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5時を回ったところで目が覚めます。雲一つない――とはいかないまでも、青空が広がっています。やった。この日の日の出で、グリーンフラッシュが見えたそうです。あと15分早く起きていれば! 惜しいことをしました。
船首前方に、小さな島影が見えています。「北硫黄島?」と声が上がります。
船室のテレビのモニターには、ふじ丸の航跡を表示できます。本州から一直線に伸びた航跡は、まもなく火山列島(北硫黄島・硫黄島・南硫黄島)に差し掛かろうとしています。見えている島は北硫黄島で間違いなさそうです。いよいよ皆既帯中央に到着です。
早めの朝食を終えると、北硫黄島がすっかり大きくなっていました。この島は火山島ですが、周囲は切り立った崖に囲まれています。現在は無人ですが、戦前はここにも人が住んでいたそうです。島の上に立っているのは噴煙ではなく、ただの雲。
海面にはトビウオが跳ねていて、デッキに出た人々から歓声が上がります。島が近いので鳥も登場。翼を広げたこの鳥は、カツオドリというのだそうです。で、トビウオとカツオドリですが、追いつ追われつの関係です。ときどきカツオドリが急降下して、海面すれすれを飛ぶトビウオにアタックします。
そんな生き物たちを見ていると、操舵室から黒田さんの放送が入ります。
「本船は現在、皆既帯中央線に沿って航行中。天候は良好。今後も日食の時間まで好天が続く見込み。小さな雲は船で避けるが、上空の薄雲はいかんともしがたいので、これは無いように願いましょう」といった内容だったか。
さあ、いよいよです。
部屋に戻って、機材の確認。充電池は前の晩に予備を含めて充電完了。メモリーカードも念のために予備を揃えています。部屋と観測場所が離れているので、荷物は一度で移動できるよう、キャリーカートにくくりつけます。
8:30から船内のホールにて全体会。観測場所ごとに分かれて着席し、日食前の最後の案内が伝えられます。
上層階のデッキを割り当てられているので、移動は一苦労。エレベーターを使うわけには行かないので、階段で荷物を運び上げますが、これは覚悟の上。そのつもりで機材を選んであります。
15分ほどで移動が済んでしまったのは、みなさん行儀がいいのと、スタッフの手際がよいのと、両方なのでしょう。本当に頭が下がります。
私たちが割り当てられた8Fのプールサイド。名前の通り、真ん中にプールがあります。なんというか、クルーズ客船らしい優雅な場所です。
意外に広々としていて、煙突(ファンネル)と電線以外に空を遮るものはありません。太陽は真上に来ますから、電線の位置さえ注意すれば大丈夫。
ファンネルの手前は屋根付きの休憩場所。ファンネルの向こう側はラウンジで、ギンギンに冷房が効いています。お手洗いもすぐそば。とてもいい場所で感謝感激。
プールサイドはピアニストの福田直樹さんのグループの方が中心だったのですが、私たちは後から入れてもらったにも関わらず、「撮影にいちばん良い場所をお使いください」とお気遣いいただきました。太陽は天頂なので撮影自体はどこでも問題ないのですが、ファンネルから離れて、かつ三脚が他の方の邪魔にならないということで、プールサイドの船首寄りを使わせて頂きました。
観望中心のデッキだったので、当日は私たち何やら目立った一団でしたが、こうして写真を見ると、立てているのもカメラ三脚ばかりの軽装備です。トップデッキでは20cmシュミカセとか、20cmドブソニアンとか、どうやって運んだんだという望遠鏡が並んでいたそうですから、行動力のある人はすごいです。
左が太陽望遠鏡「コロラドP.S.T.」と架台はBORGの片持ちフォーク赤道儀。こちらは観望専用です。もともと明石の星の友の会で共用で使うことを想定していたのですが、当日はプールサイドにいた人に適当に覗いていただきました。船の揺れでHαの微少構造は上手く見ることができませんでしたが、食分が浅いときの欠け具合を確認するのに役立ちました。
右が「miniBORG60ED」と一眼デジカメ「Nikon D5000」、架台はテレビューのF2経緯台。写真専用で5分ごとに日食の経過を撮影します。減光フィルターはアストロソーラーフィルター。皆既前後にワンタッチで着脱できるよう、手製の段ボール製フィルターホルダーを対物部に装着してあります。装着というと格好いいですが、ガムテープで留めてあります。天頂付近を見るには経緯台は若干操作が不便なのですが、船の揺れへの対応を考えて、あえてフリーストップの経緯台を選びました。
このほか皆既時の観望用に、双眼鏡「Nikon モナーク10×40」。ビクセンの日食グラス新旧各1枚。それから周囲の景色と日食中の風景動画を撮るためのコンパクトデジカメ「Canon PowerShotA650IS」というのが今回の機材です。
そういえば、この人たちを忘れてはいけません。天文科学館からパペットになってやってきたシゴセンジャーとブラック星博士。
ブラック星博士は日食メガネまでかけて、見る気満々です。って、それ俺の日食メガネじゃないですか、返せコラ〜っ。
機材の準備も整い、さっそくピント確認用のテスト撮影。左が全体像、右が一部切り出したピクセル等倍像。自宅では梅雨空の薄曇下でしかテストできなかったので、ピント合わせに苦労したのですが、まずまず良好に合焦しています。
スタッフの方から、日食の開始(第一接触)は10:02とアナウンスがありました。
さあ、あと10分で月と太陽が重なり始めます。
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(2009.8.9記 福田和昭)