塩屋天体観測所プラネタリウム・天文台訪問記
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南極観測船「しらせ」(二代)(1)

(2011.9.24訪問/2011.9.25記)

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南極観測船/砕氷艦「しらせ」
基準排水量:12,650t
全長:138m、幅:28.0m
速力:19.5ノット
装備等:ヘリコプター3機搭載
定員:乗組員179名・観測隊員等80名、就航:2009年

日本の南極観測船

 日本の南極観測船は、海上保安庁の「宗谷」が初代。戦前に建造された砕氷船が、1956〜1961年の6次に渡って南極観測に従事。後に海上保安庁の巡視船として生涯を終え、現在は東京・お台場に係留されています。

 二代目「ふじ」から海上自衛隊の艦で、1965〜1983年(第7次〜24次)の18回、日本と昭和基地を往復しました。引退後は、名古屋港に係留、一般公開されています。

 三代目は先代「しらせ」。基準排水量11,500t(全長134m・全幅28m)の大型艦で、長らく海上自衛隊最大の艦でした。1983〜2008年(第25次〜49次)の25回、南極を往復。引退後はウェザーニュース社が購入し、船橋港に係留され、「SHIRASE」と改名されて一般公開されています。

 2011年現在運行されているのが現在の「しらせ」。2009年に就航し、第51次観測隊からの輸送任務に当たっています。基準排水量12,650t・全長138mと先代「しらせ」より一回り大きくなりました。

 なお南極観測船は文部科学省の予算で建設されますが、所属・運用は海上自衛隊が行っています。海上自衛隊では「砕氷艦」として分類されています。

「しらせ」が神戸にやってきた

 「しらせ」が南極への旅路に着くのは、11〜3月。南半球が夏を迎えている間に昭和基地への補給を行い、残りの期間はドックでの整備と、乗員の訓練を行います。毎年、8〜10月の間は訓練を兼ねて日本各地を訪問し、2011年は訪問先の一つに神戸港が選ばれました。

 神戸港での一般公開が行われたのは9月24・25日。外航客船が寄港する新港第四突堤への接岸です。

神戸港第四突堤の「しらせ」

ポートターミナルから

 旅客ターミナルの「ポートターミナル」に到着。ロビーの窓全面に、「しらせ」の艦橋とファンネル(煙突)が見えています。これは大きい。

南極観測船「しらせ」 護衛艦「こんごう」 客船「ふじ丸」
全長 134m 161m 167m
全幅 28m 21m 24m
喫水 9.2m 6.2m 6.6m
基準排水量 12,650t 7,250t (総トン数23,235)

  「しらせ」の船体は丸っこくてずんぐりむっくり。似たような大きさの船を並べると、高速性能を要求される護衛艦は細身で、「しらせ」はぽっちゃり。外航客船は中間くらいになります。氷を割りながら進む船ですから、頑丈第一に造られています。

幅広で丸っこい「しらせ」

シャープな「こんごう」「いかづち」

 同じ埠頭に護衛艦の「こんごう」「いかづち」も入港していたのですが、船型の印象もまるで違います。また護衛艦は視認性を低くするためにグレーで塗られていますが、「しらせ」は雪氷に閉ざされた南極での視認性を高めるためにアラートオレンジと呼ばれる鮮やかなオレンジに塗られています。「宗谷」以来の伝統の色です。

氷を割って「しらせ」は進む

氷の上に乗り上げるための丸い船首

丸穴は融雪用散水装置

 「しらせ」は、厚さ1.5mまでの氷なら、3ノット/hの速度で氷を割りながら進むことができます。それ以上の厚さの氷の場合は、一旦200〜300m後進し、そこから全速前進。氷の上に船首を乗りあげて、船の重みで氷を割ります。「チャージング」と呼ばれる方法ですが、一度の航海で2000回も行われるそうです。

 2代目「しらせ」で新たに設けられたのが、融雪用散水装置。これで氷を溶かすのかと思っていたら、海水を散布して氷の上の雪を溶かすのが目的だそうです。氷上の雪はクッションの役目を果たし、砕氷の効果を減じてしまいます。この対策として設けられた装置ですが、果たして効果の程やいかに。

 船体の氷と接する部分は全面的にステンレスグラッド鋼が巻かれています。船は塗装をしないとすぐに錆びてしまうのですが、砕氷を行う運用上、塗装がすぐに剥がれてしまいます。剥がれた塗装は海洋汚染の原因にもなりますし、メンテナンスも大変です。ステンレス仕上げは高くつくのですが、長期的にはメリットが見込めるとして採用されました。散水装置の穴の下の方、オレンジの塗装がなく、灰色のステンレス地肌が見えています。

上部見張所

見晴らしはよさそう

 ブリッジの上、マストの中ほどに設けられた上部見張所。氷海でルートを決めるためには、先の先を確認しなければなりません。見張所の下には巨大なサーチライトがついています。見晴らしはよさそうですが、揺れそうな場所です。

貨物船としての「しらせ」

船首の倉庫(右側)

船橋から船首を見下ろす

 観測船といいながら、「しらせ」の本務は昭和基地への物資の輸送です。南極での生活は、外部からの補給なくしてありえません。また冬期は外部と隔絶された地域になるため、夏の間に行われる「しらせ」による補給が、南極の生命線なのです。

 船首には大きな倉庫とクレーン2機。雪上車などの大きな貨物が入ります。

中央がコンテナセルガイド

ここにコンテナを積みます

 2代目「しらせ」で新設されたのがコンテナセルガイド。ファンネル(煙突)と航空機格納庫の間にコンテナを積むためのスペースが設けられています。積んだコンテナが動かないよう方形の骨組みが組まれています。左右両舷で56個のコンテナを積めます。一般的なコンテナ船では20フィートコンテナを用いますが、「しらせ」のコンテナは、日本国内の鉄道で使われているものと同じ12フィートコンテナ。

 コンテナを用いることで荷物の口数が大幅に減り、荷役の効率化を実現しています。

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(2011.9.24訪問/2011.9.25記)

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