塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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南極観測船「しらせ」(初代)(1)

(2005.10.2訪問/2006.6.15記)

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南極観測船/砕氷艦「しらせ」
基準排水量:11,600t
全長:134m、幅:28.0m
速力:19ノット
装備等:ヘリコプター3機搭載
定員:170名、就航:1982年

南極観測船「しらせ」

 アラートオレンジの船体で南氷洋を切り裂きながら突き進む、南極観測船「しらせ」。実は海上自衛隊の所属で、こちらでの正式呼称は砕氷艦「しらせ」。自衛艦としても大型の部類に入ります。

 日本の南極観測船は、映画「南極物語」にも登場する「宗谷」が初代。元はソ連向けの貨物船として建造されたのが、旧海軍の測量船となり、戦後は海上保安庁の灯台補給船を勤めていたところを南極観測に駆り出されました。その後、海上保安庁の巡視船となり、1978年まで働いています。現在は東京の船の科学館で一般公開中。

 二代目は「ふじ」で、こちらは1965年に就航。最初から砕氷艦として建造され、この艦から海上自衛隊の所属になっています。1983年の引退後は、名古屋港に係留、一般公開中。

そして三代目の南極観測船がこの「しらせ」です。

間近に見る「しらせ」

幅の広い船体

丸っこい船形がよく分かります

 「しらせ」が南極往復の旅路に着くのは、11月から3月の間。南半球が夏を迎えている間に昭和基地への補給を行います。

 残りの半年の間にドックでの整備を行い、その後は乗員の訓練をかねて、8月から10月にかけて日本各地を訪問航海します。2005年は10月1日・2日に高松に寄港。船内一般公開が行われました。

 神戸から高松までは、ジャンボフェリーで一直線。3時間40分の船旅です。高松東港から高松港までバスで移動。すると見えてきました。オレンジ色のニクイ奴……じゃなくて、オレンジ色の大型船。「しらせ」です。

 このオレンジ色は「アラートオレンジ」と呼ばれ、白一色の南極で周囲から識別できるように選ばれた色です。「宗谷」「ふじ」もこの塗色ですし、昭和基地の建築物の多くもこのオレンジで塗られています。

その名は「しらせ」

この船首で氷をかち割ります

 とにかく氷を割りながら進む船ですから、頑丈第一。丸っこい船首と幅の広い船体は、氷を割るためのもの。船体を氷に乗り上げて、重みで割っていくのです。ですから船首は横から見ると、斧のような姿にも見えます。

船首の倉庫

船橋から船首を見下ろす

 観測船といいながら、「しらせ」の本務は昭和基地への物資の輸送です。船内各所の倉庫やクレーンが、その任務を物語っています。

ブリッジ見学

 「しらせ」のブリッジはやたらと広いのです。向こうにいる人が小さく見えます。

ブリッジ内部

これがしらせの操舵輪

 設備は古いということはないのですが、決して最新型ではありません。建造から20年以上経っていますから、それなりに年季の入ったものです。操舵輪も、さすがに昔ながらの木の輪っか……ではないのですが、鉄製ながらも伝統的な形状を踏襲しています(ごく最近の船だと、ゲーム機のジョイスティックみたいなのもあるのです)。

船長席・一等海佐は赤

シンプルな副長席

 真っ赤なシートは船長席。階級によってシートの色が違うらしいのです。でも、ここまで派手にしなくてもいいような。

 副長席はふつうのシートでした。No.1とNo.2の椅子は、艦橋の右端と左端の両側に分かれて配置されています。

動揺計

いやです、こんな揺れ……
操舵輪の後ろの柵は転倒防止用 手前が磁気コンパス
奥はジャイロコンパス

 艦橋にはいろいろな計器がありますが、その一つが動揺計。船体の揺れ具合を表示するものです。この大きな船体が、50度も傾いたそうなのです。「海上自衛隊同様記録更新」って、そんな記録更新してうれしいですか(汗)? 立ってられないでしょう、そんなに揺れたら。

 というわけで、操舵輪の後ろには転倒防止用の柵が備えてあります。意地でも立って舵を握るのですね。

 「しらせ」のメインのコンパスはジャイロコンパス。万が一の停電に備えて磁気コンパスも装備していますが……こんな鉄だらけの艦橋で大丈夫なのでしょうか。というよりも、南極大陸間近に接近する「しらせ」の場合、南磁極と南極点の方位差が大きくなるので、どのみちあまり役には立たないでしょう。あくまで補助用ということです。

速力通信機

「一杯」と「全速」ってどう違うのでしょう?

 速力通信器。「しらせ」のスクリューは3つあるので、メーターも3つあります。港に泊まっているので、もちろん「停止」中。

レーダー

電子海図装置

 年代物のレーダーに、とってつけたような電子海図装置。「しらせ」が就航した1982年では、GPSはまだ実験段階だったと思います。ですから後付けなのは致し方ありません。

ヒーリング装置

ラッパ

 「ヒーリング装置」は決して疲れた隊員を癒すためのものではなく、燃料を左右のタンクに行き来させて、船体を揺らすためのものです。氷に閉じこめられたときに、ユサユサと体を揺すって、周囲の氷をどけるわけです。

 艦橋にあったラッパ。今でもこんな道具が現役なんですね。

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(2005.10.2訪問/2006.6.15記)

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