塩屋天体観測所観測記録室
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皆既月食(2007年8月28日)

撮影日時:2007年8月28日 20時22分、露出 4秒
撮影地:明石市立天文科学館
撮影機材等:
  キヤノン Powershot A70 5.4-16.2mm(6.6mmで撮影) F5.0 ISO200設定

6年ぶりの皆既月食

 日本全国で見ることが出来る6年ぶりの皆既月食です。関西では2004年5月5日にも皆既月食があったのですが、この時は神戸は雲量10の曇天。だからやっぱり今回は6年ぶりの皆既月食でした。

 明石市立天文科学館の観望会は、事前申込があっという間に300人を越え、あわてて〆切。月食ですから、晴れて月が出ていればどこでも見ることが出来るのですが、何となく科学館で見た方が、見えそうな気がするのでしょうか。

 しかし、ここにきて天気予報は絶望的な曇/雨マーク。8月に入っていやというほど暑くて晴れた日が続いてきたのに、ここになって曇りはないだろうという気分ですが、お天道様には逆らえません。当日昼間は雨まで降ってきました。あ〜あ。

そして夕方

 と、思っていたら、夕方になると雲切れてるじゃないですか。

 明石に着いたら、天文科学館のドームもスリット開けて空を見ています。低空に雲は残っているものの、なかなかいい雰囲気になってきました。

 とりあえず月が出てくるまでの間ということで、4階日時計広場では木星の観望会です。

19:20、月が出た!

 東の低空には雲が立ちこめて、なかなか月は姿を現しません。じりじりしながら空を眺め続けます。

 と、不意に「あ、あれ月じゃない」「見えてるよ」「どれどれ」「あ、ほんとだ」とあちこちから声が上がります。

 指さす方向をじっと見ると、あった! プラネタリウムドームの斜め上。赤銅色というより、赤黒いような月です。まるで背景の空に溶け込みそうな明るさ、いや暗さです。

 さっそく双眼鏡(天文科学館のニコン20×120)を向けると、こちらは赤銅色の月。右側(南側)が明るく見えるのは、こちらが地球の影の縁に近いからです。月の左下にはみずがめ座σ星が見えています。19:42頃に皆既中の月に隠される星です。

 が、この時は5分ほどで、月は雲の中に隠れてしまいました。

 雲は厚く、より厚く

プラネタリウムドームではインターネット中継 ときおり雲間からチラリと赤い姿を見せる月ですが、双眼鏡を向ける暇もないくらいに、すぐに次の雲に隠れてしまいます。19:50頃に下半分だけ雲から顔を覗かせましたが、この時も数人が双眼鏡を覗いただけで、すぐに雲の向こうに消えてしまいました。

 雲に悩まされた2003年の火星大接近の観望会を思い出します。

 プラネタリウムドームでは晴れた地域の公開天文台を結んでインターネット中継も行われました。北海道は晴れているとのこと。

皆既終了の直前に

 一時はあきらめムードさえ漂いましたが、気が付くと、天頂方面に大きな晴れ間が出来ています。雲の動きを見ていると、西から東へ。大きな晴れ間も月が出ているはずの東の空へ移動していきます。

 時計を見ると20:10。皆既終了時間まで13分。雲の移動速度を見ていると、晴れ間が月のある場所に到達するのが、ちょうどその頃です。間に合え、何とか間に合え!

撮影日時:2006年11月9日 20時21分、露出4秒
撮影地:明石市立天文科学館
撮影機材等:
  キヤノン Powershot A70 5.4-16.2mm(5.4mmで撮影) F5.0 ISO200設定(原寸大トリミング)

 「出た!」「見えた!」

 雲のすき間から、かろうじて赤い月が姿を現します。と、見る見る間に月の明るさが増していきます。時計は20:20を指しています。皆既終了まであと3分。輝きを取り戻さんとする月は、明石の空に、らんらんと赤い光を投げかけます。

撮影日時:2007年8月28日 20時22分、露出 4秒
撮影地:明石市立天文科学館
撮影機材等:
  キヤノン Powershot A70 5.4-16.2mm(6.6mmで撮影) F5.0 ISO200設定

 この時を待ち続けたお客さんの顔も明るい! 先ほどまでのどんよりした空気はどこへやら。残り間もない皆既食の時間に、一目、望遠鏡や双眼鏡で赤い月を見ようと、急にそわそわした雰囲気になってきます。

 でもですね、肉眼で見るこの風景が、一番きれいなのではないかと思うんですよ。

部分月食

撮影日時:2007年8月28日 20時35分、露出 1/15秒
撮影地:明石市立天文科学館
撮影機材等:
  キヤノン Powershot A70 5.4-16.2mm(9.4mmで撮影) F6.3 ISO50設定
  ニコン20×120双眼望遠鏡 (手持ちコリメート)

 皆既食終了後、約1時間かけて、月は本来の満月の姿を取り戻します。会場もどことなくリラックスムード。中には望遠鏡製作教室で組み立てたコルキット(4cm屈折望遠鏡)で写真撮影に挑戦する親子の姿も。

撮影日時:2007年8月28日 21時17分、露出オート
撮影地:明石市立天文科学館
撮影機材等:
  シャープ SoftBankSH811(携帯電話附属カメラ)
  ニコン20×120双眼望遠鏡 (手持ちコリメート)

 21時を回ると、もう半分以上、明るさが戻りました。部分食の終了は21:24。

 時計がその時を告げると、参加者一同から拍手がわき起こり、無事に観望会は終了したのでした。

次回は

 2010年12月21日夕方に皆既月食が起こります。今回と同じ月出帯食ですが、皆既中に月の出を迎えるので、条件は今回より悪いです。といっても、冬の澄んだ空の元なので、総合的にはあまり変わらないかもしれません。

 子どもの頃は、月食って何度も見たような気がするのですが、改めて数えると、意外に機会の少ない現象だということが分かります。

(2007.8.29記 福田和昭)

塩屋天体観測所観測記録室
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