塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
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ウォークラリー「子午線を見つけよう」
明石市立天文科学館・天文春分祭

(2003年3月21日訪問/2003年4月3日記)

 明石市立天文科学館で開催された「天文春分祭(てんもんはるまつり)」。そのイベントの一環で、ウォークラリー「子午線を見つけよう」が行われました。

ウオークラリー・子午線を見つけよう

子午線をはかる

ドーム内での講演会

ドーム内での講演会

 ウォークラリーに連動して、「子午線を測る」と題した講演会が行われました。講師は古野電気の岡本幸雄さん。

 古野電気は船舶機器で知られているメーカーで、西宮市に本社があります。

 「えっと、今日はお子さんが多いですねぇ」ということで、当初用意した資料よりも、初心者向けのお話となりました。

 ……というか、それでも自分的にはちょうど良いくらいの内容でした。船舶用GPS機器を手がけているメーカーだけあって、GPSの歴史から仕組みから、実際に緯度経度が衛星電波を利用して測られる方法まで、くわしくお話しいただきました。

 身近なところではカーナビゲーションシステムなど、民間でも幅広く活用されているGPSですが、元はアメリカの国防総省が軍事用に開発したもので、このイラク戦争でも、ミサイルや爆弾の誘導などに使われています。もともとそういう性格のものだと知ってはいましたが、実際に戦火が交わされているときに聞くと、ものすごく複雑な気分です。

いざ出発!!

玄関前に集合 これがGPS端末

 玄関前に集合! いつのまにやら人だかり。

 この日使ったGPS受信機。表示部の大きい小型船舶用の機械です。

 講演会のあと、天文科学館の玄関前に集合。いよいよGPSをつかっての子午線探しに出発です。

 「あれっ!? 天文科学館て、東経135度子午線の真上を通ってるんじゃなかったっけ?」と思った方、それにはいろいろ事情があるのです。

 簡単にいってしまうと、天文科学館は「天文測量」で測定した東経135度子午線上に建っておりまして、GPSで測定する「世界測地系」の東経135度子午線とは、もともと違いがあるのです。さらに、国土地理院がこれまで発行した地形図に使っていた「日本測地系」とは、これまた違いがあるから驚きです。

 天文測量の経度は天体観測をしないと測れませんが、「世界測地系」と「日本測地系」はGPSの機械で測ることが出来ます。そんなわけで、子午線は一体全体どこに通っているのやら、実際に行ってみましょうということで、ウォークラリー「子午線を見つけよう」のはじまり、はじまり。

世界測地系の子午線

世界測地系の子午線通過地

 天文科学館を後にして、西へ、西へ。

 人丸山の中腹を抜けて、知る人ぞ知る名水「亀の水」へ降りてくる。

 といっても、人丸山。山というよりは丘のような所なので、遊歩道を歩いているうちに来てしまいました。

 やがて前方に人だかり。GPSの指す数字も、次第に135度ちょうどに近づいてきます。

 「8、7、6、5、4、3、2、1……」

 「ここだっ!!」

 とばかりに、GPS端末をのぞくと、数字がなんだか、135.00.000を挟んで行ったり来たり。

 実はGPS、カタログ上でも10mの誤差があり、実際はそれより少なくなるものの、5mほどの誤差があるものです。逆にいうと、同じ場所に立っていても、5mぶんくらいは数字が行ったり来たりしてしまうもの。

 そんなわけで、しばらくここで受信を続け、ちょうど真ん中のあたりを、世界測地系の「東経135度子午線」と認定しました。

 天文科学館から、約120mほど西の地点となります。明石市内で上の写真の場所を見つけたら、石畳の道の南縁に小さなマンホールがあります。

 何の標識も立っているわけではないのですが、ちょうどそのマンホールが目印になりますので、もし訪ねてみたいという方がおられたらご参考まで。

子午線の臨時ライン

 めでたく認定(?)された子午線に、臨時のラインが引かれました。

日本測地系の子午線は

日本測地系の東経135度

日本測地系の東経135度通過地点にて

 2002年3月末まで、国土地理院の地形図などで使われていたのが「日本測地系」です。もともとは単に「日本測地系」だったのですが、2002年4月から世界測地系を法律で日本の公式の測地系に定めたので、それまでの日本測地系を区別するために「旧」をつけて読んでいます。

 その日本測地系ですが、GPSの端末の設定で、表示を切り替えることが出来ます。

 世界測地系では  135度00.000分 の表示が
 日本測地系では 135度00.167分 になりました。

 ちなみに、この日使ったGPS端末は、船舶用のものなので、陸上で使われる「_度_分_秒」ではなく、「_度_.__分」と、分以下を小数点の数字で表示しています。海上ではこちらの方が一般的なのだとか。面白いですね。

 135度00.167分を、度・分・秒の表示に直すと、135度00分10.2秒になります。

 一緒に歩いてこられた古野電気の方が「理想的な測定値ですね」と笑っていました。

 さてさて、世界測地系の子午線から、日本測地系の子午線までは、さらに直線距離で250mほど西になります。宮本武蔵が設計したという庭園のあるお寺さんの前を通り、壁面日時計のある教会の前を抜け、てくてく歩いていくと、道路脇の木立の中に遊歩道が登っていく場所があります。

 って書いても地元の人じゃないと分からないと思いますが、その木立の中の遊歩道の中程に、日本測地系の東経135度子午線がありました。ありました、といっても、別に地面に線が引いてあるわけではありません。先ほどの世界測地系の子午線と一緒で、GPS端末で測定した場所を「ここだっ!!」と「認定」したわけです。

 記念のつもりで東経135度ちょうどを指したGPS端末の写真を撮ったら、シャッター押した瞬間に測定誤差で微妙にずれまして、134_59.999E になってしまいました(上の写真)。残念。

そんなわけで

世界測地系の東経135度通過地点のGPS表示

世界測地系の東経135度通過地点にて。右が世界測地系、左が日本測地系。
 世界測地系では 135度00.000分
日本測地系では 135度00.167分

 天文科学館玄関の「天文経度」、そしてGPSで測定した「世界測地系」と「日本測地系」の3本の子午線を歩いてきました。

 地図の上では分かっているつもりでも、実際にやってみると、なかなか面白いものです。ふだん知っている街の中で、こんなことが実感できるのは明石ならではでしょうか。

(2003年3月21日訪問/2003年4月3日記)

塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
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