜いい加減だ。

■その他

●接眼部
 ドローチューブはVU40のジョイントパーツを2つつなげて使っています。ドローチューブ受けがVU50の塩ビ管なのですが、これの内側に植毛紙を巻くと、VU40のジョイントパーツの外径がピッタリなのです。これを抜き差ししてピントの調節を行います。
 アイピース受けにはVP25のジョイントパーツを半分に切ったものを取り付けています。これの内径が31.7mmアイピースにほぼピタリ。そのままだと多少ガタが出るので、植毛紙を短く切って貼り付けて、きっちりアイピースが収まるようになりました。アイピースの脱落防止のために、家に転がっていたビスを付けてあります。
 ちなみにドローチューブ受けのVU50塩ビ管は内径が54mmありますので、あとで2インチアイピース対応のドローチューブに換装することもできます。
●鏡筒バンド
 最初はBORGの鏡筒バンドを流用するつもりだったのですが、実売価格\2,900-はこれまで本体につぎ込んだお金とほとんど同額になので、これも自分でつくることにしました。
 どうつくったものか困っていたのですが、YAMACAさんのホームページ「星を見る道具の工房」で紹介されていた瀬田和明さんの60mm屈折望遠鏡のアダプターを参考に制作しました。鏡筒と同じ径の塩ビ管に切り込みを入れ、鏡筒をはめ込むだけですが、塩ビは復元力が強い上に摩擦力もあるため、これで十分固定できるという代物です。外側はカッティングシートで仕上げました。
 三脚台座は木製で、底に穴を開けてカメラ三脚のネジが入るようになっています。こちらは余ったつや消し塗料で黒く塗ってあります。塩ビ管のパイプと木製の台座は木ねじで止めてあります。

■見え味

 微動のついていない雲台を架台にしているので、せいぜい50倍位までの倍率でしか使っていませんが、月のクレーターや木星の縞模様、土星の輪など、きちんと見えてくれます。それまで使っていた宮内光学の60mm屈折に比べると、口径が大きいぶん明るく見えるので快適です。
 光軸は特に調整していないのですが(調整機構もついていませんが)、特に問題はありません。部品を紙ヤスリで磨くときに精度に気を使ったのと、組み立てる際に接眼部から覗いて眼がレンズの中央に見えているよう確認しながら進めたくらいしか気を使っていなかったのですが、何とかなっているようです。
 45°傾斜型正立プリズムを使うと、ダハプリズムの迷光によってコントラストの低下と星像の悪化が出てしまうのですが、この程度の倍率で使っている限りでは我慢できる範囲内です。
 ボーグのSWK22mmを使うと倍率22倍で、実視界3度が得られますので、とりあえずファインダーなしで使っています。

 

■これまでの感想と今後の展開

 制作費ですが、レンズがもらい物、塩ビのパーツやネジなどの部品代が1,000円弱、植毛紙が約1,000円、カッティングシートや塗料が1,000円弱、ということで大体3,000円を切る程度だったでしょうか。
 工具はノコギリ、紙ヤスリ、ハンドドリル、ドライバーくらいしか使っていません。特殊な工具は何もなし。ハンドドリルもネジの下穴を開けるのに使っただけですし。こんなに簡単に出来てしまってよいのでしょうか。
 当分は仲間内での観望のサブ機としてがんばってもらうつもりです。
  それにしても、自分でつくった望遠鏡で、初めて土星の輪が見えたときのうれしさといったら!! まるで小学生の頃、初めて望遠鏡を覗いた時のことを思い出してしまいました。
 将来的に接眼部を2インチ化できる余地はあるのですが、神戸の空では77mm程度の口径で楽しめる星雲・星団が限られてしまうので、今のところは踏み込む計画はありません。近くの望遠鏡屋でWS30mmが出ていたので、興味はそそられているのですが……

※この望遠鏡の製作にあたっては、YAMACAさんのホームページ「星を見る道具の工房」、三村さんのホームページ「初心者親子で見る天体望遠鏡」、木村裕之さんのホームページなどを参考にさせて頂きました。この場を借りてお礼申し上げます。

 その後、架台をBORGの簡易赤道儀に換装し、接眼部やファインダーを取り付けました。
 改造レポートはこちら

(2002.2.24記 2002.10.2追記)


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