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ミヤウチ SCS-60i (晴天望SATURN)


scs-60i


■購入のきっかけ

 メインで使っていた13cm反射赤道儀(タカハシMT-130E)が、アパートから運び出すのが面倒で稼働率が下がっていたので、気軽に使える鏡筒がほしいと思って購入。

■スペックとシステム

鏡筒:SCS-60i鏡筒(口径60mm 焦点距離392mm F6.53 アクロマート ポロII型正立プリズム内蔵)
付属品:3×12ファインダー、22倍アイピース(RK18)
後付けしたオプション:40倍アイピース(Or10)
重量:1.1kg

■最初の印象

 ミヤウチの双眼鏡はメタリック基調の流麗なデザインで知られていますが、このSCS-60iもその例に漏れず、美しいデザインです。小中学生の頃に使っていた60mm屈折が焦点距離1000mmという長焦点のものだったので、同じ口径の割にはずいぶんコンパクトだと思いました。

■機動性

 一式4kgですから、軽量コンパクトそのものです。片手で持ち運びできます。写真用三脚に載せて使っていましたが、22倍使用時ならともかく、40倍だと微動の付いた架台が欲しくなるところです。
 実は以前、東京の天体望遠鏡店で購入した微動雲台を買って使ったことがあるのですが、さして重くもないこの鏡筒を乗せた途端グラグラし、ピント合わせでグラグラし、あまりに使い物にならないのでバラして捨ててしまいました。
 その後、BORGのSWIIセット用の簡易赤道儀をB品で購入し、この鏡筒の架台に使っています。

■操作性

●対物ヘリコイド
 ピント合わせは鏡筒半ばに設けられたヘリコイドで行います。ヘリコイドは回転ヘリコイドで、対物レンズ部が前後します。回転はやや渋め。手を伸ばして操作しなければならないので、BORGの接眼ヘリコイドに比べるとちょっと不便かも。でもニコンのフィールドスコープと似たような操作系ですから、ある程度は慣れの問題かもしれません。
 
●3×12ファインダー(純正)
 純正のファインダーは正立で、3倍12mm、視野は6度。窮屈な見かけ視界と引き替えに、アイレリーフは55mmもあります。アイレリーフは長いほど覗きやすいような印象を受けますが、ここまで長くなるとかえって覗きにくいもの。接眼レンズからずいぶん離れたところに瞳位置が来るので、空中に浮かんだ像を捕まえなければなりません。
 昼間はアイピースからの光束が明るく見えているので、まだよいのですが、夜になると事情は一転。星の像は暗いため、瞳位置をまるでつかめず、ファインダーを覗くのにまず一苦労です。口径が12mmしかないので、見える星も限られており、惑星導入ならともかく、星雲・星団を見ようとすると、市街地ではほとんど役に立ちません。
 
●改良型!? 素通しファインダー
素通しファインダー
 ということで、改良型!?のファインダーを装着しました。といっても水道用のVP13塩ビ管を適当な長さに切って、太さが合うようにVP13ジョイントを組み合わせ、ファインダーの脚にはめこんだだけですが。
 三菱製の塩ビ管なので、すばる望遠鏡と出所が同じグループです(!?)。
 レンズは入っていないので、等倍ファインダーとなりますが、RK18mm接眼レンズ使用時(22倍)では視界が広いので、とりあえず塩ビ管の中に対象天体を入れておけば、本体でも問題なく視野内に入っています。

■光学系

 もともと大きな口径ではないのですが、月、惑星、明るい星雲・星団と、一通りのものはきちんと見えてくれます。
 双眼鏡レンズのジャンク品と思われる自作77mm屈折と比べると、40倍以上の倍率では明らかにSCS-60iの方が像が上。きっちりつくられた対物レンズなのが伺えます。
 ちなみに望遠鏡の名前にも冠せられている土星(SATURN)は、22倍では細長く見えるくらいですが、40倍で小さいながらもはっきり輪が分かります。
●アイピース
 アイピースは基本的に専用品。スリープの基部に突起が付いていて、接眼部に取り付けたときに1/3回転ほどさせて固定する方式です。スリープ径は31.5mmなのでアメリカンサイズのアイピースも取り付きますが、固定ネジがないので、うっかり落とさないよう気を付けねばなりませんし、ピントが合うかどうかの保証もありません(ペンタックスXLは合焦しませんでした)。
 標準で22倍のRK18mm※1、オプションで40倍のOr10mmがあります(他に80倍がある)。星像もまぁまぁで、見た感じ不満な点はありません。ただ見かけ視界が50度程度で、星雲・星団の観望をするなら、もう少しワイドな方が良いかなという気がします。おそらく正立プリズムで光束がケラれてしまうため、広視界をあきらめているのかと思います。惑星の観望では特に気になりません。
 RK18mmはゴム見口を折り返せばメガネ使用時でも全視野を見渡せますが、Or10mmはメガネ使用時ではギリギリ視野がケラれるかどうかというところ。ハイアイポイントではないので、これは仕方のないところでしょうか。

※1 「RK」ですが、「リバースド・ケルナー」という形式で、一般的には「ケーニッヒ式」と呼ばれるものだそうです。望遠鏡ではあまり使われませんが、双眼鏡ではよく用いられるものとのこと。YAMACAさんの「星を見る道具の工房」の中にも解説があります。岡山県の横山さんにご教授いただきました。ありがとうございます。
 
●45度傾斜正立系
 本体にはポロII型プリズム使用の旨が書かれていますが、45度傾斜にするために、くさび形のプリズムを組み合わせています。このくさび形の部分は全反射が利用できずにメッキ面があり、その分だけ光量を損失します。
 45度俯視の正立像を得るために、汎用品ではシュミットプリズムを使うことが多いのですが、精度が悪いものだとダハ稜線が気になってしまいます。ポロII型+くさび形プリズムの方が有利と判断したのでしょうか?
 明るい対象を入れて接眼部を覗き込むとプリズムハウス内に迷光が見えますが、もともとの鏡筒の値段を考ると、多少は仕方ないところでしょう。実際の使用で気になるものではありません。

■これまでの感想と今後の展開

SCS-60i+SWIIセット 実は買った当初、それほど使う機会は多くありませんでした。
 これは望遠鏡の使い勝手云々の問題でなく、私の住んでいる市街地では、口径6cmの望遠鏡で見ることの出来る天体が限られてしまうのと、たとえ見えても星雲・星団ではどうしても貧弱な印象を受けてしまい、使用頻度が落ちてしまったのです。というわけで、自宅で使う機会はあまりなかったのですが、三脚ごと職場に置きっぱなしにしておいて、夕方ちょいと夜空を観望するのに使っていました。夕暮れ時に惑星が見えている頃は、同僚に声をかけて、ミニ観望会を開くこともありました。天体望遠鏡を覗いたことのある人は意外に少なく、月のクレーターや木星のガリレオ衛星、そして土星の輪など、例外なく喜んでもらえました。

 現在はBORGのSWIIセットの架台と組み合わせて、移動観望用のセットとして使っています。一式で4kg足らずですので、バッグに入れて担いで電車で余裕で持ち運びできます。正立系+経緯台で小学生でもラクラク操作できるので、かなりゴキゲンな組み合わせです。小さいながらも一通りの天体を見ることが出来るので、ちょっとした出前観望会にはすごく便利。

 実はいつのころか、プリズム部にヒビを入れてしまいました。明るい対象を入れない限りは気にならなかったので、しばらくそのまま使っていたのですが、2004年に入って思い切って修理に出しました。1ヶ月ほどで戻ってきましたが、やはり気分がいいものです。

(2002.5.17記 2004.3.23追記)


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