塩屋天体観測所|プラネタリウム・天文台訪問記
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宇宙ステーション試験棟は、JAXA筑波宇宙センターの敷地の中でも、正門から一番奥まったエリアにあります。
ここでは国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の組立や試験を行っています。組立試験設備の部屋を上の階から見下ろす形で見学します。
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宇宙ステーション試験棟の組立試験設備全景 |
上の写真はガラス越しに組立試験設備の部屋を撮影したもの。3枚分の写真を合成しています。
右側の黄色い円筒が「きぼう」船内実験室、その奥の銀色の円筒が船内保管室。中央左のビニルハウスの中身が船外実験プラットフォーム、左奥角にあるのが船外パレット、画面から切れてしまっている左隅にロボットアームがあります。
このうち船内保管室と船外実験プラットフォーム・船外パレットがフライトモデル。つまりこののち宇宙に打ち上げられる本物です。船内実験室のフライトモデルはすでにNASAに運び込まれていて、ここにあるのは試作品のエンジニアリングモデル。
数年後には宇宙を飛んでいるはずの本物を目の当たりにして、さすがにドキドキしてきます。
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「きぼう」模型(展示室にあったもの) |
なにがどのパーツになるのか、模型で復習しておきましょう。
「きぼう」は全体で6つのパーツに分かれています。このうち「船外実験プラットフォーム」「船外実験パレット」「衛星間通信システム」はひとくくりにして「船外実験プラットフォーム」と紹介されることもあります。大きさからすると、たしかに船外実験パレットや衛星間通信システムは船外実験プラットフォームに一体化しているようにも見えます。
ロボットアームも全体からすると大きな部品ではないのですが、船外実験の要となるパーツだけに別格扱いなのでしょう。
「見てください、船内保管室の所で作業している人がいます。この部屋に人が入っていることは多いんですが、実際に作業しているところはなかなか私たちも見ないんです」
と広報の方。
「展示室の『きぼう』のモデルにも黄色い取っ手がついていましたが、それと同じ役割の取っ手をつけているみたいですね。」
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船内実験室エンジニアリングモデル |
船内保管室フライトモデル |
船内実験室のエンジニアリングモデルが黄色に塗られているのは、腐食防止、要は「錆止め」だそうです。フライトモデルは船内保管室と同じ、銀色とのこと。ちなみに銀色の正体はアルミ合金だそうです。船内実験室の上面にハッチがありますが、ここに船内保管室が接続されます。船内実験室の円筒の輪切り部分に3つの穴がありますが、大きな穴は船外実験プラットフォームへのエアロックです。
船内保管室の外周部には、なるほどたしかに取っ手が付いていますね。
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船外実験プラットフォームフライトモデル |
船外パレットフライトモデル |
こちらは船外実験プラットフォームで、宇宙空間に曝させた環境で実験を行う部分。展示室の模型で、「寝ている」宇宙飛行士が船外活動をしているところです。この部屋全体がクリーンルームになっているのですが、ことさら厳重にビニルハウスで養生してあるのは、温度を保って試験をしたりするためだとか。実際の運用では外に放りっぱなしになる部分ですが、あくまで慎重に作業が進められています。
船外パレットは船外実験プラットフォームの先端部に取り付きます。
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ロボットアームエンジニアリングモデル |
こちらはロボットアーム。この写真ではなんだかパイプを組み合わせただけに見えますが、これもまた精密機械です。フライトモデルとは言っていなかったので、エンジニアリングモデルなのでしょう。
私がつくばにいた頃(1990年代半ば)に、「きぼう」の部品を搬入するため、夜中に市街地の道路を封鎖するという出来事がありました。話を聞いたら「たぶん名古屋からここに運び込んだときですね」とのこと。長いつくばでの日々を終えたパーツは、やがてNASAへ送り出され、宇宙へ旅立つのを待ちます。
2003年4月に船内実験室部分がNASAへ旅立ちました。
筑波宇宙センターから出て、土浦高架道を抜け、たどり着いた先は土浦新港。その先はなんと霞ヶ浦を湖上輸送です。
地上を走っているときの制限速度は時速2km。歩いた方が早い……
「どうせ打ち上げるときにものすごい負荷がかかるのに、そこまで慎重にしなくてもいいんじゃないですか」と聞いたら、
「道路の幅を目一杯取ってしまうので、電柱や電線や信号機に引っかかったりしないよう、そちらの安全対策の意味もあるんです」とのこと。筑波宇宙センター構内は電線は地中化されているが、一般道だとそうもいかず、とにかく慎重に運ぶそうです。
「筑波宇宙センターの出口も、一回では出られなくて、ギリギリの幅で切り返してやっと出るんですよ」
……それくらい考えて設計しときましょうよ(苦笑)。ねぇ。
※輸送の顛末がJAXAサイト内に紹介されています。
フライトモデルをすべて搬出した後は、またエンジニアリングモデルが運び込まれることになるらしいです。後から調べたのですが、エンジニアリングはその後、地上でのシミュレーターとして使われるのだとか。確かに現物とほとんど同じものですから、有効活用には違いないですね。
国際宇宙ステーションは条件が合えば地上からもその姿を見ることが出来ます。
「私もここで仕事していますけど、去年の秋に初めて見たんですよ。やっぱり感動しましたね。ここで関わったものが、ああやって宇宙を飛んでいくのかと思うと……」
そんな話をしながら、宇宙ステーション試験棟を後にしたのでした。