塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
前のページへ戻る

ある子午線モニュメントの「前世」

(2007年7月7日訪問)

 神戸市西区の春日台公園に、東経135度子午線の上に建つ日時計があります。1985年に子午線モニュメントとして設置されたこの日時計。実は「前世」がありました。

その舞台は「ポートピア'81」

 株式会社神戸市の開発行政が絶頂期を迎えようかという1980年代。

 その嚆矢となったのが人工島ポートアイランドで開催された神戸ポートアイランド博覧会、通称「ポートピア'81」でした。

 このポートピア'81、何がすごかったかって、数字を見れば分かります。

開催年 入場者数 会場面積 会期 種別
大阪万博(日本万国博覧会) 1970年 64,218,770人 350ha 183日間 国際博覧会
花の万博(国際花と緑の博覧会) 1990年 23,126,934人 140ha 183日間 国際博覧会
愛・地球博(2005年日本国際博覧会) 2005年 22,049,544人 173ha 185日間 国際博覧会
科学万博つくば'85(国際科学技術博覧会) 1985年 20,334,727人 102ha 184日間 国際博覧会
ポートピア'81(神戸ポートアイランド博覧会) 1981年 16,103,000人 72ha 179日間 地方博
世界デザイン博覧会[名古屋市] 1989年 15,180,000人 56ha 135日間 地方博
YES'89(横浜博覧会) 1989年 13,330,000人 69ha 191日間 地方博
長崎さるく博'06 2006年 10,079,000人 212日間 地方博
よかトピア(アジア太平洋博覧会)[福岡市] 1989年 8,230,000人 171日間 地方博
淡路花博 ジャパンフローラ2000 2000年 6,945,000人 96ha 184日間 国際園芸博
浜名湖花博(しずおか国際園芸博覧会) 2004年 5,440,000人 187日間 国際園芸博
ぎふ中部未来博 1988年 4,070,000人 73日間 地方博
海と島の博覧会・ひろしま 1989年 4,000,000人 114日間 地方博
まつり博・三重(世界祝祭博覧会) 1994年 3,510,000人 108日間 JAPAN EXPO
沖縄国際海洋博覧会 1975年 3,490,000人 183日間 国際博覧会
南紀熊野体験博 1999年 3,100,000人 144日間 JAPAN EXPO

 地方博の中ではぶっちぎりの成功を収めています。この大成功が、バブル期の地方博ブームにつながるのですが、神戸以上の成功例はありません。もっとも、博覧会と開発をセットにする手法が通用しなくなったということもあるのでしょうけど。

※世界デザイン博は赤字補填で裁判沙汰になり、横浜博は入場者数の数合わせのため会期末に無料招待券を大量配布。ポートピア'81後に計画された地方博が本番を迎える'80年代後半には、博覧会は斜陽を迎えていたのです。

いざポートピア'81(模型)

 さて、件の日時計ですが、元はポートピア'81のパビリオン「川鉄地球館」前に設置されていました。

 とはいえ、博覧会のパビリオンですから、会期後には撤去され、現地は跡形もありません。しかし、強い味方があるのです。波止場町TEN×TENに出現したポートピア'81会場模型。博覧会オープン時の様子を1/500で再現してあるというではありませんか(情報提供:DAIさん)。

 この模型、元はポートアイランドビル内のポートアイランド記念館(2001年閉館)にあったのですが、その後は遊園地のポートピアランドに移設され、さらにそれも2006年に閉鎖されるという、流転の人生を送っています。

 ということで、行ってまいりました、波止場町TEN×TEN。建物中央の喫茶店のそばに、その模型が置いてあります。かなり精密な作りです。

 ポートピアホテルや国際会議場のあたりは、今とほとんど変わっていないのが伺えます。

川鉄地球館

 「川鉄地球館」も、もちろん模型に再現されています。超巨大地球儀で分かりやすい建物です。地球儀の内部は3面スクリーンとサブスクリーンで、大型映像の上映をしていたようです。

 そして日時計はパビリオンの外にあったというのですが……

 模型でもきちんと再現されていました。模型になった子午線標識は、この日時計と明石市立天文科学館くらいではないでしょうか。

 上の2枚の写真は、南が上になっているのですが、これで「?」と思った方は日時計通。実はこの模型、影をつくる三角板の南北が逆になっているのです。惜しかった! でも1/500という小さなスケールで、よくつくったものだと思います。

 面白いのは日時計と並んで設置してあったフーコーの振り子。地球の自転を証明する実験として、吹き抜けのある科学館にはよく置かれているものですが、日時計とセットというのが秀逸です。

 それにしても巨大な振り子だと思ったら、振り子の長さが30mあったそうです。で、屋外で海に近いので、風の影響を受けやすくて困ったのだとか(日本のフーコー振り子調査リスト)。

 川鉄地球館のものは会期後撤去されましたが、神戸市立青少年科学館にフーコーの振り子が展示してあるので、地球の自転を実感してみたい方は、足を運ばれてはいかがでしょうか。

ポートピア残映

 模型の中のUCCコーヒー館は、現在、常設のUCCコーヒー博物館になっています。建物の外装がまるで違う姿なのでそれとは分かりませんが、骨組みは当時のパビリオンのものを活かしたものです。

 それからパビリオンの神戸プラネタリウム館(右写真の赤い円筒状の建物)は、神戸市立青少年科学館のプラネタリウムとなり、東隣の神戸館も改築されて同科学館の本館になっています。

会期中の日時計写真

 カメラマンの井川宏之さんにポートピア'81会期中の川鉄地球館の写真を提供いただきました。

 写真で見ると、春日台公園の子午線モニュメントの日時計と同一だということがよく分かります。もしかしたら台座部分は多少手を加えられているかもしれませんが、影をつくる三角板と文字盤の数字部分は当時のものが活かされていると思います。

 春日台公園に移された日時計は、国土地理院による天文測量に基づく子午線上に設置されたそうです。ここまで至れり尽くせりの「来世」を送るとは、なかなか幸運の星のもとに生まれた日時計といえるかもしれません。

(2007年7月7日訪問)

塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
このページの先頭へ戻る前のページへ戻る