ある日の観望会だったか、とある質問に困ってしまったことがあります。
「オリオン座って何メートルくらいあるんですか?」
地上にあるものならば、実際に物差しや巻き尺で大きさを測ることが出来ます。
でも相手が星座では物差しも巻き尺も使えません。それに仮に「5メートル」といっても、10メートル先の5メートルなのか、1キロメートル先の5メートルかで、見え方がまるで違います。
そこで星空にあるものを測ったり示したりする場合、ふつうは見かけの大きさ、つまり「角度」を使います。
角度というと「分度器」が出てきそうですが、星座や星の位置を示す程度なら、それほど厳密な精度は要りません。そこでよく使われるのが「人間分度器」、腕をいっぱいに伸ばしたときの「手」です。
多少の個人差はありますが、大人も子どもも共通して使えます。20度だったら握りこぶし2つぶん、なんて応用していけば、たいていの角度を測ったり示したり出来ます。
天文関連の記事を見ると、水星や金星の見え方を紹介する、上のような図が出てきます。
「方角はともかく、角度は難しそう」と思ったら、さっそく「手」の出番です。
握りこぶしの幅が約10度、親指と人差し指を開いた幅が15度ですから、これを覚えておけば、簡単に高度の目安をつけることができます。
例えば、水星は明るくなった地平線近くの空にあるので、肉眼で見つけるのは少し難しいかもしれません。握りこぶしで高度の目安をつけて双眼鏡で探すと、比較的見つけやすくなります。
角度を覚えると、他人に星の位置を伝えるのも便利です。
「あの木のてっぺんの、ちょっと上。あ、もう少し。おっと、そんなに行かないで……」なんて困らなくても、
「あの木のてっぺんから10度くらい上。握りこぶし一つ分くらい。」と、簡単です。
冒頭に出てきた星座の大きさも、角度で表すと便利です。例えば北斗七星の先から尾までは、約25度。
「握りこぶし1つ」+「親指と人差し指をいっぱいに開いた幅1つ」分にあたります。
あ、ところでオリオン座の大きさでしたっけ。ここまできたら、ぜひ自分で測ってみてください。
※掲載した星空の様子は「ステラナビゲーター Ver.5」(AstroArts)を使用して作成しました。
(2007.7.3記/2008.12.20改訂 福田和昭)