塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
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青垣・氷上の標識を訪ねて
氷上郡青垣町・氷上町

(2002年7月28日訪問)

 JR福知山線・石生駅に降り立ったのは9:09。神戸を出てから3時間ほど。同じ県内とはいえ、意外なくらいに時間がかかる。

 今回の目的地は青垣町と氷上町。

 青垣町には鉄道が通っていないし、氷上町もレールが街の東端をかすめているだけだから、移動は車に頼らざるを得ない。もっとも俺は自動車を持っていないので、必然的に車=自転車ということになる。輪行袋に入れてきた自転車を組み立てていると、ベンチに座っていた女の子が珍しげに作業の様子を眺めていた。

 ここは昨年の子午線縦断の自転車旅行の、後半戦の出発地点でもある。景色もなにげに懐かしい。照りつける日差しの下、陽炎のぼる道路に向かって、ペダルを踏み出した。

未踏の子午線モニュメント

「いきものふれあいの里」子午線モニュメント

「いきものふれあいの里」の子午線モニュメント

 青垣町のほぼ中央部、国道427号の「小倉交差点」に東経135度の子午線モニュメントが建っている。これは街の案内図にも載っているもので、青垣町を通過する多くの人が目にしているだろう。

 ところがこの他にもう一つ、青垣町には子午線モニュメントがあるという。子午線を通過する市町が共同でつくった観光案内のパンフレットに、「青垣いきものふれあいの里」という所に子午線のモニュメントがあると書かれているのだ。ところがこのモニュメント、他の資料にはまるで顔を出さず、インターネットの検索にも引っかかってこない。

 「ほんまにあるんかいな」と思いながらも、こうなれば行って確かめるより他にない。

 道の駅あおがきで休憩したあと、小倉交差点を抜けて、北へ。

 青い山に穂を出し始めた緑の田んぼ。景色はまことに気持ちよい。「いきものふれあいの里」への道は川と水田の間を抜け、やがて山裾を巻く小道となる。最後の最後で坂道が待っているのだが、そこは一気にかけのぼる。と書くといかにも快調に走っているようだが、実際は強烈な日差しと道路からの照り返しで、早くもバテバテ。着いた途端に一目散に休憩所に駆け込んで、クーラーの効いた室内でアイスを頬張ったのだった。

 肝心の子午線標識は、駐車場からいきものふれあいの里の展示館へ向かう階段を上りきった場所にあった。黒御影石製のシンプルなもので、案外あっけなく見つけてしまった。

登山道の子午線

登山道案内板 子午線ポイントの標識

「子午線コース」の表示もある登山道の案内板

山腹にある「子午線ポイント」

 「丹波少年自然の家」からの登山道に「子午線コース」というルートがあるのを知ったのは出発前日のこと。もっとも丹波少年自然の家がどこにあるのかも知らなかったし、それ以上調べることもなく、そのままにしておいた。

 ところが青垣町に来て、この町内に「丹波少年自然の家」があることを知った。しかも子午線からの距離は1kmほどの場所。急遽予定を変更して、脇道へ向かってペダルをこぎ出した。

 この自然の家は以外に大きな施設で、研修施設の本館やグラウンドの他にキャンプ場まで完備している。パーマネント(固定式)のオリエンテーリングのポストもあって、学生時代に競技オリエンテーリングをしていた身としては、ちょっと懐かしかった。

 登山道の案内看板には確かに「見晴らしの丘・子午線コース」というのがあった。詳しい地図は事務所にあるというので、寄ってみると、受付の女性が館のガイドブックの登山道案内のページを見せてくれた。該当コースのページを読んでいると、なんと、コース上に「子午線ポイント」というものがあるらしい。

 「このページ、コピーしてもらえますか?」

 と訪ねると、ちょっとビックリしたような雰囲気で「この道けっこう急ですから、ハイキングって感じじゃないですよ」と言われてしまった。たしかにこちらはTシャツに短パン。とても山を登る格好ではないので、あきれられても仕方がない。もっとも目指すは山頂ではなく、ふもとから20分ほどの「子午線ポイント」だ。ま、のんびりいきますから、ということで、地図を複写して頂いた。

 登山道の入り口は本館の裏手。子午線ポイントには正規のコースを逆からたどる。最初は砂利道の林道だが、途中から人一人の幅の小径になって、勾配も予告通りにきつくなって、坂道をヘロヘロと歩き続けた。林が比較的手入れされていたので、短パンでもヤブが気にならないのがありがたかった。

 一段と坂がきつくなった頃、沢を巻くように道が曲がった場所に「子午線ポイント」があった。林の中で見通しも効かない場所で、いったいどんな方法で子午線の位置を確認したのか不思議に思った。後で事務所で確認したら「10年ほど前に建てた」とのことだが、当時は民生用のGPS受信機も安価なものではなかったはずだし、地形図から計測したとすれば、相当な根性である。

再探訪・朝坂の子午線標識

 2002年6月〜7月半ばまで、明石市立天文科学館で「子午線標識写真展」が開催されていた。

 実は自分も何点かの写真を出させていただいていたのだが、そのとき展示されていた写真の中で、一ヶ所だけ、自分がまだ行っていない標識が残っていた。氷上町南部、朝坂にあるはずの子午線標識である。

 実はこの朝坂の標識、町のホームページのガイドマップにあるはずの場所になく、2001年8月に自転車で子午線縦断をしたときも、一時間以上周囲を探し回って、結局「これ」と断定できるものを見つけられなかった。代わりに国道沿いの表示塔で我慢したのだが、なんだか釈然としない気持ちだけが残っていた。

 その後、今年になって先述の写真展の打ち合わせの折り、天文科学館の西海さんに、朝坂の子午線標識の写真を見せていただいた次第。 その辺りは自分も探し回ったはずなのだが、見落としていたのだろう。今回はリターンマッチというわけだ。

 結果を先に書くと、再挑戦むなしく、標識を探せないまま帰ってきた。

 子午線の通っている辺りを念入りに見てはいたのだが、結局分からないまま。夏の盛りで青草が生い茂っている時期なので、もしかしたらヤブに埋もれてしまったのかもしれない。地元の人に聞こうと思っても、それほど知られた存在ではないだろうし、そもそも夏の午後の暑い時間帯に、外を歩いている人などいないのだった。

 天文科学館にあった写真は10年以上前のものだったが、果たして今も健在なのだろうか。

※追記 その後、2000年に撮影した子午線標識紹介のVTRを見せていただき、地形図と照らし合わせながら分析(!?)したところ、やはり国道175号線沿いに標識があるようです。(2002.8.25)
※追記2 分析結果に基づき、2003年9月にリターンマッチを決行。無事、発見に至りました。

ただいま工事中・黒田庄の子午線標識

工事中の黒田庄町モニュメント

突然工事中の黒田庄町のモニュメント

 白く塗られたステンレス製のモニュメントがある黒田庄町。ところが今回、その美しいモニュメントが異様な状態に置かれていた。国道側は工事用のフェンスで覆われ、モニュメントへの測道のアスファルトは剥がされ、案内板は地面に寝かされ倒れたまま。モニュメントも根本が露出して元の場所から心なしか動いた位置にある

 何事が起こったのかと思ったら、付近一帯の盛り土工事の施工中だったらしい。ここは加古川に隣接した場所で、堤防に沿った一帯をかさ上げして、洪水に負けない「スーパー堤防」状態にするそうだ。もっとも子午線モニュメントがどうなるかは工事の看板に書かれていなかったので、ちょっと気になるところではある。何事もなければ盛り土したあと、元の場所へ戻すのだろうが、なにせ現在、日本測地系から世界測地系へ経緯度の基準が変わったばかり。この際とばかりに世界測地系の子午線に移してしまっても、と考えても不思議はないのだが、さてどうなることやら。

日本のへそ・西脇市

 西脇にたどり着いた頃には、すでに夏の日も傾き始めていた。時刻は16時。早く着けば経緯度科学館を見学しようと思っていたのだが、昼間の観望会もすでに終わっていて、今回も断念。2001年夏も閉館後に着いて開館前に発ってしまったので、つくつく巡り合わせが悪い。ここの81cm反射望遠鏡、噂によると昼間でもアルビレオが伴星ともども見えるのだそうだ。一度ゆっくり覗いてみたいものである。

 経緯度科学館の奥には、晴れて正式な「日本のへそ」に昇格したGPS測量によるモニュメントがある。

 元気だったら登ってくるところだが、夏の真昼に80kmも自転車で走り回ったおかげで、すっかり疲れ果てていた。ので、今回は下から見上げて敬意を表するだけにした。

 グリニッジから時差+9時間。東経135度子午線には、まだまだ多くの謎が眠っている……わけはないのだが(探検隊じゃあるまいし)、どうやら子午線の旅は、いましばらく終わることはないらしい。

(2002年7月28日訪問)

塩屋天体観測所東経135度子午線を訪ねて子午線道中膝栗毛
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