塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記
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2004年5月31日、茨城・つくばのJAXA(宇宙航空開発研究機構)筑波宇宙センターを訪問しました。
筑波宇宙センターには受付を通れば常時見学できる展示室と、事前申込制のツアー見学があります。以前は団体でないと申し込みできなかったのですが、現在は1人でも参加できるようになっています。電話で予約状況を確認し、メールで見学申込書を送付。朝一番の回しか空きがなかったのですが、けっこう人気があるのでしょうか。
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1日5回のツアーがあり、基本的には参加者まとめてバスに乗って、宇宙センター内の施設を見学します。団体の場合は、乗ってきたバスに案内者が同乗して、そのまま宇宙センター内をまわることもあるそうです。
まず管理棟の見学案内係で受付。見学者バッジ(といいながらシールです)をもらって、服の上に貼り付けます。そのあと視聴覚室でJAXAの広報ビデオ上映。JAXAの事業や、筑波宇宙センターの活動の概要が紹介されます。
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車で移動して、最初に着いたのは展示室。ここは事前申し込みなしでも見学できる場所です。昔はこぢんまりした感じだったのですが、いつのまにやら拡張されて立派になっていました。
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ADEOS-II試験機 |
断熱材はマジックテープで留めてある |
展示室入口のすぐ右側にあるのが「ADEOS-II(みどりII)」の試験機。いわゆるエンジニアリングモデルです。予定された動作をきちんとするかどうかテストするために、実物同様に作られたものです。てんこ盛りに並んでいる人工衛星、みな本物の試験機というのがすごいところ。
ちなみにADEOS-IIはものすごく大きい。マイクロバスを縦に置いたような大きさです。
表面に張ってある金箔のようなものは断熱材で、黄色のシートにアルミを蒸着させたものを何層も重ねているものです。みなさん同じ質問をされるのか、案内の広報の方が手元から実物を取りだして触らせてくれました。
この断熱材、実はマジックテープで留めてあります。地上でふだん使っているものよりは強力らしいのですが、宇宙空間は雨風がないので、これで十分なのだそうです。
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旧NASDA系のロケット群 |
こちらはJAXAのロケットの模型。
左から、N-I、N-II、H-I、H-II、J-I(1号機)、H-IIA、です。1/20の模型ですが、それでもH-IIなどは2m以上あります。
筑波宇宙センターはもともと旧NASDA(宇宙開発事業団)の施設なので、旧ISAS(宇宙科学研究所)系のロケットは置いてありませんでした。そのうち追加されるかもしれません。
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LE-7(H-II・第1段)エンジン |
LE-5(H-I・第2段)エンジン |
こちらは日本が独自に開発した液体水素・液体酸素を用いたロケットエンジン。いずれも実際に燃焼試験に使われた実物で、左がLE-7、右がLE-5です。
LE-7はH-IIの第1段に使われたもの。ものすごく複雑な構造をしていて、よくこれが極低温の液体水素や超高温の燃焼ガス、さらには動作時の振動に耐えられるものだと感心します。実際はH-IIの8号機でターボポンプの羽根が壊れてしまったわけですが、海底から引き上げたエンジンも保管されていて、9月の宇宙の日の一般公開などでは展示されるそうです。現行のH-IIAロケットでは、全体の構造を見直し、部品点数も減らしたLE-7Aエンジンが使われています。
右側はLE-5エンジンで、H-Iの第2段に使われたもの。改良されたLE-5AがH-IIの第2段に、さらに改良されたLE-5BがH-IIAの第2段に使われています。
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きく・うめ・ひまわり・あじさい・ふよう |
さくら・ゆり |
人工衛星コーナーには、とにかくたくさんの衛星が並んでいます。
左の写真は手前から、ETS-I(きく)、ISS(うめ)、GMS-1(ひまわり)、EGS(あじさい)、JERS-1(ふよう)。
右の写真は左から、CS(さくら)、BS-2(ゆり)。
この頃の衛星は花の名前を付けているので、名前だけ並べると花壇のようです。
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おりひめ・ひごぼし |
みどり・かけはし・みどりII |
左の写真のETS-VIIは、2体の衛星(おりひめ・ひごぼし)に分離して、ドッキングや切り離しの試験を行いました。
右の写真はいずれも大型衛星のADEOS(みどり)、COMET(かけはし)、ADEOS-II(みどりII)。説明の方にあえてつっこみは入れませんでしたが、みどりとみどりIIはともに太陽電池パドルの破損で運用中断、かけはしは静止軌道投入失敗の憂き目にあったという悲運の衛星群です。
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ひまわり |
基本的には試験モデルを展示してあるのですが、このGMS-1(ひまわり)だけは本物です。といっても本物のひまわりは軌道上。どういうことかというと、初代のひまわりは、最初の気象衛星ということで、フライトモデルを2つ作って片方を予備機にしたのだそうです。ひまわりは無事に打ち上げに成功し、運用も順調に進んだので、舞台に上がらずに済んだ予備機はここで余生を送っているというわけです。
「(寿命を終えた)『ひまわり5号』の代わりに打ち上げちゃったらいいんじゃないですか」と聞いたら「同じシリーズでも中の部品が古くて、今では使えないんです」とのこと。たしかに初代ひまわりは1977年の打ち上げですから、ほとんど30年前の機械ということになります。
「次の気象衛星は、(航空管制の機械も積んだ)多目的衛星になるので、『ひまわり』の名前じゃなくなりそうなんですよね」と広報の方。天気予報でおなじみの名前だっただけに、ちょっと寂しいような気もします。
※結局「ひまわり6号」になりました。(2005.6.7追記)