以前はタカハシのオルソ(以下、Or)25mm・9mm・5mmを常用していたのですが、Or9mmとOr5mmはアイリリーフが短く、覗くのに苦労していました。自分は眼鏡常用者なので、眼鏡を外さないと、視野が見渡せないのです。
ちまたではナグラーなどの超広視界アイピースが出回っていましたが、とても手が出る値段ではなく、ハイアイで広視界(見かけ視界65度)のペンタックスXLシリーズを導入しました。
何本もまとめて買えないので、最初に中倍率用のXL10.5mmを、大阪の協栄産業で安売りに出ているときに購入。1万円台の後半だったでしょうか。接眼レンズにそんな大金をつぎ込んでよいものか畏れ多かったのですが、鏡筒を代えても使えるものですし、思い切ってしまいました。
それまでの40度ほどの見かけ視界が、XLでは65度。角度にして15度の差ですが、面積では倍以上の範囲を見ている気分です。アイリリーフ20mmで眼鏡をかけたままでもOKですし、伸縮式のアイカップが付いているので、眼鏡を外しても迷光が入らずに観望できます。しばらくはこれ一本でなんでもかんでも見ていました。
その後2年がかりでXL5.2mmとXL21mmをそろえ、現在はこの3本をメインで使用しています(写真では左から5.2mm・21mm・10.5mm)。伝え聞いた話ではMT-130とXL21mmの相性は抜群に良いらしいのですが、この組み合わせだと自宅付近では空が明るすぎて本領が発揮できません。XL10.5mmが一番快適に使えます。
今では多くの広視界アイピースが出回っていますが、望遠鏡が買えてしまうような値段のものも少なくなく、コストパフォーマンスを考えると、無難な選択肢だったのではないかと思っています。
というわけで、ペンタックスXLを使う前までのメインのアイピースが、このタカハシのOrです(写真では左からOr5mm・Or25mm・Or9mm)。MT-130Eを購入したときに合わせて買ったものです。 |
目くじらを立てるほどの差でもないのですが、星雲・星団では視野の広いXL、惑星ではこのOrと使い分けていこうかと考えています。ただOr5mmだけは極端にアイリリーフが短く、ホコリも目立ちやすいため、ちょっと苦手です。 手持ちの望遠鏡の接眼部は全て31.7mmのアメリカンサイズなので、このOrも31.7mm仕様に工作してしまいました(右写真)。簡単な工作でアダプターなしで使えるようになりますので、使用率が格段に上がります(工作方法はこちら)。 普段はサブ機の自作77mm屈折の常用アイピースになっています。
|
コプティック星座館でB品を購入。1本1,000円しなかったので、3本買ってしまいました。
写真の左から、SWK22mm・H50mm・WO13.5mmです。H50は2インチサイズですが、うちの望遠鏡では2インチサイズの接眼部がないので(BORGもEMS-S常時着用)、出番がありません。何のために買ったんだ……って感じですが、軽量ファインダーにでもならないかと思いまして。
SWKは「スーパーワイドケルナー」の略だそうです。見かけ視界64度はペンタックスXL並み。ただし1/20のコストの差が埋まるわけでなく、中心部こそ使えますが、周辺像はボケボケです。またアイリリーフも短く、裸眼でもゴム見口を折り返さないと全視野が見えません。どっちみち最周辺は使い物にならないので、実用上の問題はありませんが。
見かけ視界のおかげで実視野が広いので、自作77mm屈折のファインダー代わりの対象確認用に使っています。
WOは「ワイドオルソ」の略。見かけ視界は70度ですが、やはりアイリリーフが短く、全視野を見渡すには裸眼でもゴム見口を折り返す必要があります。像も中心部はそこそこですが、周辺に行くに従って順調に(?)崩れていきます。
もともと値段が値段なので、多くを求めるのは酷というものです。テスト用や予備用に持っておくのはよいのではないでしょうか。BORGのユーザーなら、慣れてきたら別のアイピースにステップアップするとよいでしょう。ちなみに本体はプラスチック製なので、とても軽量です。
小学校高学年から近視でメガネをかけていたのですが、当時使っていた従兄弟のお下がり6cm屈折に付いていたアイピースはミッテンゼーハイゲンで、アイリリーフがとても短く、メガネを外さないとまともに覗くことができません。そんなわけで天体望遠鏡を覗くときはメガネを外して見るものだ、と思っていました。
MT-130に乗り換えた高校時代のある日、Or25mmの低倍率で観望していると、ピントの山がはっきりしないことに気付きました。光軸が狂ったのかと思ったのですが、何故か高倍率にすると像はボケません。そのときは原因不明のまま放置してしまいました。
やがて社会人になって一時天文から遠ざかり、星見を再開したときに鏡筒を再メッキ・オーバーホールに出しました。戻ってきた鏡筒は光軸は合ってるはずなのですが、やはり低倍率時に星が点になりません。焦点内外像を見比べると、非点収差の症状です。主鏡がちゃんと放物面になっていないのかと疑いましたが、オーバーホールから戻ってきたばかりですし、そもそもそんなものを世に出すメーカーではありません。
よくよく覗き比べるとOr25mmで症状が一番ひどく、Or9mmになると収差の量が少なくなります。そのうち揃えたペンタックスXLアイピースでも、XL21mmでは星が点になってくれません。XL10.5mmではさほど気にならなかったのですが、これはそろいもそろってOr25mmとXL21mmが不良品なのかと思いました。
そのうちBORG100mmの鏡筒を手に入れて覗いたら、やはりOr25mmとXL21mmで非点収差が出ています。これでどうやら主鏡や対物レンズのせいではないことはわかったのですが、それにしてもこんな収差が出るアイピースも聞いたことがありません。原因が不明のまま、謎が深まるばかりでした。
そんなある日、就寝前にメガネを外してなにげに部屋のミニコンポの赤ランプを見たら、近視で円形にボケるはずのランプが、なんと楕円形にボケているではありませんか。左目と右目を見比べると、右目だけ、楕円形にボケる症状が出ています。……これは!!
と思って部屋の「広辞苑」で「乱視」の解説を読むと(医学書など持っていませんので)、まさしく自分の右目がその症状だったのでした。なんとまぁ、10年近くも自分が乱視だということに気付かなかったのです。というより気付いていながら自覚がなかったといった方が正確かもしれません。
後日メガネ屋さんで、現在のメガネをつくったときのデータを見せてもらったら、確かに右目だけ、弱い乱視の度が入っていました。学校での健康診断では「近視」としか言われてなかったので、まったく知らなかったのです。
なんで低倍率の時だけ非点収差のような像が見えたかというと、高倍率時は射出瞳が小さくなるため、いわばカメラレンズを絞ったのと同じ状態になり、収差が目立たなくなります。逆に低倍率時は射出瞳が大きくなり、絞り解放に近い形になりますから、収差も盛大に目立っていたわけです。
これで全ての謎が解けました。それまでは眼鏡を外してアイピースを覗いていたのですが、その後はメガネ着用のままアイピースを覗くようにし、乱視の影響とはオサラバしました。この先メガネなしでは望遠鏡を覗けないのかと思うと、ちょっと悲しくもあるのですが。
それにしてもまさか自分の体が収差の発生源だったとは……
(2001.12.24記 2002.10.1追記)