塩屋天体観測所観測記録室
前のページへ戻る

ホームズ彗星バースト(2007年10月)

 2007年10月24日に大バーストを起こしたホームズ彗星(17P/Holmes)。観測所雑記帳と掲示板に記した観望記録をまとめておきました。

2007年10月25-26日


※写真はクリックで拡大

 大増光中のホームズ彗星。17Pというくらいですから、そうとう昔から確認されている周期彗星です。
 昼間からメールで(天文関係のMLの一つを携帯に届くようにしています)いろいろと情報が届きますが、天気予報では晩の天気は思わしくありません。
# 「赤いらしい」「……専用か」とか訳の分からぬネタも(^_^)

 夕方にはさっぱり晴れて、ISSとシャトルもしっかり拝みました。でも家に着くころには再び一面の雲。こりゃだめか。
 JAXA・岩本さんと会津大・寺園さんの中継を見ながら、どうにもこうにも気になって、窓を開けてみます。
 「……月、出てるやん!」

 窓から身を乗り出して双眼鏡。建物の影ぎりぎりなので、かなり危なっかしい体勢です。星を見ていて窓から落ちたとあっては、アホ以外の何者でもありません。
 で、彗星もしっかり視野に入っているはずなのですが……さっぱり分かりません。もう暗くなっちゃったのかな?

 実は彗星状の天体を想像していたのが大間違い。
 双眼鏡だとほとんど恒星状で、色も赤とはいわないまでも、黄色いのです。カペラより少し黄色がかった感じ。木星と土星の中間くらいの色でしょうか。
 いちど確認すると、余裕で肉眼でも分かる明るさです。ペルセウス座の?星(1.8等)より暗くて?星(3.0等)より明るい。だいたい2.5等というところでしょうか。満月の夜に輝く肉眼彗星!

 屋根の上に三脚を立ててコンパクトデジカメを向けたら、とれてしまったのが冒頭の写真。
 日付が変わったあとで、50mm屈折で25倍ほどで見たら、若干の面積がある核を輪郭のはっきりしたコマが取り囲む不思議な姿が見えました。

 素麺さんの西神戸の星空BLOGに写真が掲載されていますが、右側の写真が肉眼で見た雰囲気とそっくりです(眼視では土星みたいな黄色です)。

 なんだかもう、大忙しの夜です♪

2007年10月27-28日

 見えています。明るさはほとんど変わらずか、若干暗くなった感じ。でも2等台の後半です。
 25日よりコマが大きく広がって、前回は7×50双眼鏡ではほとんど恒星状に見えたのが、今日(27日)は、ぼおっとしたコマが面積を持っているのが分かります。色は黄色で、彗星というより巨大な惑星状星雲を見ているようです。

2007年10月28-29日


※写真はクリックで拡大

 月の出直後です。2007年10月28日、18:56。西はりま天文台にて。

 28日は、講座の受講で日中、西はりま天文台にいました。そのまま夜の観望会になだれ込みます。

 観望会が始まる前、月が出る前は天の川の見える空の下、肉眼と双眼鏡で水星を見ていたのですが、観望会が始まったら薄雲が出て、雲間からの観望となりました。

 予想はしていましたが、なゆた望遠鏡はあまり低倍率を出せないので、彗星核の強拡大を見ることになります。視野半分以上を覆うボーっとしたコマの広がりは圧巻でしたが、ボーっと広がりすぎて何が彗星なのか分からないという人も。なかなか難しいものです。

 家に戻ったのは23:30頃でした。

2007年10月30-31日

 夕方から雨が降って、今晩はダメだなぁと思って、寝る前に念のために窓を開けると……晴れてるよ。さっそく観望。
 光度は少し下がって3等。でも肉眼で充分位置を確認できる。月明かりもあるせいか、肉眼ではまだ恒星と区別が付かない。
 望遠鏡を向けると、明らかに28日より拡大していてびっくり。なんだこれは。
 久しぶりにスケッチをとってみます。円周がヨレヨレなのは、対物キャップで型を取ったから(手抜き)→視野円だけ描き直しました。(図は上が北)

2007年10月31-11月1日

 晩には天気が崩れるといっていたのですが、晴れていたので、再び望遠鏡を引っぱり出してスケッチ。
 月齢20で、21時を廻ったばかりなら月明かりはないのですが、東の空は神戸市街の光害の影響をまともに受けるので、それほど昨夜と変わりはありません。見え方も大差なし。今回の方が核が少し分かりにくかったかな。
 ……のわりにはスケッチの雰囲気がずいぶん違うのは、未熟なせいです。きっと。
 光度は?Per(3.0等)とほぼ同じ明るさに見えたので、約3等といったところ。

2007年11月2-3日

 11月1日は曇天。
 一日間が空いただけなのに、感覚的には倍くらいの大きさにコマが広がった気がします。視野導入時にはXL21mm(31倍)を使っているのですが、一瞬、XL10.5mm(61倍)と間違えたのかと思いました。
 コマが広がったのに対して、核はよほど注意しないと見えにくくなっています。コマを透けて見える恒星の方がずっと目立ちます。
 光度はδPer(3.0等)よりやや明るく、αPer(1.8等)より暗く見えたました。約2.8等と見ましたが、今日は雲が出ていたわりには透明度が良く、前回よりスケッチ開始時刻が遅かった分、光害の影響が少なかったのかもしれません。
 拡散状の天体は、透明度次第で見え具合が大きく変わるので、なかなか難しいです。

2007年11月3-4日

 いま見てきました。たしかに、ボーっとした感じが分かるようになってきました。10cm屈折で見ると、視直径が10分を少し越えたくらいに見えます。……ということは、満月の1/3!? (ほんとかな)

2007年11月7-8日

 4日ぶりに見ました。大きくなりました。だいぶ淡くなりましたが、肉眼でも何とか見えます。クラゲみたいじゃ。透明度最高。明日仕事がなければ、いつまでも見上げていたい空。

2007年11月10-11日

 天文科学館の天体観望会。

 さて、4階屋上に上がると、晴れ間は広がっているのですが、ちょっとモヤがかかったような空。「目玉商品」はアンドロメダ銀河とホームズ彗星なのですが、街中で透明度が悪いという、かなり厳しい条件です。

 雲が切れた後、ホームズ彗星も導入しますが、これもまた、淡い。判別できる人は3人に1人といったところ。結局、8×30双眼鏡が一番分かりやすかったような。

 なんかもう、大変な観望会でした。
 星が見えただけでも、ありがたかったのですけれど。

2007年11月11-12日

 2日のスケッチの、直径で倍、面積比で4倍近く広がりました。
 目測でコマの直径が約25分くらい。ほとんど見かけの満月の大きさと一緒です。

 肉眼で見た光度は、ペルセウス座γ星(3.0等)より若干暗くなった印象。そろそろ神戸市街で肉眼で見るのは厳しくなってきました。見慣れた人なら見つけられますが、そうでなければ難しいでしょう。

 双眼鏡ならまだ街中でも余裕です。7倍程度の双眼鏡ならちょうどペルセウス座?星付近の散開星団と同じ視野。見た目で一番見栄えがよいのはこのクラスの双眼鏡ではないかと思います。

 スケッチは面倒なので、パス。
 外で描いている時間は10分程度なのですが、スキャナで取り込んで、白黒反転して、ぼかしたり何だかんだ、後処理で1時間くらいかかってしまうのです。でも描いた直後にやらないと、印象を忘れてしまうので、後回しにもできません。

  ローテーショナル・グラディエント処理をした写真を見てしまうと、もはや素人のスケッチなど出る幕もないのですが、それでも自分で描いてみると、集中して 観察しますので、漫然と眺めているより数段細かいところが見えてきます。前回スケッチをとったときとの違いも、望遠鏡を覗いてすぐに分かりますし。

 明日が月曜日でなければ、ゆっくり観察したかったのですけれども。

2007年11月19-20日

 少し透明度の悪い空でしたが、肉眼では確認できませんでした。望遠鏡を向けようと思ったら、曇っちゃいました。

2007年11月21-22日

 ホームズ彗星は、肉眼では完全に見えなくなりました。
 双眼鏡でも久しぶりに見たのですが、月明かりの下でも意外に見えていて、ペルセウス座アルファ星付近の散開星団に埋もれるようにぼんやり漂っているような姿です。7×50双眼鏡では中央部の集光が分からず、全体がボーっとしたつかみ所のない塊です。
 これだけ拡散してしまったら、どうやって光度の見積もりを出すのでしょう?

2007年11月29-30日

 ミラに振られたので、ホームズ彗星を見ました。
 すでに下弦近い月が昇っていましたが、5cm屈折で確認できました。巨大なM33? といったような拡散具合です。

 もちろん、神戸市内の我が家では、もはや肉眼では見えません。これ以上拡散すると、双眼鏡や広視界の望遠鏡でも厳しくなるかもしれません。しばらくは月の影響を受けにくくなるので、それに助けられるでしょうか。

2007年11月30-12月1日

 やっとこさ、晴れました。夕方、雲が広がってきたので今日もダメかと思ったのですが、日付が変わる頃になって、快晴。
 ホームズ彗星は、見えるのを確認するだけのようになってきました。ぼんやり広がっているだけで、もはや輪郭も構造も分かりません。

2007年12月3-4日

 寒冷前線が抜けて、強烈な北風が吹いています。
 冬型になれば晴れそうなものですが、このあたりは日本海側と瀬戸内側を隔てる脊梁山地がそれほど高くないせいか、あまりに風が強いとちぎれ雲がやってきます。透明度はよいのですが、今日はそんなちぎれ雲混じりの天気。

 ホームズ彗星。肉眼ではもはや無理。5cm屈折で10倍程度が一番よく見えます。1日の晩は25倍でもしっかり見えたのに、今日は20倍だと淡くてかえって見にくくなりました。

2007年12月4-5日

 11月末に曇りっぱなしだったので、また晴れちゃったよ、と思いながら外に出てしまいます。面倒なのやら嬉しいのやら。

 ミラとホームズ彗星だけ見て撤収。透明度は前日より若干落ちて、ホームズ彗星はてきめんに見にくくなりました。

2007年12月9-10日

 連日晴れた、なんて書いた次の日から3日連続の曇天。世の中そんなものです。

 日曜日の晩に久しぶりに晴れたのですが、夕方から急に頭痛。しばらくゴロゴロしていても直らないので、「明日は仕事だし、こりゃ薬に頼ってでも寝るしかないな」と頭痛薬を用意したら……直っちゃいました。錠剤を見ただけで効くとは恐るべし(違う)。

 そうなると、せっかく晴れたのだから。
 とりあえず望遠鏡を担いで、ミラとホームズ彗星だけ、ちゃっちゃと見て引き上げます。ホームズ彗星はまだ、なんとか5cm屈折で見えています。がんばってるなぁ。

(2008.1.14まとめ 福田和昭)

塩屋天体観測所観測記録室
このページの先頭へ戻る前のページへ戻る