塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記
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一般公開では幅広いテーマの展示があったのですが、ここでは私が興味を引いた部分だけ、駆け足で紹介していきます。
逓信省式無線電信電話受信機 |
鉱石検波器です |
NICTの前身の一つが郵政省電波研究所ということもあって、電波通信には縁が深いところです。一般公開では郵政資料館から、現存日本最古の無線機もやってきました。1910(明治43)年頃につくられた「逓信省式無線電信電話受信機」です。
頂いてきたパンフレットによると、日本で最初に電報が電波に乗って届いたのが1908年5月27日。2008年はちょうど無線電信開業100周年の記念すべき年なのです。
まさか、一人に一台に近い割合で携帯電話(電波法上の無線局です)が行き渡る世の中になってしまうとは。
折り畳み式のパラボラ |
オレンジの四角い出っ張りの表面の |
「きく8号」はJAXAが2006年12月に打ち上げた人工衛星で、テニスコート大の巨大なパラボラアンテナを2台積んで、静止軌道上を周回しています。衛星側に大きなアンテナを積むと、地上側は小さな設備で衛星通信が出来るのです。将来は携帯端末で衛星通信、ということで現在各種の実験中。
目を引いたのは折り畳み式のパラボラアンテナ。カメラ三脚に乗っていて、とっても軽量そう。
でも本命は右の写真。なんだか大昔の携帯電話のような端末ですが、機械の上面のオレンジの四角い出っ張り部分、その中のグレーの四角がアンテナだというのです。およそ1cm角くらいの大きさ。これで赤道上空36,000kmの静止衛星と通信できるというからびっくりです。
本当は送受信とも1cm角のアンテナで出来る予定だったのですが、きく8号側のトラブルで、地上からの送信には外部アンテナを使っているとのこと。
宇宙光通信地上センター |
コントラバス社製1.5m反射経緯台 |
NICTの構内の隅っこに、「宇宙光通信地上センター」があります。
名前からしてパラボラアンテナがデーンとそびえた施設を想像していました。が、目の前に現れたのは、どうみても天文台のドーム。
で、中に入ってみたものは、どう見ても反射望遠鏡。Contraves(コントラバス)社製の口径150cm反射経緯台です(1988年製)。この会社の望遠鏡は、日本国内で他に北海道の銀河の森天文台(陸別町)(115cm)と富山市科学文化センターに納入されています。いずれも人工衛星、特に国際宇宙ステーションの撮影で登場する機会が多いのですが、特徴として高速でブルンブルンと鏡筒を振り回し、人工衛星の追尾が出来てしまうのです(元は軍事用だという話も)。
NICTの1.5m反射経緯台は、人工衛星との光通信実験を行っています。相手はJAXAの人工衛星「きらり」。地上600kmの比較的低い軌道を移動する衛星を追尾しながら、また衛星側も地上局をガイドしながら、互いにレーザー光線のやり取りをするのですから、高度な姿勢制御が必要です。
主鏡はかなりの短焦点 |
きらり(OICETS) JAXA筑波宇宙センターにて(2008.7.28) |
このほか、大口径を活かして人工衛星の光学観測〜位置測定も行っているそうです。
NICTの仕事の一つに「宇宙天気予報」があります。
人類の活動領域が宇宙まで広がった現在、太陽フレアが宇宙飛行士の活動や人工衛星の動作の障害となり、また地磁気嵐も地上の設備に悪影響を与えることがあります。こうした宇宙環境の変動を精度良く予報しようというのが宇宙天気予報です。
地上の天気予報は気象庁が担当していますが、宇宙の天気予報は宇宙天気情報センターが担当しています。
スクリーンの数値の群れとテーブルの上の資料の山 |
モニタだらけの壁面 |
毎日14時30分に宇宙天気予報会議を開いているのだそうです。今のところはWeb上で公開されていますが、そのうちテレビや新聞に「宇宙天気予報」が載る日が来る……かもしれません。
主に太陽活動のモニタリングをしているのですが、2008年は活動期の端境期の極小期。
「太陽が静かだと、宇宙も平穏で予報官としては安心ではないですか?」と訊ねたら、
「何も起こらないと研究に困るので、早く活発になって欲しいですね」と苦笑いされていました。
南極の展示コーナーもありました。
「なにゆえ南極まで!?」と思って解説パネルを読んでみると、電離層の観測のために、第一次南極観測隊から継続して隊員を派遣しているのだそうです。
南極の絵はがきが配布されていて、この場で切手を貼って投函すると、次の隊が南極へ持っていって、昭和基地内郵便局から日本へ発送してくれるのだそうです。子どもたちが机にかじりついてハガキを書いていました。
ちなみに郵送料は、国内と同じ扱いの、はがき一枚50円です。
(2008.7.26訪問/2008.9.8記)