塩屋天体観測所観測記録室
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2009年7月20日〜25日 皆既日食クルーズ(2)

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2009年7月21日 太平洋上

 航海2日目。前の日に念のため酔い止めを飲んで寝たせいか、ぐっすり寝ました。起きたらとっくに朝食が始まる時間。あわてて身繕いをしてダイニングロビーへ向かいます。和洋どちらかを選べるのですが、とりあえず和食を選択。

9:00 公開講座

 主催が兵庫県立大学だけあって、船上ではしっかり公開講座の講義が行われます。21日午前に2コマ、午後に2コマ、22日が日食観測の実習。全部出席すると修了証が出るという段取りです。

 午前中は黒田武彦さんによる「黒い太陽の神秘に迫る」と、兵庫県立人と自然の博物館の先山徹さんによる「父島の地質と小笠原のでき方」。22日の日食観測と、23日の小笠原上陸の予習的なカリキュラムです。

 先山さんの話の終わりには、父島上陸時に枕状溶岩を観に行く臨時のオプショナルツアーが発表されました。それすごく行きたいんですけど、別の予定を入れてしまった後でした。残念。

10:30 観測予行

 公開講座の午前のコマの後には、「観測予行」があります。事前に観測場所を割り当てて、確認するための時間です。

 大きな船とはいえ、空を見上げることのできるデッキは限られてしまいます。そして事前に一人あたりの割当面積は畳一畳分くらい、持ち込めるのはカメラ三脚程度と通知を受けていました。

 船尾側のスポーツデッキが一番広い場所で、ここで最大の人数を収容します。主に一般参加者向け。

 船首のデッキは主にファミリー向け。

 7Fサンデッキは前後に構造物、左右にアクリルガラス壁と、低空の視界は遮られるのですが、風の影響は受けません。撮影メインの重装備参加者向け。

 8Fトップデッキは、マストやレーダーアンテナがそびえる一般人立入禁止区画で、ここを日食当日のみ開放します。船の最上部で見晴らしも抜群、魚眼レンズの全天撮影もOKと、観測条件は最上級。でも通路は狭い、階段は急、手すりは低い、日陰はない、風は吹いたら吹きさらし、トイレは遠い……と過酷な環境も第一級。ここには主に同好会など強者のグループが割り当てられます。

 明石の星の友の会も8Fトップデッキを割り当てて頂いたのですが、シルバー層や子連れのファミリー層やシルバー層が多いグループなので、全員一緒は厳しそう。そこで各自の判断でバラバラに散って観測することになりました。

 私も8Fトップデッキの下見に行ったのですが、

オリエンテーション通り、通路は狭いし、階段は狭いし、前の日に雨が降って足場は濡れているし、床が鉄板張りなので晴れたら暑そう、いや熱そうだし……いろいろ考えてここは撤退しました。

 トップデッキから降りた時点では、他の観測場所もあらかた人数の割り振りが終わっていたのですが、最終的に明石の星の友の会のうち、私を含めた5人は8Fのプールサイドを割り当てて頂きました。

 参加者全員が日食を見るために来ているので、場所の割り振りは真剣です。機械的に割り振らず、あえて現場で希望を容れて調整する方法を採られただけに、スタッフのみなさんの苦労は大変なものがあったと思います。

 トップデッキから見上げた、日食前日の空。姫路出港以来、ずっと曇り空だったのですが、少し薄日がさしていました。

 結果的にどの観測場所も余裕を持った状態で収まったようです。

14:00 公開講座

 午後の公開講座は、西はりま天文台の石田俊人さんによる「太陽の正体をさぐる」と、兵庫県立人と自然の博物館の大谷剛さんによる「海洋島の動植物−特異さと脆さ−」。午前同様、日食観測と、小笠原上陸の予習を組み合わせた内容です。

 実はこの日、ふじ丸は黒潮を突っ切っていました。これが、揺れるんです。

 船の揺れは、気持ち悪くなったり、眠くなったり、周期によって身体に及ぼす影響が違うのですが、よりによって午後の公開講座の時間が「眠くなる揺れ」で、それはもう、大変でした。

 講座の最後のオリエンテーションでは、黒田さんから明日の天気予報の発表。「小笠原方面はいい方向に向かっている」との発表に歓声。でも本当かなぁ。出航前の天気予報では、むしろ奄美の方が晴れそうだったのに。

16:30 サイエンストーク

 朝から人の話ばかり聴いていて、まだ聴くかという感じですが、こちらは参加自由のサイエンストーク。

 この日は理化学研究所の望月優子さんと、児童文学者の寮美千子さん。日替わりで面白そうな人が出てくるので、ついつい足を運んでしまいます。

情報隔離

 携帯電話の電波が届くのは日本本土の沿岸のみ。船内に気軽に使えるネット環境はなく、海域によっては衛星放送すら受信できません。周りに人がたくさんいるのに、情報から切り離されるのは、なんだか不思議な経験です。慣れればどうということはないのですが、航海2日目だと、まだ慣れるうちには入りません。

 そして天気予報を知ることもままならないというのは、航海の目的が目的だけに、もやもや感が募ります。

予想天気図

 2Fのエントランスロビーにいつになく人だかり。肩越しに覗くと、日食当日22日の予想天気図が貼り出されていました。なんとも絶妙なタイミング。

 梅雨前線が南下して、中国南部から九州・四国南岸・本州東部をなめるように伸びています。うわぁ……鹿児島を前線が通るってことは、種子島・屋久島は厳しいかも。奄美は大丈夫か。トカラはどうだろう。各地に知人が散っているだけに、気が気ではありません。小笠原沖は前線からは離れているものの、楽観視はできません。

18:45 日没

 グリーンフラッシュを期待して、多くの人がデッキから夕日を眺めます。この日は残念ながら、雲の向こうの日没でした。

晩は晴れました

 夕食後は、のんびり時間を過ごしていました。

 同室の福原さんがやってきて一言「晴れてる!」

 えっ、ほんまですか、まじですか。

 だって周囲は人工光一つない洋上です。デッキに出て目が慣れると、うわぁ!

 暗黒帯がモジャモジャ見える天の川。なんじゃこれは。星が多すぎて星座をたどるのが面倒なくらい、星が見えます。さそり座がやたら高いところにあります。ずいぶん南下しちゃったんだと改めて気付かされます。南東の空には木星。よく見ると、海面に木星の光が反射して光の帯ができています。

 大興奮で星を眺めます。

 そこに左舷から近づく一隻の船。う〜ん、なんだろ。双眼鏡で見たらファンネルマークは紺と紫のVの字。びいなすクルーズのぱしふぃっくびいなすです。これが一番の光害といったら、向こうの船にも同じことを言われそうです。ここで会うということは、ぱしびぃも同じ海域を目指すのでしょう。

 船尾のスポーツデッキでは、西はりまの友の会のメンバーが案内役となって、天体観望会をやっていました。

 いよいよ明日が日食なのですが、さほど張りつめた緊張感のないまま、航海2日目の夜が更けていきます。

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(2009.8.8記 福田和昭)

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